2017年5月発売
参院選が迫るある日、日本人女性がトルコでIHOの人質になった。解放のため多額の身代金を要求された官邸と外務省は、しかしさほど慌てなかった。「人命は地球より重い」なんて昔の話。日本はアメリカの方針(“テロリストに何も与えない”)に従うまでだ。さあ、「自己責任」の世論を盛り上げて。公安に彼女の身辺を探らせれば、ホコリぐらい出るでしょうー解決の算段を付け、選挙での圧勝を目論む冷徹な官房長官・安井聡美だったが、およそ予測できない展開が待ち受けていた!
千夏は民俗学の「口頭伝承」を研究する大学院生。老人の“消えない記憶”に興味を持ち、認知症グループホーム「風の里」を訪れた。入所者の一人・ルリ子は、夕方になるとホームからの脱走を図る老女。会話が成り立たない彼女の口から発せらせた「おろんくち」という言葉に千夏は引っ掛かりを覚え…。乱歩賞作家の傑作長編・深層心理ミステリー。
「私たちはね…異世界に、トリップしたんだよ」。実家のパン屋ごと異世界にトリップしたサトコ、18歳。「大きな地震のたびに先祖代々トリップしてる」と母に聞かされ、大混乱!戸惑うサトコをよそに、15年ぶりの営業にお店は満員御礼の大賑わいだった。ある日、配達先のお城でサトコは一人の美しい姫君・コズサ姫と出会う。“王の中の王”への輿入れをひかえたコズサ姫は、悪い魔法で子どもの姿に変えられてしまっていた。天下泰平のためのこの縁組、実現させないわけにはいかない。相手は悪の大魔法使い、このままでは姫の身が危ないと遠方に避難することになるがー。「一緒に来てほしいのじゃサトコどの!旅先でもそなたの焼いたパンが食べたい!」
皇帝の魔の手から逃れた日下部虎次と仲間達は、辺見朱夏の案内で、亜人であるネコネ族の集落にたどり着いた。長であるバーバの厚意で、しばらく集落で過ごすことに。やがて、元皇女であるサラ・サラディーン・エシュトが周囲との軋轢を生むようになっていた。やるべきことをせず居丈高なサラに対して誰もが不満を抱き、特に結城八重は爆発寸前。虎次自身にもくすぶる思いがあった。また、一行は変装魔術の使えるネコネ族のニースと行動を共にする。追われる身となった虎次達は、変装しなければならなかった。他の日本人達を捜すため、日本に戻る手段を探すために、商業都市リーンガムへ向かうのだがー。
十歳で両親を亡くして以来、幼馴染達に支えられてきた南条翔は、この春から高校生になった。ある日、頻繁に約束を破る幼馴染達を翔は怪しみ、後をつける。すると山中のあばら家で見たこともない、おぞましい化け物を退治する、幼馴染達を目の当たりにした。彼らのことは家族同然と思っていたが、翔の知らない姿がそこにはあった。彼らの秘密を知った同じ日。翔は、この世のものとは思えない、美しい銀色の狐と出逢う。あばら家に侵入してきた迷い狐は、くくり罠に捕まり、怪我を負っていた。それを救った翔は狐から懐かれ、その夜を一緒に過ごすこととなったのだがー。
関ヶ原の戦いの結果、京の都は牢人であふれかえっていた。宮本武蔵。弁之助はみずからをそう名乗った。名付け親は佐々木小次郎である。小次郎はまさに天才、超越的な武芸者だ。翻って、自分はこの無数の牢人のなかでどう抽んでていけばよいのか。北白川城趾に向かう最中、気配を感じて振り返る。頬に切先。取り囲む野臥せりたち。しかし次の瞬間、武蔵は意外な態度を取る。物思いに沈んだのだった。死。死。死。際限のない死と引き換えに武蔵が手にするものとは。傑作大河小説、圧倒の第五巻!
零細工場の息子・山崎瑛と大手海運会社東海郵船の御曹司・階堂彬。生まれも育ちも違うふたりは、互いに宿命を背負い、自らの運命に抗って生きてきた。やがてふたりが出会い、それぞれの人生が交差したとき、かつてない過酷な試練が降りかかる。逆境に立ち向かうふたりのアキラの、人生を賭した戦いが始まったー。感動の青春巨篇。
若き天才女性ヴァイオリニストの凱旋コンサート会場からこつ然と消えた、時価数十億の伝説の名器。突如容疑者と化した1800人の観衆。場内の不満が最高潮に達したとき、チャイコフスキーのあのメロディがー真犯人は?そして犯人が用いた、驚くべき犯行手口とは!?書下ろし表題作はじめ、全ページに美しい旋律が鳴り響く、珠玉の3篇。
ゴージャスな大富豪マックス・ヴァシリコスにエスコートされる鏡の中の自分を見て、エレンは息が止まりそうになった。これが“象みたいに大柄で醜い”と継姉に嘲られている私なの?マックスが手配した美容師たちの手で美しく変身したエレンは華やかな慈善舞踏会で彼とワルツを踊り、その翌日からは彼に誘われるままカリブ海の島で夢のようなバカンスを過ごす。夜ごと情熱的な愛撫に溺れながら、エレンは自分に言い聞かせた。世慣れた彼にとって、これはビジネスの一環にすぎないー私が命より大切にしている屋敷を奪うための策略なのだ、と。
PR会社を経営するビアンカは、病に臥す祖父から家宝のブレスレットを取り戻してほしいと懇願された。ところが、オークションに出品されていたその品は、彼女が落札する寸前に高値をつけた人物に競り落とされてしまう。リーヴ・ドラグノフービアンカの兄の仇敵である大富豪に。ニューヨークの社交界入りを狙う野心家の彼は、ビアンカの弱点を見て取り、屈辱的な交換条件を持ちかけてきた。3カ月間彼の婚約者のふりをすればブレスレットは譲る、と。承諾したビアンカは、早速彼から責め苦のようなキスを受け…。
宮殿のバルコニーで、アジザは偶然に初恋の人と再会した。当時は12歳だったナビルも、今や立派なラスタンの国王だ。アジザのことを覚えていない彼に名を尋ねられ、彼女はとっさにアファリム家の長女付きのメイドだと嘘をつく。ほどなく、跡継ぎをもうけるため結婚を迫られたナビルは、アファリム家の次女を花嫁に指名する。その次女こそバルコニーで唇を奪いかけた娘とは知らずに。婚礼の夜、ベールを外した花嫁の顔を見てナビルは激怒した。「シークたる僕が、メイドと結婚するとは!」
教師のリーサは事故に遭い、友人を失ったうえ、体に大きな傷を負った。退院後は、人前に出るのが怖くて教職に復帰できず、婚約者もそんな彼女を見捨てて去っていった。悲しみに沈むリーサは、傷心を癒やすため遠くの地で新生活を送ろうと、叔母の旧友一家のもとで住み込みのナニーをすることにした。両親を亡くした幼い双子の世話は楽しかったが、子供たちの伯父アダムだけは彼女に容赦なく厳しい目を向けた。秩序ばかり求める彼の姿勢には、幼子への同情や思いやりは微塵もなく、まだ足を引きずる彼女の能力に関しても疑念を口にしてはばからない。思わず悔し涙が溢れ、リーサの瞳に映る彼の冷たく美しい顔が歪んだー
自分に自信のないララは、ある日、絶望の淵に突き落とされた。恋人の裏切りを目撃し家を飛び出したら、どしゃ降りに見舞われたのだ。よるべのない彼女は身も心もぼろぼろになり、やむなく雇い主夫妻を頼って、ナニーとして働く屋敷を訪れた。運よく、夫妻が休暇旅行で留守にするあいだ滞在を許されるが、そこには思いがけない人物がいたー雇い主の親友で大富豪のルーベン。彼も事情があって一時的にこの屋敷に滞在しなければならないという。こんなにハンサムな男性と二人きり、一つ屋根の下で過ごすなんて!だが、ララは思わず覚えた胸の高鳴りを戒め、もう恋はしないと誓った。片や取り柄のないナニーと、片や大富豪…分不相応な恋ならなおさら。
二人の兄が相次いで王位を捨てたため、シェルダーナの末の王子クリスティアンは急遽、妃を迎えなければいけなくなった。だが、国の存続にかかわる一大事とわかっていても、独身貴族を楽しんできた彼には、王家にふさわしい相手が思いつかない。そんなときパーティで、5年ぶりに思いがけない人物と再会する。王子の身分を明かさぬまま別れを告げた、かつての恋人ノエル。クリスティアンは、気まぐれにふらりと彼女の家を訪ねてみた。するとそこには、自分そっくりの幼い男の子の姿が…。
15歳以上の人間が忽然と消えてしまい、子供たちだけとなった町。不気味なバリアに周囲を覆われ、食料不足に加えて電気まで絶たれた今、さらなる絶望が子供たちの間に広がっていく。そんななか突如現れたのが“預言者”を名乗る少女ー少女はバリアの外の世界と交信できると言いだし、真夜中の浜辺で怪しげな集会を開くように。一人、また一人と少女を崇める子供がそこへ集まりだし…。
預言者を自称する少女が口にした“15歳での消滅は救い”という教え。町には徐々に波紋が広がり、ついにはその言葉を信じて“消滅”を受け入れる者まで現れる。自殺同然の行為がこれ以上広がらないよう、サムたち町の議会メンバーは緊急会議を開くのだが…。何が嘘で何が真実か。誰を信じたらいいのか?飛びかう嘘と募る疑念が、やがて最悪の事態を引き起こす!シリーズ急展開の第3弾。