2017年9月発売
大阪南部を走る路面電車、通称・阪堺電車。なかでも現役最古のモ161形177号は、大阪の街を85年間見つめつづけてきたー戦時下に運転士と乗客として出会ったふたりの女性の数奇な運命、バブル期に地上げ屋からたこ焼き店を守るべく分闘するキャバクラ嬢たち、撮り鉄の大学生vsパパラッチvs第三の男の奇妙な対決…昭和8年から平成29年の現代まで、阪堺電車で働く人々、沿線住人が遭遇した事件を鮮やかに描く連作短篇集。
美しい11歳の従姉妹アーダに出会ってまもなく、14歳のヴァンは彼女の虜となった。青白い肌の博学なアーダと知的なヴァン。一族の田舎屋敷で、愛欲まみれの恋を繰り広げる二人はしかし、ある事情により引き裂かれる。著者の想像力と言語遊戯が結実する傑作長篇
辺境の採掘惑星がライバル企業に襲撃された! 戦闘を生き延びた3隻の宇宙船は、住民を救出して惑星を脱出する。だが、敵の戦艦が迫るなか、船団では凶暴化ウイルスが蔓延し、船の人工知能が暴走を始めていた……。メールや文書ファイルでつづられた異色SF
ナイジェリアの小さい町に暮らす四人兄弟。厳しい父が不在の隙に兄弟は学校をさぼって魚を釣りに行く。しかし川のほとりで出会った狂人は、長男が兄弟の誰かによって殺されると予言したーー九歳の少年の視点で生き生きと語られる、闇と笑いに満ちた悲劇の物語
干上がった湖の底で発見された白骨。頭蓋骨には穴があき、壊れたソ連製の盗聴器が体に結びつけられている。エーレンデュルらは、丹念な調査の末、ひとつの失踪事件に行き当たった。農機具のセールスマンが、婚約者を残し消息を絶ったのだ。男は偽名を使っていた。男は何者で、何故消されたのか? 過去に遡るエーレンデュルの捜査が浮かびあがらせたのは、時代に翻弄された哀しい人々の真実だった。北欧ミステリの巨人渾身の大作。
両親の虐待に耐えかね逃亡した少年エリックは、遺伝子研究を行うテニエル博士の一家に保護される。彼は助手として暮らし始めるが、屋敷内に潜む「実験体七十二号」の不気味な影に怯えていた。一方、〈ジェリーフィッシュ〉事件後、閑職に回されたマリアと漣は、P署の刑事ドミニクから依頼を受ける。幻の青いバラを同時期に開発した、テニエル博士とクリーヴランド牧師を調査してほしいと。しかし両者への面談直後、温室内で切断された首が発見される。バラの蔓が扉と窓を覆い、密室状態の温室には縛られた生存者と「実験体七十二号がお前を見ている」という血文字も残されていた。年末ミステリベストに全てランクインした、『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くシリーズ第二弾!
その古書を開いた者は跡形もなく消えてしまう──そう伝えられるとおりの奇怪な事件が起きる「古書の呪い」を始めとして、閉ざされた現場での奇妙な殺人の謎がこのうえなく鮮やかに解かれる傑作「《ブルー》氏の追跡」など、いずれもチェスタトン特有のユーモアと逆説にあふれた全9編を収録する。全編が傑作にして必読であるという、奇跡のような〈ブラウン神父〉シリーズ最終巻。解説=若島正
故郷の大学に非常勤講師の職を得て、高校生の娘を連れ実家へ戻ってきたジョージアは、親友のシド(世にも不思議な、歩いて喋るガイコツだ!)と再会した。人間だったときの記憶のない彼が、見覚えのある人物と遭遇したのをきっかけに、ふたりはシドが生前は何者だったのかを調べはじめる。だが、その過程で忍びこんだ家で死体を発見、殺人事件の謎まで背負いこむことに……。たっぷり笑えてちょっぴり泣ける、ミステリ新シリーズ。
帝都を騒がす大怪盗ロータスが盗みに失敗した! 東京は浅草の高層建築「凌雲閣」。その一角に飾られた油絵を盗もうとした怪盗は、番人に見つかり絵を置いて逃げたというのだ。この椿事は記者の高広の耳にも届く。ロータスは高広とも天才絵師・礼とも因縁浅からぬ相手、ただ失敗したとは思えない。高広と礼が調査を始めると、ロータス一連の窃盗事件の主任検事となっていた安西と再会する。怪盗と検事、今は敵対関係にあるが、かつては昔馴染みであり並んで駆け抜けた時代があったのだ。決別した二人がついに相まみえる。大好評〈帝都探偵絵図〉シリーズ第四弾。
今のわたしは、あの頃なりたいと望んだ自分になれているのだろうか。 遠州峰生の名家・遠藤家の邸宅として親しまれた常夏荘。幼少期にこの屋敷に引き取られた耀子は、寂しい境遇にあっても、屋敷の大人たちや、自分を導いてくれる言葉、小さな友情に支えられて子ども時代を生き抜いてきた。 時が経ち、時代の流れの中で凋落した遠藤家。常夏荘はもはや見る影もなくなってしまったが、耀子はそのさびれた常夏荘の女主人となりー。 ベストセラー『なでし子物語』待望の続編。 ドラマ化、映画化、舞台化など話題作続々、伊吹有喜最新刊!
静岡県の海辺、あさぎ町にある喫茶店『猫の木』。そこには猫のかぶり物を被った風変わりなマスターがいる。恋愛不精のOL・夏梅は、二年間通い続ける常連だが、彼の素顔はいまだ知らない。そんなある日、ひとりの男が猫を預かって欲しいと店を訪れるー。猫頭マスターと夏梅のジレジレ恋がいよいよ動き出す!?そして、猫のかぶり物に隠された秘密とは!?大人気シリーズついに完結。
呉市で護衛艦の調理を担当する海上自衛官の利信は、パッとしない艦内の食事、とくに海軍カレーに思い悩んでいた。改善が必要なメニューと、調理員同士の微妙な人間関係に苦悩するなか、レストラン・オーナーの友理恵と出会う。同じ料理を愛する者として友理恵に悩みを聞いてもらいつつ、開催が決まった「呉海自カレーグランプリ」で、艦の名誉をかけた勝負に挑むことに…。
毎夜、同じような悪夢を見る。それはさまざまな女をいたぶり殺すことで性的興奮を覚えるという夢だ。その夢はまるで自分がやったかのような錯覚に陥るほど、リアルなのだ。ある日、自分が見た夢を同じ殺人事件が起こったというニュースをテレビで見た。犯人がつかまったという。そこには、自分と同じ顔の違う名前の男が映っていたーー。運命の残酷さ、悲劇を描いた「悪魔の帽子」(幽12号)ほか、植物に取りつかれた男を描いた「花うつけ」、主人公が犬嫌いになった理由があかされる衝撃のラスト「犬嫌い」ほか、松山が舞台の正統派ゴーストストーリーの「城山界隈奇譚」など、雑誌や文庫掲載原稿に加え、4篇を書き下した全9篇。日本推理作家協会賞受賞者(長編および連作短編集部門)が放つ、謎と恐怖の物語。 悪魔の帽子 城山界隈奇譚 夏休みのケイカク 花うつけ みどりの吐息 犬嫌い あなたの望み通りのものを 左利きの鬼 湿原の女神
京都・宇治。古田織部の覚えめでたい朝比奈家の一人娘・綸は、病に倒れた父の跡を継ぎ、極上茶を作る御茶師の修業に励んでいた。そこへ徳川・豊臣決戦近しの報が。大名と縁の深い御茶師たちも出陣を迫られる。茶薗を守り、生き抜くにはどちら方につくべきか。さらに家康に疎まれた織部の身を案じる綸のもとへ、悪夢のような知らせがー。乱世に凛として立ち向かう女御茶師のひたむきな半生。宇治・茶薗主の知られざる闘いを描く本格時代長篇。
出版社に勤務する松原とマッサージ師のさくら、二人は、付き合いはじめ、やがて別れる。それで終わりのはずだった。婚約までした男と女の関係は、はじめから狂っていたのかもしれない。加害者と被害者、ふたつの視点から「ストーカー」に斬り込んだ、残酷にして無垢な衝撃作!!