2017年発売
〈上の天神さん〉の境内で行われるラジオ体操。カタコラカタコラ下駄履きで集まると、在郷軍人の小父ちゃんが台に上って号令をかけていた。/トコのちぢれ毛をまっすぐにして下さい。中原淳一の絵の女の子みたいにして下さい。/チョロ松と二人で、ゆぶねに腰かけて唱歌をうたった。「旅順開城 約なりて 敵の将軍ステッセル 乃木大将と会見の 所はいずこ水師営」/あとを頼むぞ、とか何とかいって戦地へいくと、若い盛りにパッと桜のように散る。そしてほめられる、新聞にのる、勲章をもらう、みんなに泣かれる、いい気なものだ。男のほうが人生の花を独り占めして、女はカスの部分をつかまされる。/日常のささやかな描写の中にすべて戦争が描き込まれた名連作短篇集。
「ハッピーエンドのお話はないの?」「だってこれはロシアの話だからね」サンクトペテルブルクに生まれ育ち、ロシア革命にともなってオランダに帰国した祖父が「ぼく」だけに語ってくれたこと。ゴーゴリの『外套』より悲惨、どこにも救いはないのに、なぜか可笑しく滑稽な人生の悲喜劇。『ハリネズミの願い』の作家テレヘン自身がもっとも愛する宝箱のような掌篇集。
学校の先生になりたかった父と、キャンディ屋さんを夢見る娘。謎と矛盾だらけのこの世界で、もうひとつの本当を探し求めて、ともに考え、悩み、笑い…。未知なる記憶をめぐる大冒険がはじまった!演劇界の鬼才が描く、異色のドキュメント小説。
明治・大正・昭和の四文豪の幻想ーー優雅の化身とあがめられる美貌の御息所と高徳の老僧の恋の物語「志賀寺上人の恋」。死後の霊とのかかわりを描く「死者の書」。妖しいラヴレターが次々と波瀾を巻き起す恐怖小説「人生恐怖図」。金魚と老作家の会話でできた超現実的な小説「蜜のあはれ」。他全31編。 三島由紀夫 橋本治編 中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃 志賀寺上人の恋 大障碍 手長姫 女方 憂国 鴉 ミランダ 百万円煎餅 解説 幸福な鴉 川端康成 橋本治編 十六歳の日記 篝火 白い満月 死者の書 死体紹介人 解説 生という半身を欠いて 正宗白鳥 松山俊太郎編 妖怪画 冷涙 人生恐怖図 解説 レシチンの滋味 室生犀星 矢川澄子編 蜜のあはれ 愛魚詩篇 寂しき魚界 凍えたる魚 七つの魚 寂しき魚 魚になつた興義 鮠の子 三本の鉤 魚 鯉 青き魚を釣る人 火の魚 老いたるえびのうた 解説 森茉莉への手紙 年譜
生誕130年を迎えた、ポーランド随一の狂気的恐怖小説作家グラビンスキによる怪奇幻想作品集。病み憑きの陶酔と惑乱の書。 赤いマグダ 白いメガネザル 四大精霊の復讐 火事場 花火師 ゲブルたち 煉獄の魂の博物館 炎の結婚式 有毒ガス [エッセイ] 私の仕事場から 告白 [インタビュー] ステファン・グラビンスキとの三つの対話 一九二七年/一九三〇年/一九三一年
幼き日々を懐かしみ、愛する妹との絆の回復を望む判事の女と、 その思いを拒絶して、乱脈な生活の果てに恋人に裏切られる妹。 先人の足跡を追い、ペトラの町の遺跡へ辿り着く冒険家の男と、 名も知らぬ西欧の女性に憧れて、夢想の母と重ね合わせる少年。 ノーベル文学賞作家による珠玉の一冊! ペルヴァンシュはまたもかたくなになっていた。クレマンスが表しているものすべてを、社会的地位だの、責任だの、権威だのを憎んでいた。ある瞬間、こんなあばら家を出て、あんなひどい人たちから遠く離れたところに行けるようにあなたを助けてあげられるわ、お金を貸してあげられるわと、ぎこちなく口にした。ペルヴァンシュは猛然と反発した。(「心は燃える」より) きっと、アリがひとこと頼みさえしたら、サマウェインは自分の宝物を見せただろう。手紙の束を、何枚もの黄ばんだ写真を、そしてなによりも、女性の腕に抱かれた赤ん坊がうっすらと写っている写真を。海の向こうからやってきた金髪の女性、父を連れて行ったその女性を、サマウェインは母と呼んでいる。(「宝物殿」より) 心は燃える 冒険を探す 孤独という名のホテル 三つの冒険 カリマ 南の風 宝物殿 各篇解題 訳者あとがき
「エロスは黒い神なのです」 「この書物は闘牛の一種と思っていただきたい」。満潮によって閉ざされた城ガムユーシュに招かれた語り手が、イギリス人の謎めいた主人モンキュらとともに繰り広げる美しくもおぞましい性の饗宴。 「この破廉恥な姿態はどこから見ても申し分なく破廉恥で、私たちの目には裸体以上に(あるいは裸体以下に)みだらなものだった。五匹の蛸が彼女の身体にへばりついたまま、[……]少女の肉体と軟体動物頭足類とがからみ合っている有様は、一種厳然たる人獣交媾の段階に達していた。おそらく曖昧に崇高とでも呼ぶ以外には呼びようのないものが、そこには見てとれたのだ」。(本文より) 1979年刊の新版に基づく、シュルレアリスム小説の奇書にして名訳。
国際投資銀行A&Bから機密データが“誘拐”された。データが公開されれば新たな金融危機が起こりかねない。データにアクセスできたのは、大手ソフトウエア開発会社クインタス担当のアナリストたちのみ。とばっちりでアナリストたちと一緒に軟禁状態にされた情報システム部の植嶝仁は、一歩間違えば父親が率いる財閥までが巻き添えを食うと知り、“誘拐犯”の正体を暴こうとするが…。
完璧で決定的な勝利を収めた“大聖戦”ののち、核で荒廃した大地は何億もの死体で覆いつくされた。偉大な神ヨラーとその忠実な代理人アビを信奉する宗教国家アビスタンでは、思想・信条の自由を忘却し、街区に縛られた“信徒”たちが陰鬱な日々を送っている。極寒のサナトリウムで療養中の役人アティは、やがてこの国の“境界”を夢見るようになる。名高い祭司の息子コア、古代の村を発見した考古学者ナース、“本”をはじめ失われた文明の遺物を収集する商人トーズ、猥雑で混沌として無秩序なゲットー。この世界の起源と真実を求めて、アティとコアは旅に出る。ジョージ・オーウェル『1984』ミシェル・ウエルベック『服従』のその先を描いたディストピア小説の新たな傑作、誕生。アカデミーフランセーズ小説賞グランプリ。
世界は崩壊するだろう、しかし、私の青春に、パリに終わりはけっしてこないーフィッツジェラルド、ベケット、ジョイス、デュシャン、ペレック、ゴダール、ボルヘス、カフカ、ヴァルザー、ネルヴァル、ドゥボール、ランボー、マラルメ…etc.作家の修行時代をめぐる、世界文学地図=小説、ついに邦訳!
「息子がこんな症状になってしまった原因が知りたい」そんな風変わりな依頼から「事件」は始まった。やがて同じ症状を持つ患者が見つかる、何人も。彼らには何が共通しているのか。そして大量殺戮計画の隠された真意とはー。
貧しさの根本原因に目覚めていく小作農たちー植民地時代の荒廃する農村にあって、たくましく生きる小作人群像とその家族たち、そして若い男女の心の葛藤を、朝鮮の風土を織り交ぜながら描く。朝鮮プロレタリア文学の代表作。
「20年も前に女装男子やってました。 従者(メイド?)もあり! の冥土珍道中!」 (立原透耶) 第3巻目は、いよいよ立原透耶の中華圏SF趣味全開の 「冥界武侠譚」シリーズの登場です! 全8話のうち、第3巻目に 「華仙乱舞」「迷恋錯綜」「判官流浪」「受胎狂詩」の 4話を一挙収録! 第4巻に残りの4話を収録します。 第3巻の解説は、武田雅哉氏 (中国文学者、北海道大学教授)が登場! 著作集は全5巻予定! 既に2巻「CITY VICE」 1巻「凪の大祭」が刊行されています! シリーズ監修は、小谷真理(SF&ファンタジー評論家)、 アートディレクションは、YOUCHAN が担当!