小説むすび | 2018年2月発売

2018年2月発売

丘の上 豊島与志雄 メランコリー幻想集丘の上 豊島与志雄 メランコリー幻想集

太宰が最も尊敬し、芥川、川端が恐れた作家 豊島与志雄の全貌が明らかになる代表作が 現代仮名遣いによって甦る! 芥川龍之介に 「山間の湖の如く静かなのは、豊島与志雄氏の作品である」 と言われた豊島は、「忘れられた作家」と呼ぶには あまりにも大きな存在である。 太宰治、坂口安吾、田中英光らは豊島を深く尊敬した。 太宰は「先生も、私と同様に、だらしがない。 そうして、日本で、いちばんの教養人だ」と評し、 川端康成は、「終始孤高の高士であるが、 そのひとりの世界では魔につかれて、 なにをしているかわからぬ怪物である」と言った。 本書では、初期の作品から戦後のものまで収録しているが、 どの時期の作品も、深いメランコリーの影が射している。 そして終始一貫して理知的であった。 怜悧さ故の虚無感に包まれながら完璧への希望をも 持ち続けた隠れた名作をお届けします。 収録作品 蠱惑 悪夢 都会の幽気    丘の上 常識   食慾 逢魔の時 球体派    怪奇な話 碑文 白塔の歌    秦の憂鬱   沼のほとり    聖女人像    絶縁体 解説 知性が持つ感性と、感性が持つ知性と 長山靖生

外の世界外の世界

アルファグアラ賞受賞作! 〈城〉と呼ばれる自宅の近くで誘拐された大富豪ドン・ディエゴ。身代金を奪うために奔走する犯人グループのリーダー、エル・モノ。彼はかつて、“外の世界”から隔離されたドン・ディエゴの可憐な一人娘イソルダに想いを寄せていた。そして若き日のドン・ディエゴと、やがてその妻となるディータとのベルリンでの恋。いくつもの時間軸の物語を巧みに輻輳させ、プリズムのように描き出す、コロンビアの名手による傑作長篇小説! 「俺は堕落する前に、あんたみたくイソルダを抱き締めて、俺のイソルダ、と呼んでみたかった。俺が欲しかったのはあんたの金じゃないんだよ、ドクトール。あんたの娘を欲しかったんだ。城の近所に住む金持ちのぼんぼんが日がな一日、城の周りをうろついているのと同じように、俺もイソルダの行動を遠くから窺っていたんだ」(中略)  今度こそ、エル・モノは腹から笑った。俺にしたって同じだよ。あの娘を思い出すと、ときどき自分でも知らないうちになんでもないのに笑っているんだ。悪ふざけかなにかを思い出したんじゃないか、って訊かれるけど、あんたと同じだよ、ドクトール、あの娘のせいだ。俺たちのイソルダを思うと、笑いがこぼれてしまうんだ。あんたは、俺たちのって言うと怒るけどな。(本書より)

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