2018年6月発売
駿河小島藩の年寄本役・倉橋寿平のもう一つの顔は、江戸で人気の戯作者・恋川春町であった。戯作者としての矜持は、黄表紙を通じお上を批判しながら、人々を楽しませること。そして探し求めるのは、共に世の中を遊べる“菩薩のような女”-。しかし、松平定信による娯楽の規制は厳しさを増してゆく。女たちと関わりながら、定信からの呼び出しを無視し続ける春町だが、盟友の朋誠堂喜三二は筆を折り、さらに江戸一の人気戯作者の座は若き山東京伝に奪われつつあった。悩みぬいた春町が辿り着く先は?武士ながら戯作者として人気を博した後、謎の死を遂げた恋川春町。六人の女を通して描く、その情けなくも愛おしい、不器用な生き様が胸に迫るー。
三十路のおっさんブルーノ。彼は“スローライフ”というスキルを持っていたが、使い方が分からないまま、勇者パーティーから追放されてしまう。しかしスキルの女神から、これは『スローライフに関することを“過度に”実現する』スキルだという説明を受ける。そしてブルーノは、辺境の地で理想のスローライフを送ろうとするが…!?人助けに薬草を摘んだら軽く一万束も採れてしまったり、寝ている間に難病を癒す秘薬を作ったり、湖の主を釣り上げたりー。おっさんの理想だけど、ちょっと変なスローライフ・ファンタジー。書き下ろしエピソードを加えて、待望の書籍化!
至高の恩恵を授かり、勇者となった男ガリウス。彼は魔王を倒し、人の世に平穏をもたらした最大の貢献者ーのはずだった。しかし彼は手柄を王子に横取りされ、お払い箱となる。すっかり人間不信に陥ったガリウスは、ひょんなことからワーキャットを助け、敵対していたはずの“魔族”たちの楽園『最果ての森』を目指すことになった。“人”の業を背負う最強の勇者はしかし、心優しき“魔族”たちに受け入れられー彼らのために、自身の居場所のために、次々に襲い来る敵を殱滅する!これは“人”ならざる者たちの、“人”に抗う物語。やがて“魔王”となる男の、悪しき人々を蹂躙する伝説が始まるー。
一九六〇年代ナポリ。裕福な一家に嫁ぎながらも満たされないリラ。外の世界への戸惑いを抱えながら、学業と執筆に希望を見出すエレナ。ふたりの少女の十代から二十代を描く世界的ベストセラー第2弾。
「欠点はあるが、君は留置場の外にいるほうが役に立つ」詐欺容疑で拘束された父親に会うため砂漠の国を訪れたエズミは、あまりにもハンサムで傲慢な国王ザイードの言葉に耳を疑った。父親を助けたければザイードの王宮にとどまり、ソーシャルワーカーの経験を活かして彼の下で働けというのだ。反発するエズミだったが、目の前で父親が病に倒れた瞬間、なんでもするから助けてほしいと思わず懇願していた。ザイードの強烈な魅力を前になすすべもなく純潔を捧げ、異国の世継ぎを身ごもることになるとは夢にも思わずに。
“僕には君しかいない。君を命がけで愛している”冷淡な男性に騙されて深い傷を抱えていたイモージェンは、古本の詩集に挟まれていた愛の手紙に心を揺さぶられた。これほど愛情深い人に、ひと目でいいから会ってみたい…。手紙の主を探し当て、壮麗な館にたどり着いた彼女は大富豪セスに迎えられ、いつしか互いに身の上話をしていた。恋人を亡くして以来、人を愛せなくなったというセスは彼女の過去を知ると、愛情の介在しない便宜結婚を提案した。僕は君を捨てたろくでなしとは違う、信じてほしいと言って。
エロイーズの休暇旅行は、衝撃的な出会いから始まった。ホテル王のヴィトは空港で助けた彼女を見初め、ヨーロッパの有名な観光地を案内する一方で、夜は熱く求めた。彼は私を特別な女性と思っている?私は愛されているの?しかし、エロイーズがヴィトとの将来を夢見はじめた数週間後、突然、婚約者だと名乗る女性が訪ねてくる。否定するどころか、ヴィトに面と向かって婚約を認められ、絶望したエロイーズは故郷へ逃げ帰るしかなかった。そのおなかに、彼の愛の形見を宿して…。
カリブ海の島で慈善事業団の一員として働くエヴァは、たった二度しか会ったことのない大富豪ダニエレから求婚され、驚愕した。彼は臆面もなく、こう告げたのだ。「妻が必要なんだ。交換条件として年500万ドルの寄付をする」愛のない結婚。名ばかりの妻。ばかげているわ。だが被災地の悲惨な現状に日々心を痛めているエヴァは、悩んだ末、この申し出を受けることに決めた。暮らし始めてすぐにダニエレとベッドをともにした彼女は、思いがけない真実に気づいて動揺する…私は夫を愛している!
パリで働くエレーナのもとに、ある日、幼なじみのルカが訪ねてきた。平民である自分と、公爵家に生まれて今や伯爵となったルカ…。エレーナは父の仕事柄、王侯貴族の子どもたちの近くで育ったが、いつも疎外感を覚え、昔からルカへの気持ちを抑える癖がついていた。しかし久々に再会し、エレーナの仕事の成功を祝って乾杯したふたりは、懐かしさとほろ酔いも手伝って、ついに一線を越えてしまう。やがて妊娠を知ったエレーナは、いずれ告げなければと思いつつも、言葉にできずにいたー独身主義の彼が家庭を望むわけがないから。そんなエレーナの気も知らず、ルカがとどめの一言を放った!「あの夜はしくじったと思っている。すべて忘れて友達に戻ろう」
幼いころ母親に捨てられたミカは、里親の家を転々としたあげくとうとう住む家も、頼れる人も失ったつらい過去を持っている。そのせいで、人に心を許すことができなくなってしまったが、今ひょんなことから家に泊めている旅人ラウルとは、意気投合した。魂は激しく惹かれ合っているのを感じても、貴重な友情を大事に、ミカはラウルへの恋心を懸命に封じていたー暴漢に襲われるまでは。ラウルに危機一髪のところを救われ、強い腕に抱きかかえられながら、まるでお姫様のように大切に扱ってくれる彼への愛を自覚した。まさか、彼がほんとうに地中海のさる王国の皇太子で、母国に国王の決めた許嫁がいるとは思いもせずに…。
平民の父を持つロザリンドは、母方の親戚の貴族たちに疎んじられ、そのつらい経験のせいで上流階級を避けて生きてきた。足の不自由な弟と幼い義理の弟妹のため、結婚もとうにあきらめていた。ある日、優しかった継父の死を機に、あくどいおじに家を奪われ、逃げた先で美しい銀の瞳の旅人レオと出会って心を通わせる。だがいずれロンドンへ帰る彼を思い、ロザリンドは胸を締めつけられた。そして生涯でただ一度だけ、愛しい人に身を捧げることを自分に許すが、ロザリンドが無垢だとわかるやいなや、レオの態度が豹変した。じつは公爵の彼は、自分に群がる女たちに辟易し、こう思っていたー彼女も僕の身分を知って、公爵夫人になるために誘惑の罠を張ったのか!
兄の友人、ウォーリック男爵レイナーとの出会いは鮮烈だったー彼が宮廷の一室に立つと、室内が静まり返った。人波が割れ、狼のように野性的でいて優雅な彼が目の前に現れた瞬間、エリザベスは生まれて初めて男性に心を奪われたのだった。翌日、兄に会いに来たレイナーと再会したエリザベスは、遠くに住む彼にもう二度と会えないと思うと胸が苦しくなり、彼をもっと知りたいと切望するあまり、口づけを交わしてしまった。すると、それを兄に見咎められ、二人は結婚を余儀なくされる。しぶしぶ求婚するレイナーの冷たい表情に、エリザベスは青ざめた。花嫁になるのなら、忘まれて迎えられたかったのに…。
ケンダルは恋愛を恐れ、遠ざけていた。男性を見る目がなく、愛に恵まれないままこの世を去った母ーその血を自分も受け継いでいるのだから。なのに1カ月半前、友人の結婚式で出会ったソーヤーの虜になり、気がつくと甘く熱い夜をともにしていた。ニューヨークでも屈指の名家出身のプレイボーイ富豪と知りつつ、なぜか彼の腕の中に飛びこむことに躊躇を感じなかったのだ。自分の弱さを恥じたケンダルはソーヤーといっさい連絡を取らず、彼への想いを断ち切るため、左手の薬指に母の形見の指輪をはめる。まさにその日、ソーヤーが仕事の依頼で彼女の職場に突然現れた!
天涯孤独のリーザは、人工授精を受けた病院から驚愕の知らせを受けた。お腹に宿した小さな命が、大富豪ジャレド・スティールの子だというのだ。施術当日に会った、魅惑的な男性ジャレドー結婚に興味がない彼は、跡継ぎをもうけるため代理出産を依頼したと話していた。しかし代理母が約束の時間になっても現れず、たまたま予約時刻を変更していたリーザが人違いされたのだった。ジャレドは大金を呈示して子供を渡すよう要求してきた。無理よ、大切な私の赤ちゃんを渡せるわけがないわ。でも、裁判になれば大富豪の彼に勝てる見込みなどない…。ああ、いったいどうすればいいの?
「君はいったいだれだ?」掃除の仕事をしているエミリーは、派遣先で床磨きを終えたとき、突然現れた黒髪の男性に問いただされて狼狽した。仕事はいつも留守の間にすませるので、会ったことは一度もなかったが、この男性が雇い主ー裕福な銀行家ルーカス・テネントだろう。「あなたの家を掃除している者です」顔を赤らめながら答えたエミリーは、彼の顔色の悪さに気づいた。聞けばひどいインフルエンザにかかって早めに帰宅したのだという。熱と咳に苦しむルーカスに懇顧され、エミリーは彼の家に泊まりこんで看病をすることになった。
クレアは勤務先の病院に赴任してきた医師の姿に目をみはった。間違いないー10年前に別れた恋人、オリバー・ランキン!クレアは子どもが欲しかったのに、彼は望まなかった。だから、二人は別々の道を歩むことに決めたのだ。皮肉にも、そのときクレアは既に妊娠していたのだが、オリバーの行方はつかめず、クレアはたった一人で娘を産んだ。娘のことを知られるのは時間の問題だったが、まさかオリバーにひどく責められることになるとはー「きみは子ども欲しさにぼくを捨て、別の男に走ったんだな!」心ない言葉を浴びせられ茫然とするクレアに、彼は激しく口づけた。
ギリシアの実業家で、大富豪のミコノスはマーサの愛する夫だが、二人はしばらく別居している。娘が生まれたとき、夫は、マーサが不貞を働いたと罵った。マーサの知人男性を名指しして、あの男の子どもだろう、と。あまりの言いがかりに、マーサは赤ん坊と家を飛び出した。夫が誤解を悔いて迎えに来てくれるのを待ったが、5年もの月日が流れ、ついに夫が現れたとき、マーサの期待は残酷にも打ち砕かれた。夫は娘を自分の子だと認めた一方で、ベビーシッターを雇い、娘をマーサから引き離そうとしたのだ。いや、それとも、マーサを娘から引き離し、妻を再び自分だけのものにするためか…。
ルーシーは取引先の重役から執拗な誘いを受けているところを、居合わせたアメリカ人男性、シンクレアに救われた。激しく惹かれ合った二人はその夜のうちに愛を交わしたが、行きずりの関係など持ったことのないルーシーは、ひどくうろたえ、さよならも言わずに部屋から逃げ出した。その夢のひとときで、彼の子を宿したとは思いもせずに…。数日後、ルーシーはいとも簡単にシンクレアに見つかってしまう。驚いたことに、彼はルーシーの勤め先を傘下に持つ経営者だった。昇進のためにぼくを誘惑したんだろうと決めつけられても、ルーシーは、震えながら吐き気をこらえることしかできずにいた。