2018年発売
恋をしたとまでは言えなくても、恋愛っぽいなにかをした女と再会して、お互いが気づいてしまったらどうなるだろう。視線は一方的でなければならず、交換されてはならなかったー。会社での地位を失った男が思い出したのは、16年前のある関係だった。第7回若い作家大賞を受賞した表題作や、若い作家賞受賞作「趙衆均氏の世界」など、今の世代の心の質感を描く9つの物語。
“にらみ”とは、刑事が公判を傍聴し、被告人が供述を翻したりしないよう、無言で圧力をかけることー。事務所荒らしで捕まり、懲役五年の判決を受けた窃盗の常習犯・保原尚道は、仮釈放中に保護司を殺害しようとした容疑で逮捕された。取り調べを担当する片平成之は、四年前の保原の裁判で“にらみ”をしていて面識があった。保原は自首しており、目撃者による面通しも終えているのだが、片平は納得していない。保原は人を殺めようとするほどの悪人なのかー。(「にらみ」)驚きと情感あふれるミステリー傑作集!
君原樹来は推理作家を目指す法学部の四年生。あるとき、同じ大学に通う妹・麻亜知の友人、葛木夕夏があるトラブルを抱えているといい、元C県警捜査一課の刑事であった樹来の祖父に相談しに行くことに。夕夏は十年前、実の叔父に誘拐されたことがあった。ただ、記憶を失った時間があっただけで被害はなく、当時は身内のトラブルと片づけられたのだが、最近になって警視庁が再捜査に乗り出しているという。同じ十年前、同じく誘拐された男児の白骨遺体が最近発見されたことが関係しているようだ。当の叔父は行方不明になり、裕福な創業者一家だった葛木家は、その後みるみるうちに崩壊していったのだがー
技術交流を隠れ蓑に国際的な人身売買を行なう組織ITWCに潜入していたD1リーダー周藤が消息を絶つ。現場には大量の弾痕と血が残されていた。自分の身に何かあったときにはチームの解散を命じていた周藤。だが、残されたメンバーはリーダー救出のため、英国MI5の元諜報員マリアとともに、国際組織の壊滅に動き出す!圧倒的迫力で描くシリーズ最高傑作!
十津川は捜査で疲弊した帰宅途中の電車で「お願いがある」と声をかけられた。明日、電話をと立ち去った翌朝、駆けつけた殺人現場で見た死体は、声をかけてきた、その女性だった…。十津川警部が自分の判断ミスを苦悩する「事件の裏で」をはじめ、犯人当て小説「私を殺しに来た男」、プロ野球を舞台にしたスポーツ推理など、ミステリー第一人者の魅力満載の傑作集。
世界トップシェアを狙える8Kテレビの次世代技術を日本企業フロンテが開発した。凋落著しい韓国企業チムサンは、この最先端技術を盗みとる。ところが、データは一警備員に奪われ、チムサンに使い捨てられた日本人技師宮下の手に。一方、赤羽中央署の疋田は韓国人売春を追っていた。二つの事件が複雑に絡み合い、宮下と韓国スパイ、日本警察の激烈な争奪戦へと突入した!
駿河国田賀藩の中老廣澤和之進の悲願、それは自慢の妻女美雪を奪おうとする浮世絵師宗次を討ち果たすことー。その一心で伊豆から松坂へと苛烈な修行を重ねる和之進。一方、憎しみの刃を向けられているとは知らず、宗次は江戸で平穏を乱す危難に立ち向かう。オオカミの如き槍衾の気配。老中堀田正俊を狙う影。宗次の剣が修羅を討つ、新「大河」シリーズ、開幕!
悪魔に騙された聖者マエールは間違って極地のペンギンに洗礼を施してしまう。天上では神が会議を開いて対応を協議、ペンギンたちを人間に変身させて神学上の問題を切り抜けることにし、ここにペンギン国の歴史が始まった。古代から現代、未来に至るフランスの歴史をパロディ化、戯画的に語り直した、ノーベル賞作家A・フランスの知られざる名作。
生きものの言葉がわかる薫(25歳)の再就職先はペットシッター「ちいさなあしあと」。主な仕事はペットの看取りだ。イヌ、ネコ、ウサギ…彼らの最期に立ち合い、見送り、その想いを飼い主に伝える。逝くものと残されるものとの心ふるえる物語。
宇宙を守る任務を帯びたエージェントのヴァレリアンとローレリーヌ。あるミッションを遂行するうちに辿り着いたのは、銀河を揺るがす秘密だったー!最高の宇宙エンタテインメント!
人は皆、悲しみと喜びの道を歩いている。誰もが今も昔も人を愛し、平和を願い生きてゆく。信長と吉乃、かつては“ひと夜妻”として知られた志摩のはしりがね・あたい、国境を超え結ばれたラブバードさながらのカップルとて。そして。愛猫と共に生きる家族、ピースボートで世界各地を訪ね洋上生活を過ごす人びと、原発事故と大地震にうちのめされ不幸のなかであえぐ人たちだって皆同じだ。そこには別れがあり、出会いがあり、それでもたくましく生き抜く人間たちがいる。本書には、そうした物語六編がまとめられ、現代の世に“真の平和とは”を問いかけるー。
戦乱渦巻く世界。弱小国アシハラ王国の第三王子アルシェイスは公務もまともに出来ない、娼館通いにお熱な盆暗と巷では有名だ。しかし、彼にはもう1つの顔があったー空を牛耳る賊ー空賊。名も身分も隠し、忍び寄る崩壊の魔の手から弱小国アシハラを救うため、無法の集団ー“ベルクート”を密かに立ち上げたのだ。凄腕の姫剣士、爆弾魔、双子忍者など、団員はくせ者ばかり。そんな彼らはある日、集団誘拐事件の被害にあったヨルという不思議な力を持った少女を保護する。この出会いが、ベルクートやアルシェイス、そしてアシハラをも揺るがしていくー空を駆ける、王道ファンタジー、発進!
札幌の薬局に勤める香食禮次郎は、権威を振りかざし患者は二の次な医師たちや、事なかれ主義で仕事を進める薬剤師の同僚たちに囲まれた日常に飽いていた。だが、そんな禮次郎の人生は、一人の少女と出会ったことで一変する。衰弱していたその少女はクチナシと名乗り、介抱したうえで警察を呼ぼうとする禮次郎に部屋に置いて欲しいと頼む。謎めいた雰囲気の少女に対する好奇心と同情心から、クチナシの頼みを聞き入れる禮次郎。だが、これが後に訪れる狂気の世界への入り口だと、彼はまだ知らなかったー。
14歳で殺人を犯した悪辣弁護士・御子柴礼司を妹・梓が30年ぶりに訪れ、母・郁美の弁護を依頼する。郁美は、再婚した夫を自殺に見せかけて殺害した容疑で逮捕されたという。接見した御子柴に対し、郁美は容疑を否認。名を変え、過去を捨てた御子柴は、肉親とどう向き合うのか、そして母も殺人者なのか?
偶然にもツボ押しの才能を開花させた異能の週刊誌記者・望来は、この秘技の歴史を体現する、生ける伝説の達人のもとを再び訪れた。四十年以上にわたる達人の隠遁生活は、なぜ破られたのか。達人の名を世に轟かせた、カルト教団との戦いの全貌が明かされる時、達人の強さの根源が見えてくる。人気シリーズ第二弾!
風俗嬢に堕ちた教え子と潔癖な教師が逢瀬を重ね、京都の“魔所”といわれる古寺を訪れる「鳴神」、再会した幼馴染みとのセックスに籠絡され、夫殺しに荷担する不倫男の末路を描く「恋塚」。性と愛の地獄に嵌まり、時には生死を顧みぬ男女の業を、団鬼六賞作家が生々しくも艶やかに描く傑作六編。
清朝末期、満州族に辮髪と纏足を強要されていた漢人は、宣教師にも生活を蹂躙され不満は頂点に達していた。彼らは扶清滅洋の旗印のもと蜂起し、駐在武官・柴五郎らの立て籠もる北京公使館区域に攻め入る。中国近代化の萌芽となった「義和団の乱」の内幕を面白さ抜群に描く、『黄砂の籠城』と対をなす歴史小説。
ベテラン刑事の誤認逮捕問題を調査中の特任監察官・戻橋京一郎は、自殺した容疑者が先端技術研究で有名な博士と、繋がりをもっていたことに不審を抱く。産業スパイの影に怯える警察上層部と“シダレザクラ”と呼ばれる極秘情報の存在。刑事生命を賭けて戻橋が挑む、「監察の監察」解体の危機!
日本最古の神社の一つ、奈良・大神神社近くの河原で高校生が殺害された。彼が「蛇が…」と言い残して事切れたと聞き、友人の田村暁は戦慄する。その数日前、二人は大神神社の御神体とされる三輪山で、ある禁忌を犯していたのだ。一方、京都にいた辻曲姉妹も不吉な兆候を察知。怨霊を鎮めるべく、奈良へー。