2019年4月26日発売
異才が10年の間に書き紡いだ、危うい魅力に満ちた10の白昼夢。人間の身体を侵食していく植物が町を覆い尽くしたその先とは(「白昼夢の森の少女」)。巨大な船に乗り込んだ者は、歳をとらず、時空を超えて永遠に旅をするという(「銀の船」)。この作家の想像力に限界は無い。恐怖と歓喜、自由と哀切ー小説の魅力が詰まった傑作短編集。
あなたは5回、必ずだまされる。「落としの狩野」と呼ばれた元刑事の狩野雷太。過去を抱えて生きる彼と対峙するのは、一筋縄ではいかない5人の容疑者で…。第71回日本推理作家協会賞短編部門受賞作。
運送会社のドライバーとして働く倉内岳は、卓越した剣道の実力を持ちながら、公式戦に出ることを避けてきた。岳の父である浅寄准吾は15年前、アパートに立てこもり、実の息子である岳を人質にとった。浅寄は機動隊のひとりを拳銃で射殺し、その後自殺したのだ。世間から隠れるように生きる岳は、しかし、恩人の願いを聞き入れ、一度だけ全日本剣道選手権に出場することを決める。予選会の日、決勝に進出した岳の前に、ひとりの男が立ちはだかった。辰野和馬、彼こそが岳の父親が撃ち殺した機能隊員のひとり息子だったー。死を抱えて生きる岳と和馬。出会ってはならなかった二人の対決の行方はー。「罪」と「赦し」の物語。
王の法より仏の道ー。天平13(741)年3月、聖武天皇に招かれ、謁見する僧侶がいた。僧の名は、行基。民草を救うため、仏の教えを広めた僧は、その人心への影響力から、朝廷に恐れられ、弾圧すらされた。朝廷から大僧正の位を授けられ、文殊菩薩の化身とよばれた男はどのような生涯を送ったのかー。自然と愛するものに囲まれ、仏の道に目覚める幼年期から東大寺大仏建立、入寂までを丹念に描いた、長篇歴史小説。
婚約者に去られた30歳のルースは、仕事を辞めてアルツハイマー病の父親の介護を手伝うことに。辛い現実を軽やかなタッチで描き、全米の話題をさらった日記形式の家族小説。
一進一退を続けるボンの容態に、落ち着かない日々を過ごす堀田家。しかしトラブルが起これば、すかさず助太刀参上!進路に悩む研人に、「老人ホーム入居を決めてきた」と宣言するかずみ。そして長年独身を貫いてきた藤島がついにー。それぞれが人生の分かれ道に立った家族、でもつながっているのはやっぱり「LOVE」があるから!人気シリーズ待望の第14弾!
西荻窪のシェアハウスで暮らす、葵、美緒、礼菜。お金も色気もないアラサー女子三人組が、探偵やるなら滞納家賃は相殺という話に飛びついた。杉並大豪邸の事件、深夜に回る洗濯機の怪、週末だけの秘密ミッション、「西荻向上委員会」からきた紳士…。謎解きは時々ぐだぐだ酒宴と化すけれど、あれ?解決のヒントが!ゆるめな推理が心地よいミステリー。
一人の少女が壮絶なリンチの果てに殺害された。その死体画像を見つめるのは、彼女と共に生活したことのあるかつての家出少女だった。劣悪なシェアハウスでの生活、芽生えたはずの友情、そして別離。なぜ、心優しいあの少女はここまで酷く死ななければならなかったのか?些細なきっかけで醜悪な貧困ビジネスへ巻き込まれ、運命を歪められた少女たちの友情と抗いを描く衝撃作。
PC上で輝く星だけが、進むべき道を照らしてくれるー。離婚して実家に戻った恵美は、母の介護を頼んでいるホームヘルパー・依田の悪い噂を耳にする。細やかで明るい彼女を信頼していたが、見る目がなかったのだろうか。動揺する恵美に、母が転んで怪我をしたと依田から連絡が入り…。ネットのレビュー、ブログ、SNS。評価し、評価されながら生きる私たちの心を鮮やかに描き出す6編。
徳川中期、農村が疲弊し、都市部の商人が力を持ち始めた転換点。老中首座の重責を担う田沼意次は、貧者への重税、賄賂政治、恣意的人材登用と非難にまみれていた。-悪政の噂は本当なのか。出所はどこなのか。絶望の淵にあっても、孤独に耐え、改革を押し進めた田沼意次という不屈の人間像を新しい視点から描く傑作歴史長編。
富山は、ある事件がもとで心を閉ざし、大学を休学して海の側の街でコンビニバイトをしながら一人暮らしを始めた。バイトリーダーでネットの「歌い手」の鹿沢、同じラジオ好きの風変りな少女佐古田、ワケありの旧友永川と交流するうちに、色を失った世界が蘇っていく。実在の深夜ラジオ番組を織り込み、夜の中で彷徨う若者たちの孤独と繋がりを暖かく描いた青春小説の傑作。山本周五郎賞受賞作。
環境破壊で地球が滅び、様々な星へ人類は移住していた。少年シンが暮らすナイラ星も移住二百年を迎えるなか、従妹のリシアに先住異星人の超能力が目覚める。失われた“精霊の木”を求め、黄昏の民と呼ばれる人々がこの地を目指していることを知った二人。しかし、真実を追い求める彼らに、歴史を闇に葬らんとする組織の手が迫る。「守り人」シリーズ著者のデビュー作、三十年の時を経て文庫化!
魔が差したのだ。術後の昂揚した気分が引き起こしたまちがいは、女医柿沼東子を奈落へ突き落とした。幼い娘の親権を奪われ、失意のまま一人伊達湊市の病院に移った東子は、天才外科医の陸奥の下、粛々と研鑽を積む。手技を上げた東子の前に、斯界の権威が立ちふさがる。病気腎移植の倫理問題と東日本大震災を背景に運命に翻弄される女医の姿を感動的に描く医療長編。
真辺由宇。その、まっすぐな瞳。まるで群青色の空に輝くピストルスターのような圧倒的な光。僕の信仰。この物語は、彼女に出会ったときから始まった。階段島での日々も。堀との思い出も。相原大地という少年を巡る出来事も。それが行き着く先は、僕と彼女の物語だ。だから今、選ばなければいけない。成長するとは、大人になるとは、何なのかを。心を穿つ青春ミステリ、堂々完結。
父を火事で亡くした心的外傷から、身近な人の死を予知夢に見るようになってしまったみちるは、誰にも言い出せずに怯えふさぎこんでいた。手を差しのべてくれたのは従兄の一美兄ちゃんだった。「信じるよ。一緒に予知を覆そう」そして高校生になった彼女は再び夢を見る。校舎屋上、血塗れの刃、最後に見えたのは…一美兄ちゃん!?後悔と痛みを乗り越え前を向く、学園青春ミステリー。
アメリカ政府の機密情報が筒抜けになっているとしか思えない不可解な事件が続発する。米国内ではロシア海軍と交戦した駆逐艦艦長が居場所を突き止められて襲われ、イランでは諜報活動に従事する情報機関員が正体を暴かれ拘束される。一連の疑惑に繋がる壮大かつ複雑な陰謀が着々と準備される中、“ザ・キャンパス”工作員は機密情報が北朝鮮当局者に渡るのを阻止するためジャカルタに向かう。
オンライン詐欺で捕まり、出獄したルーマニア人ダルカは、ネット調査会社に勤めたが、インドの会社のシステムから手に入れたデータが途方もない「金鉱脈」だと気付く。それを使ってスパイの洗い出しを依頼した中国情報機関のダミー会社の意向をよそに、彼はこれからターゲット情報を作り闇ウェブで売り捌くことにした。すると、アメリカ人の極秘情報を物色する謎の組織が接触してきて…。
越前大野藩の御耳役・落合勘兵衛は身重の妻を連れ帰郷した。だが勘兵衛は大野に流れる奇妙な風説に驚愕した。無茶の勘兵衛ではなく、無駄の勘兵衛という風説。そして上司の江戸留守居役・松田への誹謗。なにかがおかしい。誰が、どんな意図で…。やがて江戸に戻った勘兵衛は、深更、藩邸に騎馬で上意を伝えに来た使番からの“大名総登城”の触れにおののいて…。
「藩の大事を、お聴き願わしうござります」柳生藩一万石の藩主で将軍の影目付・柳生俊平を、豪華な駕籠で加賀百万石の重臣らが訪れた。藩財政再建のため藩主を先頭に努めているが、ある者らが幕府の法度にかかわる手法で、大坂堂島の米相場に手を出している。大事とならぬうちに影目付の手で藩の膿を出してほしいーというのだ。はたして加賀藩重臣の真の狙いはー?