2019年8月26日発売
表題作のほか、「大佐に手紙は来ない」「この世で一番美しい水死者」「光は水に似る」など10篇を精選。世界文学最高峰を瑞々しい新訳で。
伝説よりもリアルな、一人の偉大な男がいる。この素晴らしい12世紀の物語のなかで、ローズマリ・サトクリフはロマンティックな衣裳を脱ぎ捨てたアーサー王を登場させる。陰影に富み、力強く、意気揚々とした物語。アーサー王伝説の背後にいた人物、蛮族の闇が押し寄せるなか、ゆれる最後の炎、文明の灯火を戦い守る戦士、生まれながらの民の指導者の物語である。
深い感動を呼ぶ素晴らしい作品。その悲劇の物語は、真に創造的な力によって語られている。著者自身が登場人物と一体となり、ともに生き、ともに苦しむ。読者も同様に一体となる。過去というへだてられた時間の困難にもかかわらず、遠い時代の物語は、目の前の現実となってゆくのである。ローズマリ・サトクリフは、多くのすぐれた作品を書いたが、これほど素晴らしいものはなかった。-書評より。
谷中の感応寺は富籤の寺として名高い。だが正規の富札は一枚一分、庶民には手が出ない。そこで一枚一文の陰富が人気となる。御三家の水戸家は財政が火の車。先々代藩主の庶子・小谷鶴之介は、背に竜の踊る派手な紫の羽二重で街をのし歩く“婆沙羅若殿”。ふとしたことで藩勘定方に「陰富」販売を提案。将軍から直命された影目付・柳生俊平は、まず水戸の婆沙羅若殿に接近…。
花火大会の夜、新内流しの弁天太夫こと鉄五郎は、相方の松千代と家路の途中、心中の片割れとされる若い娘の死に出逢う。翌日、豪華絢爛な屋形船が爆発、さらに一月後、また若い娘の不審死と花火師の無残な骸が…。実は超の付く大富豪の鉄五郎、その財力をもって、弱き者の行き場のない怨みを晴らすため立ち上がり、季節外れの大仕掛け花火で極悪人たちを吊るし上げる!
江戸有数の花街・柳橋の船宿「篠屋」に、成島柳北という、学者として将軍家に仕えて来た、俊才の誉れ高い幕臣が再来。柳北は幕府上層部の無能ぶりに苛立ち狂歌にしてからかい、奥儒者の職を解かれ閉門の身。学者であるも名うての遊び人柳北の耳に、若き日の情人・久米八が横濱で異人相手のラシャメンに身をおとすという噂が。で、篠屋の主に相談に…。(第五話「へちま」)
相手に自分の精子が入るとその心理を「スパイ精子」が伝えてくるー能力を持つ吾郎は、大学助手の百合子からある依頼を受ける。彼女が顧問をしているミス研の部員が急速に減っており、その原因はひとりのレズの学生らしいのだが、張本人を突き止めてほしい、と。吾郎は早速女子大生たちと関係を持ち、その度に「スパイ精子」を放つが…。書下し官能エンタメ!
英文学ゼミの研究室で発生した陵辱事件。ばらまかれる怪文書、謎の猥褻画、めまぐるしい議論の応酬ーあの「密室」で、何が本当に起こったのか?恋愛推理の巨匠“最後の未刊長篇”を初書籍化。本文と連動した著者自筆挿画72点完全収録の愛蔵本。