2019年8月発売
山の麓の売春宿にやってきたオランウータンのポポロと、ヤギの甘汁。動物たちの活躍ぶりに、人間が戦慄する表題作をはじめ、“極限状況”に置かれた人々の悲哀と、そこから見いだした美しい光を、リズミカルな文体と、ぶっとんだユーモアでお届けする“イエロートラッシュ”シリーズ・第二弾の全四編。
廃寺のコケの上に置かれた赤ん坊「なにか」。「ええ声」を持つ彼は、ある夫婦に引き取られ「オニちゃん」と呼ばれて成長する。ある時、その特別な声を否定され、いつしか「悪声」となっていくー。迸るイメージ、疾走するストーリー。まっさらな姿勢で見たまま感じたままを連ね、河合隼雄物語賞を受賞した力作長篇。
旗本の黒崎を訪ねた柳河藩士が帰りに斬殺された。物盗りの仕業ではないが、なぜか藩ではこの件を隠そうとしているようだった。一方、黒崎は書画骨董好きで有名だが悪い噂もあった。そして黒崎家には、若く相当な剣の遣い手の武士がいた。はたして闇討ちの下手人は誰か、そして柳河藩が事件を闇に葬ろうとした理由とはー。
師走、寒気増す江戸深川・六間堀長屋で、燗徳利に挿した水仙を静かに愛でる浪人・坂崎磐音。そこに今津屋の老分番頭・由蔵からの使いが訪れる。主人・吉右衛門の妻・お艶が亡くなって一年四ヶ月が経ち、主人の再婚に心を砕く由蔵。小田原宿の小清水屋の娘、お香奈を後添えに迎えるべく、鎌倉へ向かうという由蔵に磐音は同道することに。滞りなく対面は済んだはずだったが、翌朝、お香奈は姿を消す。姉には想い人がいた……。そう吐露する妹のお佐紀。磐音は行方を追う。 巻末には、著者特別インタビューを収録!
深川の長屋で浪人暮らしの坂崎磐音は、日光社参の勘定を担うことになった両替商・今津屋からある提案を持ちかけられる。一方、麻疹が流行して将軍家にも患者が出るが、長崎から上府した阿蘭陀商館付の医師は、反対派による妨害のために城中での診察がかなわない。さらには、医師の暗殺計画までも浮上して…。磐音の剣が疾る!
上野に到着した青森発上り急行「津軽」の車内で絞殺死体が見つかった。身元は保険証から赤木喜一と判明したが、郷里の湯沢からは9日前に上京したという。しかも駆けつけた妻は「主人ではない」と証言。犯人は誰を殺したのか。赤木本人はどこに消えたのか。追憶の彼方へ去りし“出稼ぎ列車”が蘇る新装版。
父が殺された。父は詐欺師だった。奴隷解放運動の資金の名目で大金を巻き上げ、それを狙う悪党に殺された。12歳の少年チャーリーは金を約束どおり届けようと決意する。時は19世紀。父の贖罪のため、少年は遙か南へと旅立つ。だがそのあとを父を殺した男たちが追う…。『音もなく少女は』『その犬の歩むところ』の名匠の新たなる感動作。
囚獄・石出帯刀の密命により獄を放たれ、極悪非道の輩を成敗してきた剣客・佐久間音次郎だが、なにやら身辺に不穏な影が…。それは、帯刀の独断専行の証を掴もうとする目付・関口勘右衛門の手の者たちだった。手練れの不逞浪人たちは音次郎の家を襲って、きぬをさらってしまった!囚獄からの連絡も途絶え、孤立無援のなか、音次郎は愛しいきぬを救い出せるか。傑作時代剣戟第五弾!
当て身一発で追っ手を黙らす。小宮山は盗賊からの信頼が篤い凄腕の見張り役だ。しかし彼は実は相馬中村藩士。城から盗まれた茜の茶碗を捜索するという密命を帯びていたのだ。将軍から下賜された品だけに露見すれば藩は取り潰される。小宮山は浪人になりすまし任務を遂行するがー。武士としての矜持と理不尽な主命への反骨。その狭間で揺れ動く男の闘いを描いた、痛快娯楽時代小説!
伝通院以来、秘かに想いを寄せていた土方歳三との別れ。新徴組組士千葉雄太郎との恋。そして悲憤の別離。世のため江戸庶民のためと職務に精励する新徴組だったが、彼らのその高い志が皮肉にも歴史を動かす引き金となってしまった。戊辰戦争…。討幕の流れは止めようもなく、いつしか庄内藩酒井家は朝敵となってしまう。やりきれぬ理不尽さに戸惑いつつ中沢琴は泥沼の戦いに臨むのだった。
失踪した娘を捜してほしいー依頼を受けた、かつて十津川警部の部下だった私立探偵の橋本は、池戸彩乃の捜索を始める。勤務先のパソコンに謎のメモが残されていた。「4116581411123」。本州最北の鉄道の駅、下北駅の緯度と経度と判断した橋本は下北に飛び彩乃の痕跡を追う。一方、東京では彩乃の同僚が殺され十津川が捜査に乗り出す。事件は予想外の展開を見せ始めた!?
生徒を見捨てる校長を殴ってクビになった。恋人に告げると、彼女の両親から婚約破棄を申し渡された。でも彼女からは夢だった弁当屋を一緒にやろうと言われ…。そんなとき、オレがAVに出ていると元生徒たちに告げられた。しかし、それはオレそっくりな従弟だった。親が自慢するエリートだったはずのヤツが何故?両親には言えない秘密を抱えた男たちの悲喜交々を描く、渾身作!
夫婦仲が良好になり、苦手だった算盤の腕も上達。自信がなかった勘定所勤めにも、張り合いが出る笠井半蔵だったが、仕事が上達した真の理由は、剣の技倆を見込まれ影御用を命じられていることにあった。南町奉行・矢部定謙の意を汲み、事件解決のため惜しみなく力を貸す日々。そんな半蔵に、南町奉行の失脚を狙う魔の手が迫っていた!時代剣戟の好評シリーズ第三弾。
金髪のその外国人少年は私の心の支えだった。彼は私の背中で疲れ切って死んだ…。南国の荒々しい自然の中で繰り広げられる地元の少年と収容所暮らしの謎の少年とのみずみずしい心の交流と、あまりに無残な最後を、強烈な筆致で描く永遠の青春小説!
昭和22年9月、小田原の成金倉田家に、白衣姿の異形の傷痍軍人が現れた。片手片脚、両眼がつぶれ口もきけないその男は、外地から復員した倉田家の次男安彦と思われたが、その翌晩、倉田家を惨劇が襲う。そして、五年前の倉田家長男親子の轢死事件が浮上するー。安吾の途絶作を、名匠高木彬光が巨勢博士の活躍で見事に完成させた傑作。
駅前にある大型喫茶店ケレスの特筆すべきはメニューの豊富さだ。厳選された茶葉のドリンクは言わずもがな、多種多様なフード類を売りにする。包丁部の先輩、翔平と颯太がそこでバイトに精を出していると聞きつけた大地は早速面接に臨むのだが…。焼き肉ピラフや特製オムライスなど、まかない飯もとびきり美味。垂涎必至のシリーズ第三弾。
結婚10年。「女房とのセックス」のハードルがここまで高くなろうとは…。稼ぎもない、甲斐性もない、無職同然の脚本家のダメ夫にようやく仕事のチャンスが舞い込んだかに見えた。働き者でしっかり者の妻、5歳の娘とともに四国へ取材旅行に向かうのだが。どんなに激しく罵り合おうとも、夫婦の関係を諦めない男女をコミカルに描く人間賛歌小説。「百円の恋」脚本家のデビュー小説!!
薬剤師夫婦がシチューで毒殺。が、各々の皿の毒が異なり夫婦互いに殺し合ったかに見えた事件の真相「皮肉な夕食」。交通事故で男が死亡。しかし彼が撥ねられる直前に青酸カリを服毒していた謎「死ぬ前に殺された男」。最愛の夫が殺人の重要参考人に指定された狼狽と困惑「容疑者・京堂新太郎」など“氷の女王”景子と新太郎が大活躍する傑作7編。