2019年8月発売
45歳の好太郎は老人ホームから認知症の父を自宅に引き取ることにしたが…。高齢者医療を知る医師でもある著者が、懸命に取り組むがゆえに空回りする家族の悲喜劇を描く「認知症介護」小説。
【文学/日本文学小説】幼い頃の事故で感情を失った監察官・小田垣観月。彼女が統括する、警察の捜査資料保管庫ブルーボックスに、大阪府警から2人の刑事が送られてくる。彼らの不審な行動に疑問を抱く観月だが……。公安J、組対特捜Kたちと織りなす、人気シリーズ第2弾!
【文学/日本文学小説】転籍人事にかちんときた実力副社長、リストラを完遂した途端に自分の首を切られた人事部長、合併銀行の派閥を背景にした熾烈な社長レースなど、「非情人事」を拝命した企業人の複雑な思いと行動を、鮮やかな筆致で描いた短編集。
自分が何者かわからない主人公に「ゼロ」という名を与えたのは不思議な小動物・ナビだった。冒険の前にステータスを割り振りタフネスさを有すオークとなったゼロは、恋仲となったドワーフの女性・ガーネットと添い遂げようとした矢先に命を落としてしまう。かつて命を落としてもオークとして生まれ変わったゼロは「今度こそガーネットを守る」ため、あえて「エルフ」への転生を決意。オークの加護にエルフの魔法力…まさに無敵!?
大学卒業を控え、進学も就職も選べなかった「私」こと楠田由宇子は「滴水古書堂」という古本屋の店主の古戸時久と知り合う。古戸は右半身にあたる部分がなぜか時折奇怪に蠢き、まさに「名状しがたい」動作をする男だった。店が取り扱う商品に漫画やベストセラーなどは一切なく、普通の流通から弾き出されたような奇妙なものばかり。しかし、店の空気に不思議な縁を感じた由宇子はそこで働くことにしたのだった。そんなある日、一本の電話が店にかかってくる。なんでも、古戸の師匠のような老婆からの依頼だという。由宇子は古戸とともに鎌倉に向かうのだが、それは奇妙な事件のほんの小さな入り口に過ぎなかった。
戦う花魁。シリーズ、開幕! 第13回小説現代長編新人賞奨励賞受賞。 天明期の江戸・吉原。大見世である「黒羽屋」の最高級遊女・花魁として名を馳せる主人公の瑠璃は、江戸に跋扈する鬼を滅する闇組織・黒雲の頭領という裏の顔を持っていた。彼女は妖刀・飛雷を操り、恨みを強く抱いて死んだ者がなる「鬼」を退治するのを任務としていたのだ。遊女の身でありながら自由な立場と権力を有するその強い力に惹かれ、様々な妖が瑠璃の下に集まることもしばしば。黒羽屋で若い衆として働きながら瑠璃を支える黒雲のメンバーに裕福な太客たち、仲の良い朋輩にも恵まれている瑠璃だが、己が持つ尋常ならざる力と鬼に対する嗜虐的な思考に苦悩もしていた。そんなある時、親友でもある朋輩が失踪した。
生まれ変わっても、本に埋もれていたい。 女王の図書館は、天体をめぐりめぐってあなたのもとへ。 《この彗星図書館には、皆川博子館長が蒐集してきた名作・稀覯本が収められている。知らない、読んだことがない、見つからないーー。 そんなことはどうでもよろしい。読みたければ、世界をくまなく歩き、発見されたし。運良く手に入れられたら、未知の歓びを得られるだろう。(彗星図書館・司書)》 小説の女王・皆川博子が耽溺した、永遠に残したい本の数々。 『辺境図書館』に続く、完全保存版ブックガイド。(短編も一本収蔵)
三方ヶ原で織田・徳川軍を破った武田信玄は、翌年に尾張へと突入した。その先鋒が那古野城に迫った時、突如、織田信長は降伏を申し出て武田家の軍門に降り、信長は信玄の命に従って働くこととなった。試練の時を過ごした信長は、3年後の天正3年(1575年)に尾張で蜂起し、尾張と美濃を取り戻す…。臥薪嘗胆の時期を終えた織田家の前に立ちふさがるのは、東と西に分かれた武田家。信長は近江を押さえる西の武田勢への攻撃を決断する。しかし、京を出て駿府に引きこもった信玄は、なぜか沈黙を続けるのだった…。
クジラ=AIと対峙せよーー さもなくばヒトの創作は、終わる。 AIの下請けとなった元作曲家に 自殺した天才作曲家が残した謎は未完の新曲と“指”だった。 『虹を待つ彼女』で横溝正史ミステリ大賞を受賞し、 ますます活躍の場を広げる逸木 裕による心揺さぶる音楽ミステリー! ☆☆☆ ヒトはもう、創作らなくていいーー 人工知能が個人にあわせて作曲をするアプリ「Jing」が普及し、作曲家は絶滅した。 「Jing」専属検査員である元作曲家・岡部の元に、 残り少ない現役作曲家で親友の名塚が自殺したと知らせが入る。 そして、名塚から自らの指をかたどった謎のオブジェと未完の新曲が送られてきたのだ。 名塚を慕うピアニスト・梨紗とともにその意図を追ううち、岡部はAI社会の巨大な謎に肉薄していくーー。 私達はなぜ創作するのか。この衝動はどこから来るのか。 横溝正史ミステリ大賞受賞作家による衝撃の近未来ミステリー!
生きる意味を探す元エリート少年の青春小説 性悪な英語教師をブン殴って県下有数の名門進学校・I高を中退した17歳の斎木鮮は、中学時代の恋人だった幹とアパートで一緒に暮らし始める。幹もまた父親の分からない子を産んだばかりで女子高を退学していた。 さまざまな世間の不条理に翻弄されながらも肉体労働での達成感や人間関係の充足を得て徐々に人として成長していく鮮ーー。 幼少期に性的悪戯を受けた暗い過去や、母親との不和による傷に苦しみながらも鮮は一歩ずつ前へと歩みを進めるのだった。第4回三島由紀夫賞受賞作品で、解説を文芸評論家の池上冬樹氏が特別寄稿。
現在と過去が交錯して浮かびあがる「姦通」 文芸誌「群像」に連載された著者の“執念の大作”第2巻。 前田永造の妻・京子が前夫・伊丹との間に設けた長男・康彦は、母のいない寂しさから家出を繰り返す。 康彦の学校へと出向いた永造は、どこか馴れ馴れしい担任の女教師に名前を「作家・前田永造」と呼び捨てにされ不快ながらも性生活について論じたりもする。 そこから一転、先妻・陽子が存命の頃、後に京子の友人として再会する幼なじみ・会沢恵子との不倫の過去へと物語は移行していく。現在と過去が交錯しながら織りなされるように展開していく「姦通」をテーマにした異色の愛憎世界!
令和時代だからこそ書けた「昭和史小説」の決定版が誕生! 天皇とは、この国にとっていかなる存在か。 国家社会の融合体の中心である天皇とは、何と窮屈で、脆く、孤独なものかーー。 昭和天皇が、自ら政治的決定を下したのは「三度」。 二・二六事件の青年将校たちは、天皇のために行動している、との信念のもと蹶起し、鈴木貫太郎らを襲撃した。 ある憲兵は、蹶起軍こそが、反逆者だと憤った。 昭和天皇が、どのような思いを持っているのかを、国民それぞれが夢想し、それを大義名分としてぶつかり合い、昭和という「激動の時代」が作り上げられた。 『ゴー・ホーム・クイックリー』や『ミネルヴァとマルス 昭和の妖怪・岸信介』で近現代史を描き、永田町でも注目される中路啓太による「昭和天皇」にまつわる五つの短篇。 国民の想いに戸惑い、悩む、生身の天皇の姿!
寡作ながら、今まで素晴らしい作品を 生み出してきた乙川優三郎が、 まさに“今”世に贈る短編集! 圧倒的な筆致で、数々の賞を総なめにしてきた 乙川優三郎の真骨頂は、心にしみる短編にある。 乙川は、「悲しみ、苦しみのないものを書こうとは 思わない」という意図のもと、 楽しいだけの話ではなく、 「苦しみの末のハッピーエンドを予感させる物語」 を描く。 「そして人生は続く」という言葉が 読後に余韻として漂う8篇の傑作短篇集。
純粋で真面目な青年ドン・ホセは、カルメンの虜となり、嫉妬にからめとられていく。軍隊を抜け悪事に手を染めるようになったホセは、ついにカルメンの情夫を殺し、そして…(「カルメン」)。黒人奴隷貿易を題材に、奴隷船を襲った反乱の惨劇を描いた「タマンゴ」。傑作中編2作を収録。
沙紀ちゃんはいつも殺されがちな最高にかわいい女の子。わたしは普通じゃないレベルで彼女のことが好きだから、凶悪な犯人をなんどでも見つけ出してやる!と、四六時中息巻く神野羊子は、高校に入学早々、校内で蓮見沙紀の死体を発見。彼女の命を救うため、すかさずお得意の推理を巡らせるー。個性的なキャラクターと唯一無二の文体が織りなす超絶コージーミステリー!
カジノ誘致に失敗し、身を滅ぼした元町長の鈴木一郎は、総理官邸前で「大嘘つき!」と叫んだ。東西新聞社の記者・結城洋子は、彼の境遇を知り、統合型リゾートの暗部を探る。だが、社の内外で無数の壁に阻まれ取材は難航。一方、華やかな表舞台の裏側では、それぞれの思惑を抱えた政治家や外資系企業が蠢いていた。記者たちは矜持にかけて、闇に潜む真相の解明に挑む!