2019年8月発売
血の海となったホテルの一室で、テレビレポーター有森友紀が全裸惨殺死体で発見された。異常者による猟奇殺人か。容疑者に浮上した恋人の広告ディレクター石上彰は冤罪を訴えるが、刑事は執拗に食いつく。その石上が留置場で変死。元刑事で一匹狼の私立探偵見城豪が怒りとともに立ち上がった!野獣の暴力が悪を打ち砕く、ハードな犯罪サスペンスの傑作シリーズ!
「粗大ゴミのように私を放りだそうとしたのはあなたじゃないか」経営不振を乗り切るための組織改革で昇進したはずが、実は“社内失業者”と化していた三矢不動産部次長の大下。彼の許に突然届いたのは「解雇通知」だった。自分を引き抜いた常務の裏切りを痛感した大下は、「日本管理職組合」に復職を訴えるが…(表題作より)。非情で身勝手な企業に挑む男たちを描く傑作短編集。
定町廻り“鬼しぶ”の心配をよそに、唐木市兵衛は未だ大坂に在った。世話になった長屋のお恒の息子が、突然、殺されたのだ。堂島の蔵屋敷で働く孝行息子だったが、その背中には幾つもの刺し傷があった。下っ引の良一郎らと下手人を追う市兵衛。堂島は米の取り付け騒ぎに震撼していた。同じ頃、市兵衛をつけ狙う刺客が現れた。気配からかなりの凄腕と思われ…。
秋月栄三郎は気楽流岸裏道場の稽古に釘付けとなっている若者が気になっていた。取次屋の好奇心から調べてみて仰天した。彼の父は、松田新兵衛が好敵手と認めた、神道無念流の達人だったのだ。その後、騙し討ちに遭い命を絶たれたという。息子は道場を継がず医学を志すが、父を冒涜する父の元弟子を成敗するため、なんと新兵衛に弟子入りを望み…。感涙の最終話。
拳銃を持って押し入ってきた男は、なぜ人質に“憎みあう三人の男”の物語を聞かせるのか?意外な真相が光る「二人の男、一挺の銃」、殺人事件が起きたコーヒーハウスで、ツケをチャラにするため犯人探しを引き受けた詩人が、探偵として謎解きを繰り広げる黒い蘭中編賞受賞作「赤い封筒」。正統派推理短編や私立探偵小説等、短編の名手によるバラエティ豊かな9編をお贈りします。
合衆国陸軍の特技兵、19歳のティムはノルマンディー降下作戦で初陣を果たす。軍隊では軽んじられがちなコックの仕事は、戦闘に参加しながら炊事をこなすというハードなものだった。個性豊かな仲間たちと支え合いながら、ティムは戦地で見つけたささやかな謎を解き明かすことを心の慰めとするが。戦場という非日常における「日常の謎」を描き読書人の絶賛を浴びた著者の初長編。
北国カーランディア。建国以来、土着の民カーランド人と征服民アアランド人が、平穏に暮らしてきた。だが現王のカーランド人大虐殺で、見せかけの平和は消え去った。娘夫婦を殺された大魔法使いが平和の象徴の鐘を打ち砕き、闇を解き放ったのだ。封じることができるのは、古の“魔が歌”のみ。著者が長年温めてきたテーマを圧倒的なスケールで描いた、日本ファンタジイの金字塔。
幼くして両親が離婚したアシュリンにとって家族は宝物だった。だから異父姉の息子が重病を患い、高額の治療費が必要と聞いて姉の亡父の遺産を独占した実業家ダンテの住むシチリアへ飛んだ。だがダンテは援助を拒み、逆にアシュリンに協力を求めてきた。パーティに婚約者として同行すれば100万ユーロ払おう、と。取引先の要人が同席する場で遊び人の汚名を返上したいらしい。かわいい甥を救うためなら、なんだってするわ。アシュリンは承諾し、男女の一線だけは越えないと約束する。ところが当日、宿には部屋が1つしかないと知って…。
カフェで出会った瞬間から、ルーシーはタージに惹かれた。まさか、ハンサムな彼がイギリス訪問中の異国の王とも知らず。絢爛豪華なヨットでのパーティへ招待され、彼女は夢のような一夜をタージと過ごしたが、朝がくる前にひそかに立ち去った。王だとわかった以上、彼の隣に庶民の自分の居場所はないからだ。しかし3カ月後、タージと思いがけない再会を果たしたとき、ルーシーは母とともに暴力的な継父に追われ、窮地に陥っていた。タージに助けてと言ってみる?もうほかに方法はない。私のおなかに宿っている、彼の赤ちゃんを守るには…。
スペインの名門富豪ディエゴは、女心を弄ぶ堕天使と悪名高い。両親の愛に恵まれず、孤独な子供時代を過ごした彼は、妻が浮気相手とともに事故死して以来、愛を信じなくなった。あるとき祖父に、兄弟のうち先に結婚した者に財産を譲ると申し渡されてまもなく、疎遠な弟マティアスの婚約を知る。だが、相手が取引先の娘リリアナと聞いて絶句した。彼女はぼくに恋していたのではなかったのか?-結婚前夜、窓辺に佇むリリアナに近づく、黒い人影…。「ヘリを待たせてある。一緒に来るか?」ディエゴが言った。
高級デパートチェーンの社長秘書エヴァは、会議の準備中、服にコーヒーをこぼしてしまい、慌てて着替えをしていた。運悪くそこへ次期社長のジョスが現れ、彼女は恥ずかしさに息をのんだ。長年、有能な彼にときめいても、必死に恋心を抑えてきたのだ。今も平静を装いながら、エヴァが背中のファスナーを上げるのを手伝ってほしいと頼むと、ジョスは紳士らしく手を貸してくれた。だが、まさにその瞬間を目撃した彼の父である現社長が、二人の仲を誤解した様子の訳知り顔で、衝撃の事実を告げるーじつは自分は末期癌だが、これで安心して息子に会社を譲れる、と。エヴァが誤解を正そうとすると、ジョスがそれを遮るように宣言した。「彼女とは真剣な関係だ。じつは、僕たち、婚約したんだ」
看護師のエマは車でオランダを旅行中、誤って高級車にぶつかってしまう。すぐに謝り、弁償すると申し出たが、相手の男性は冷たくそっけない。それでいて、同乗していたエマの母には優しくふるまう彼に、苛立ちと、切ないような不思議な感覚を胸におぼえ、エマは戸惑った。名も告げず去った彼を、その後も思い出しつつ迎えた旅の最終日、古城での催しで、エマは件の男性と偶然再会し、胸を高鳴らせる。ユスティンと名乗った彼はしかし、隣にすらりとした美女を連れていた。「そういうことなのね…」小さくつぶやいて肩を落とすエマだったが、帰国後、職場の病院で、驚くべき事態が彼女を待っていたー手術の最新技術を伝授する外科医として、ユスティンが現れたのだ!
23歳のモリーはまだ男性経験がないが、2週間前の仮面パーティで夢のようなキスをしてくれた男性こそ、運命の人と確信した。顔はわからないながらも、相手の指輪から、彼が誰かは見当がついた。そこでモリーは、相手の弟であるジュリアンを訪ねる。ジュリアンとは兄妹も同然に育ったので気恥ずかしいけれど、意を決して恋の相談をすると、彼は思いがけない提案をした。1カ月間、ジュリアンとモリーが恋人同士のふりをすれば、兄の嫉妬心をかき立て、振り向かせることができるというのだ。だがモリーは知る由もなかったー目の前のジュリアンこそ、あの夜、魅惑のキスで彼女の心を奪った“運命の人”とは!
十代で母と妹を事故で亡くし、自らも癌を患った過去を持つナオミは、ある日、人里離れた場所に立つガラス張りの館を訪れた。ここに住む有能な大富豪、ロイスの協力のもと家業を盛り立て、もう病弱な自分ではないことを、家族に証明したいのだ。でも、世間を寄せつけない彼との交渉は慎重に進めなければ。いざ会ったロイスは、優しく魅力的な男性だった。悪天候でガラスの館に閉じ込められ、ともに過ごすうち、ナオミは孤高の大富豪に強く惹かれ、身も心も任せてしまう。しかし、性急に燃え上がった情熱の余韻も冷めやらぬなか、ロイスが氷のように硬い表情で言った。「きみの本当の目的はなんだ?」
2カ月前に母を病で亡くしたばかりのマリーナは、白血病の少女に骨髄を提供するため、はるばるイギリスへやってきた。空港に迎えに来ていたのは、約束の運転手ではなく、少女の親族である若く美しきウィンターボーン伯爵、ジェームズだった。はじめこそ、尊大な態度をとる彼に反感をおぼえたものの、互いに身の上話をするうち、しだいに打ち解けていった。そしてマリーナは伯爵に魅了されている自分に気づくー心も、体も。経験したことのない我が身の反応に戸惑うと同時に、気分が浮き立つ。だが、伯爵邸に案内されるなり、ジェームズの世話係の老人が忠告した。伯爵様には、婚約を考えている美しい令嬢がおられます、と。
ケイトの勤務する会社が突然買収され、現れた新社長の姿を見て、彼女は我が目を疑った。5年前、事業が成功して富豪になるや、別の女性を作ってケイトを捨てた元夫のショーン。今でも私の心は血を流しているというのに、彼の下でなんて働けないわ。ましてや、離婚後に身ごもったと気づいた息子の存在は知られたくない…。(『愛を捨てた理由』)。牧師の次女ジョージアがイタリア名家の子息レンツォと結婚するのには、誰にも言えない事情があった。もともとレンツォの婚約者だったジョージアの姉が、彼の既婚の弟と駆け落ちしてしまい、姉の身代わりとして結婚に同意しなければ、父親に事実を告げると脅されたのだ。姉の背徳を知れば、聖職者の父はどれほど悲しむか…。(『ハネムーン』)
シアは両親亡き後、ウエイトレスをしながら大学で学んでいる。華やかな生活を送る友人からNYでの休暇に招かれたが、連日連夜のセレブの集いには、気後れして楽しむことができない。ある晩、会場のバルコニーでシアは男性に声をかけられた。目を見張るほどハンサムで、富と権力がにじみ出るようなオーラに、男性経験のない彼女は恐れをなして逃げ出してしまう。彼こそがパーティーの主賓、大富豪のルシアン・スティールであり、目を留めた女性は必ず手に入れると知ったのは、そのあとだ。翌朝、高級ホテルの鍵が届き、友人宅から彼女の荷物が運び出された。シアは震え上がった。私は、彼の標的になってしまったの…?
アリスはコーンウォールの漁村にある小さな診療所の医師だ。ある日、村の不良少年たちに絡まれてしまったアリスは、ハンサムでたくましい、イタリア系の男性に助けられる。それがジョヴァンニ・モレッティージオとの出会いだった。その年の夏、アリスの同僚が恋人とバカンスに出かけるあいだ、代わりに来てくれることになった元外科医だという。ひょんな手違いからジオはアリスの家に下宿することになり、職場でも家でも一緒という、気まずい夏が始まった。なぜなら、ジオは完璧すぎるのだ。腕の立つ医者で、優しくて、セクシー。アリスは初めて覚える胸のときめきに、とまどいを隠せず…。
看護師のルイーズは恋人の外科医ダニエルと結ばれた翌朝、君は僕の妻にはなれない、これは軽い“お楽しみ”だったと告げられた。ショックのあまり母国に戻るが、追い打ちをかけるように妊娠が発覚。彼女との結婚を望まないダニエルには知らせることなく、独りで産み、貧しいながらも懸命に赤ん坊を育てていた。息子が3カ月になり、仕事復帰に選んだ病院へルイーズが初出勤すると、そこには驚くべき人物がーなんとダニエルが勤務していたのだ!ルイーズが子育てをしていると人づてに知った彼は、なぜ秘密にしていたと責めるよりも、さらに残酷な言葉を口にした。「よかったね。僕のあとに、幸せになれる相手に巡り合えたんだね」