2020年10月29日発売
その虫眼鏡で覗くと、木や湖や雲から、擬態したいきものが現れる。自然豊かな村に隠された、美しい絵画のような謎。新種の謎、発見!ファーブル君と呼ばれる青年と、元美大生・遠野真亜梨。不思議な縁で出会った二人は、原因不明の数々の事件を解き明かしていくー。感動の連作短編ミステリ。
物静かな高校の先生、予備校に通う女子高生、家業の電気店を継いだ若者、少年野球のピッチャー、洋食店のシェフー一見つながりのない人たちを結んでいる、強くてまっすぐな気持ち!なにかを心から「好き」でいる、すべての人へ贈る爽快な感動!!
「信長公の首級は何処にある」囲碁名人の本因坊算砂は息が止まりかけた。慶長十二年師走、大坂の陣が勃発する七年ほど前の駿府城。すでに将軍職を嫡男の秀忠に譲り、今は大御所政治を敷いている徳川家康と対局している最中の出来事だった。心中深く見通すような眼光で睨んでくる家康に、沈黙するほかない算砂ー。が、家康の気迫が込められた、堅固な盤を打ち抜かんばかりの碁石の音が、算砂の“炎の記憶”を呼びさましたのであった。なんと算砂は、日海と名乗っていた若かりし頃、戦国の荒波に翻弄され、図らずも本能寺の変に触れていたのだ。いまだ見つからない織田信長の亡骸、依然と知れない明智光秀の肚の内。茶会や連歌の会、安土築城などに潜む数々の謎。いったいなにが謀反を引き起こしたのか?若き日の本因坊算砂が戦国人の間近で見た歴史の棋譜を描く!
完成しながらも発表されず、手許に残された「影に対して」。「理由が何であれ、母を裏切り見棄てた事実には変りはない」しかし『沈黙』『深い河』などの登場人物が、ついにキリストを棄てられなかったように、真に母を棄て、母と別れられる者などいないー。かつて暮した街を訪ね(「六日間の旅行」「初恋」)、破戒した神父を思い(「影法師」)、かくれキリシタンの里を歩きながら、(「母なるもの」)、失われた“母”と還るべき場所を求め、長い歳月をかけて執筆されて全七篇。
琵琶湖近くの介護療養施設で、百歳の男が殺された。捜査で出会った男と女ー謎が広がり深まる中、刑事と容疑者だった二人は、離れられなくなっていく。一方、事件を取材する記者は、死亡した男の過去に興味を抱き旧満州を訪ねるが…。昭和から令和へ、日本人が心の底に堆積させた「原罪」を炙りだす、慟哭の長編ミステリ。
食べることはその土地と生きてゆくこと。舌を燃やし、思い出を焼くつくすほど辛い唐辛子、庶民のキャビアと呼ばれるサルデッラに腸詰めサラミのンドゥイヤ、近海で獲れた鰯の塩漬け、シーラ山地で生産されるチーズやじゃが芋、自家製オリーヴオイルにワイン、スイカや無花果など季節を彩る果物…。南イタリア、カラブリア州出身の作家が、固有の言語と食文化を守ってきた郷土の絶品料理と、人生の節目ごとに刻まれた家族の記憶とを綴る、自伝的短篇小説集。
女子刑務所のある小さな町、ドゥーリング。平穏な田舎町で凶悪事件が発生した。山間部の麻薬密売所を謎の女が襲撃、殺人を犯したのちに火を放ったのだ。女はほどなくして逮捕され、拘置のために刑務所に移送される。彼女の名はイーヴィ。世界を奇妙な疫病が襲いはじめたのはこの頃だった。それは女たちだけに災いする「病」-ひとたび眠りにつくと、女たちは奇妙な繭状の物質に覆われ、目を覚まさなくなったのだ。繭を破って目覚めさせられた女たちは何かに憑かれたかのように暴力的な反応をみせることも判明する。世界中の女たちが睡魔に敗れるなか、謎の女イーヴィだけが眠りから逃れられているようだった。静かな町がパニックの空気で満たされはじめる。睡魔にうち勝とうとする女たち。取り残され不安に蝕まれる男たち。やがて町にふりかかるカタストロフィは、まだ水平線の向こうにある!巨匠スティーヴン・キングが、作家である息子オーウェンとコンビを組んで放った、圧倒的パンデミック・ホラー巨編。まさにキング印の物語の大波が、読者を巻き込んで怒涛をなす!
眠りについた女たちは「別の世界」で目をさます。そこは廃墟に様変わりしたドゥーリングの町。さまざまな事情を背負う受刑者、刑務所長、平凡な主婦だった者、あるいは妊婦。彼女たちは、それぞれにできることを担いながら、彼女たち以外に誰もいない世界で生き延びようとする。残された男たちのあいだでは恐怖と不安がつのっていた。繭を破れば凶暴化する女たちへの恐怖。眠ってしまった女たちが二度と目覚めないのではないかという不安。伴侶や娘を失った者は絶望し、まだ眠っていない女たちは睡魔から逃げのびようと苦闘する。しかし女を憎悪する男たちは眠る女たちを焼殺しはじめた。一方、謎の女イーヴィを刑務所で匿う男たちは、彼女を守ることこそが事態の解決に導くと信じるが、そこへ急進派の男たちが武器弾薬で武装して、イーヴィを始末すべく迫りつつあった。町はずれの森の中にそびえる巨木。この世ではない別の世界。女たちの死を悼むように舞う美しい蛾ー奔放なイマジネーションが彩る物語は、壮絶なクライマックスへと突入する。世界最強の作家父子の唯一無二のパワーを目撃せよ。
交通事故に遭い、意識不明となった木村宙太。3・11の後、原発で働いていた君だが最愛の妻の呼びかけにも応じられない深い眠りの中にいる。2019年11月、私は君に、日々ささやきかける。-君よ、目覚めよ。(「夢七日」)。1710年、身分違いの悲恋で心中し、恋人・久松と共に「書かれた世界」に放り込まれてしまったお染。歌舞伎や浄瑠璃に脚色され、名誉を傷つけられてきた彼女は今また生き返り、ネットでの中傷に立ち向かおうとする(「夜を茶の國」)。言葉の力を知り抜いた著者がいまこそ贈る、渾身の小説集!
祖母の様子を見てきてくれ。兄・洋一に頼まれ、久方ぶりに京都を訪れた弟・哲郎。再会も束の間、病院に担ぎ込まれた祖母・ゑいは、夢うつつの中で祖父・良一との出会いと別れ、そして戦前から戦後にかけて激動の時代を生き抜いた自らの半生を語り出すー。かつて「東洋のハリウッド」と謳われた映画の都を舞台に二つの時代が交錯し、一冊のアルバムと一本のフィルムの謎が鮮やかに解き明かされる、感動のデビュー作!第1回京都文学賞一般部門優秀賞受賞作。
1940年初夏、ドイツ軍による首都陥落を目前に、南へと脱出するパリの人々。占領下、征服者たちとの緊迫した日々を送る田舎町の住人たち。それぞれの極限状態で露わとなる市井の人々の性を、透徹した筆で描く傑作長篇。全米100万部、世界350万部のベストセラー。