2020年2月21日発売
「豚になってでも生きろ」-李芳根の助けで日本に逃れた南承之。済州島に残った芳根が自殺した日の夜、承之と芳根の実妹で東京に住む有媛は同時に芳根の夢を見る。二つに割れてそれぞれの心の中に生きる芳根の魂が二人を引き寄せていく。名作『火山島』の続々編にあたる本作は、金石範文学の原点であり、巨大な小説の終わりでもある。
「また高齢ドライバーの事故かよ」。猪狩雅志はテレビニュースに目を向けた。そして気づく。「78歳っていえば…」。雅志の父親も同じ歳になるのだ。「うちの親父に限って」とは思うものの、妻の歩美と話しているうちに不安になってきた。それもあって夏に息子の息吹と帰省したとき、父親に運転をやめるよう説得を試みるが、あえなく不首尾に。通販の利用や都会暮らしのトライアル、様々な提案をするがいずれも失敗。そのうち、雅志自身も自分の将来が気になり出して…。果たして父は運転をやめるのか、雅志の出した答えとは?心温まる家族小説!
結婚して五年、定職にもつかず浮気と借金を繰り返す夫に絶望した絵乃は、身ひとつで家を飛び出し、離縁の調停を得意とする公事宿「狸穴屋」に流れ着く。夫との離縁を望むも依頼できるだけの金を持たない彼女は、女将の機転で狸穴屋の手代として働くことに。果たして絵乃は一筋縄ではいかない依頼を解決しながら、念願の離縁を果たすことができるのか!?
ある日、義兄のルカに呼び出されたソフィアは衝撃を受けた。サン・ジェナーロの国王として、彼は平民上がりの義妹のために、結婚相手を選ぶ舞踏会を開くつもりでいたのだ。私は誰とも結婚なんてしたくない。好きなのはルカだから。しかし国王に逆らっても無駄で、舞踏会の夜はやってきた。悲しみのあまりソフィアは屋外へ飛び出し、薔薇園へ逃げこむが、追いかけてきたルカに唇と純潔を奪われてしまう。その数週間後、彼女は急な吐き気に襲われ、妊娠に気づいた。ルカに命じられた別の男性との結婚式は、目前に迫っていた…。
夢が叶うまで、あと1万ポンドー祖父母の遺したコテージで暮らすため、タラは働きづめだった。貧しい彼女には家の改修費すら、まだ用意できずにいた。そんなとき裕福な銀行家マルクが声をかけてきた。南フランスの別荘で1週間、恋人のふりをしてくれたら、1万ポンドの報酬を支払うというのだ。これほど魅力的な男性と親密な演技だなんて、私にできるの?タラの不安は的中し、マルクに恋して身を捧げてしまう。資金を得た彼女は虚しさに襲われるが、妊娠に気づいて…。
年上の実業家ブレイクとの結婚がわずか半年で幕を閉じて以来、サファイアの瞳は憂いに沈んだままだ。まだ17歳だったけれど、彼とは相思想愛ーそう信じて疑いもしなかった。なのに新婚初夜から、夫は彼女に指一本触れようとしなかった。その理由が、夫がある女友達と親密な関係にあるせいだと知り、サファイアは傷つき、失意のうちに家を出たのだった。4年後、ブレイクから突然、手紙が届く。父が瀕死の重病?駆けつけた彼女は元夫に結婚を迫られる。再びの愛なき結婚を。
ある日マディが働くカフェに、二人連れの男性客が現れた。二人とも明らかに場違いな印象だが、とくにそのうちの一人、深い海のようなサファイアブルーの瞳の彼にマディは目を奪われた。この町の人ではないし、普通の観光客でもなさそうね…。彼はワードと名乗ると、町の案内をしてほしいと申し出た。同僚のウェイトレスも誘って4人で出かけることにしたが、人の多い場所へ来たとき、雑踏の中で誰かがワードを見て叫んだ。「エドワード王子よ!」彼が、かの王国のプリンスですって?すると、ワードは突然こう言って、さらにマディを驚かせた。政略結婚から逃れるため、僕と期限付きで結婚してくれないか、と。
ピンク色の線が2本。3回検査した結果は…妊娠だ。母親になると思うと、リーは過呼吸を起こしそうだった。ザンダーにも、父親になると伝えなければ。出会ってすぐに惹かれ、すべてを許したギリシア富豪の彼にも。だが赤ん坊ができたと聞くと、ザンダーは彼女の電話を切ってしまう。どういうこと?彼は評判どおりの、血も涙もない実業家なの?翌日、ヘリコプターで訪ねてきたザンダーは意外な提案をした。「一緒に暮らそう」しかし、リーの胸は痛くてたまらなかった。ザンダーは結婚を望まず、私がお金に困っていると知っている。彼の申し出は子どものため。その母親を愛しているからじゃない…。
キーナは18歳のとき、父が働く工場の御曹司との恋に舞い上がったが、手酷くあつかわれ、逃げるように故郷を後にした。夜間工場で仕事をしながらデザイン学校に通い、卒業後は、業界の帝王である大実業家ニコラスに雇われ、身を粉にして働いた。当時、妻を亡くしたばかりのニコラスはその冷徹さが妻の死を招いたともっぱらの噂だったが、キーナは知っていたー彼が美しき妻の生前の写真を、大事そうにデスクに飾っていることを。初恋の傷心で臆病になっていなかったら、私も恋におちていたかも…。そんなニコラスと出会って6年。食事をともにしたある夜、彼がキーナに思いがけない申し出をする。「僕は君の愛人になるつもりだ」
働きに出たシカゴで、マーティナは運命の人ノアと出会ったが、不運にも、両家が故郷で代々反目し合う仲だとわかった。それでもシカゴにいる間だけと、思いのままに情熱を燃やした。生まれて初めて経験した本物の恋…幸せって、こういうことなのね?しかし3週間後、マーティナはノアの前から忽然と姿を消したー行き先も、本当はまだ彼を愛していることも、伝えぬままに。数カ月後、故郷で兄の結婚式に出席していたマーティナの目に、思いがけずノアのたくましい長身が飛び込んできた。「マーティナに会いに来た」そう宣言するノアの声を聞きながら、マーティナは木の陰に隠れ、膨らみつつあるお腹をさすった…。
レイチェルが切り盛りする小さなカフェにある日、上質の身なりをした紳士が突然現れ、店内がざわめいた。誰もが知る実業界の大物、ガブリエル・ウェブー会うのは初めてだが、長身で強烈なラテンの魅力を放つ彼は、レイチェルの元恋人の父親だった。こんな場違いなところに、ガブリエルのような人がどうして?もしも息子と似ているとしたら、彼も冷徹な価値観の持ち主だろう。絶対に関わりたくないと思ったレイチェルの耳に、ガブリエルが囁いた。「とうとう君に会えてよかったよ」肉感的なぬくもりのある声…。若く見えるけれど白髪交じりで17歳も年上の彼に、いえ、それより、ひどい言葉で私を傷つけた男の父親に胸を高鳴らせるなんて…。
両親を相次いで亡くし、17歳で路頭に迷ったポリーはうち捨てられた城に住み着き、男物の古着を身につけて、畑仕事や家畜の世話をしながら幼い弟たちを懸命に育てていた。だがある日突然、見るからに高貴で美しい男性が目の前に現れる。この人が、英国有数の富と権力を持つというマンテーニュ侯爵?悪名高い放蕩者が、ついに自分の城を顧みる気になったというの?ふたたび住む場所を失う恐怖にさいなまれながらも、ポリーは勇気をかき集めて古城の当主に向き合った。「まずはそのすばらしい脚を大事にしまって、ドレス姿に戻ることだ」侯爵の熱い瞳に見据えられ、甘い衝撃がポリーの全身を貫いた。
親戚のけちな老伯爵に家政婦のようにこき使われてきたメグは、老伯爵の死後、新しい後継者が到着する前に館を出るつもりだった。だが悪いインフルエンザにかかり、診察料を払えないため医者も呼べず瀕死の床についていたとき、夢のような救世主が現れた。マークと名乗る美青年が医者を呼び、つきっきりで看病してくれたのだ。朦朧とした意識のなか、メグはお金の心配をしつつも、マークの腕に抱かれて不思議と安心感を覚えた。献身的な看病の甲斐あってやがて体力を回復したメグは、看病してくれた人物が誰かを使用人から聞き、目の前が真っ白になった!「先日の夜に到着なさった、ラザフォード伯爵ですよ」
18歳の誕生日、アマンダは伯爵チェーザレから求婚された。それは親友同士である二人の母親が望んだことだったのだが、傲慢で情け容赦なく、誇り高い鷹のような伯爵が恐ろしくて、アマンダはプロポーズを断り、そのまま故郷を離れた。5年後、彼女は伯爵の弟ピエロと偶然の再会を果たす。優しく穏やかなピエロに伴われ、久しぶりに帰郷した彼女は、冷たい怒りをたたえたチェーザレの瞳に迎えられた。そして、アマンダは思い知らされることになる。チェーザレが、彼女の拒絶を許していなかったことを。そして、強引な求婚の第二幕が、今まさに切って落とされたことを。
ジョージーは、不本意なかたちでチャールズに純潔を奪われた。しかもそれを、彼の異母弟で裕福な銀行家コナンに知られてしまった。コナンは「責任を取って彼女と結婚しろ」とチャールズに迫ったが、あろうことか、チャールズはその後事故で急死する。いったいこれからどうなるのだろう。おなかの子は…?そう、彼女はあの一度きりで妊娠してしまっていたのだ。災難は続き、今度はジョージーが事故を起こして記憶を失う。病院に駆けつけたコナンが言った。「妻も子も無事でよかった…」私に、こんなにもハンサムで優しい夫がいたなんて。退院を迎えた夜、ジョージーは夫の熱い抱擁に迷わず身を任せた。
10年前、レイチェルは恋人スティーヴンの前から姿を消した。当時の二人は、バレリーナの卵と野心に燃える若き事業家で、スティーヴンは千載一遇のチャンスを掴もうとしているところだった。身ごもっていると気づいたのは、そのときだ。愛する人が夢に邁進できるよう、彼女はそっと身を引いたのだった。若気の至りと言うには大きすぎる過ちだったと知ったのは、10年後、レイチェル親子とスティーヴンの偶然の再会のあと…。あれからずっと彼女を捜し続けていたというスティーヴンは、裏切られた苦しみのあまり、冷徹な億万長者へと変わっていた。自分と同じ青い瞳の男の子を見て、彼の目に新たな怒りの炎が上がる。