2020年2月27日発売
近代朝鮮に資本主義の萌芽はあったのか。朝鮮のブルジョア革命をめざそうとした金玉均とは何だったのか。若い時代から漠然と思考し続けてきた考えが、作家自身のなかで少しずつ増殖していたー。一九八〇年代、小説を書かなくなった趙愚哲は、物理学者・安淑伊との関係を妻・洪玉姫に打ち明け、別れを告げられている。家を出たものの離婚に踏み出せずにいるぼく愚哲は、三人の息子を気にかけながらも、民族文化運動「統一クッ」の公演、新しい雑誌「民濤」の創刊のために奔走する。
怪談を聞かせるか怖い話に出た場所を訪れると無代になる妖しい飯屋「古狸」に通う桧物職人修業中の虎太。盗賊の頭目「蝦蟇蛙の吉」たちに皆殺しにされ空き家となった店に忍び込み、行方知れずになった鶴七の謎を探るため虎太はその建物に泊まり込む。すると悪夢が!鶴七はどこに?「首縊りの木」と関わりが?
「春、死なん」妻を亡くして6年の70歳の富雄。理想的なはずの二世帯住宅での暮らしは孤独で、何かを埋めるようにひとり自室で自慰行為を繰り返す日々。そんな折、学生時代に一度だけ関係を持った女性と再会し…。「ははばなれ」母と夫と共に、早くに亡くなった父の墓参りに向かったコヨミ。専業主婦で子供もまだなく、何事にも一歩踏み出せない。久しぶりに実家に立ち寄ると、そこには母の恋人だという不審な男が…。人は恋い、性に焦がれるーいくら年を重ねても。揺れ惑う心と体を赤裸々に、愛をこめて描く鮮烈な小説集。
静岡県沼津市で交通事故が発生、運転していた小学校教諭の森遠謙介が死亡した。一人娘の伊緒が悲嘆にくれる中、驚愕の事実が判明する。事故発生日の未明から、謙介の教え子である恩田六助の行方がわからなくなっていたが、その痕跡が車内から発見されたという。お前の父親は誘拐犯だ。周囲からの非難、マスコミの追及、警察の圧迫ー。折れそうな心を奮い立たせ、真実を知るため、伊緒は六助を捜し始める。
瑠璃を吉原に売った義理の兄は、「黒雲」と敵対する組織「鳩飼い」の一員だった。黒雲はなんのために存在しているのか。鬼退治の依頼人は誰なのか。義兄の目的はなんなのか。疑問が渦巻く中、瑠璃は「大切なものと、地獄で再会するよ」と予言される。
児童養護施設で育った、上條優斗、花咲詩音、中園果林の三人は家族以上の深い絆で結ばれていた。三人が中学卒業を間近に控えたある日、施設に宗教団体「神闘会」の香坂という男が現れる。詩音がじつは日本を裏から支配するその団体の会長の孫であり、後継者としてゆくゆくは日本の政財界の中心的存在になることを期待されていた。神闘会の系列高校に入学した三人だったが、詩音の決断によって絆が断ち切られていく…。
京都での学生時代、駆け出し記者だった頃の結婚、十年後の離婚、新たな家庭と四十を過ぎてはじめてもうけた一人息子。東日本大震災の激務を経ながら癌を患い、現役記者を続けて六年。最後の日々が、目前に近づいてくるー。五十を前にして病を得た記者に流れた三十年の歳月。大佛次郎賞受賞作家が、ままならない人生のほのかな輝きを描く最新長篇小説。
彼は28歳で、自ら知る限り何の野心もない。大不況下のブルックリン。名門大を中退したマイルズは、霊園そばの廃屋に不法居住する個性豊かな仲間に加わる。デブで偏屈なドラマーのビング、性的妄想が止まらない画家志望のエレン、高学歴プアの大学院生アリス。それぞれの苦悩を抱えた男女4人は、見捨てられたこの小さな家から、不確かな未来へと歩み出す。不安の時代をシェアする若者たちのリアルを描く愛と葛藤と再生の物語。
ある日自分がティーンズラブの世界に転生したことに気づいた雑用メイド・リリィ。不自然なほど出くわす都合よすぎなラブシーン、しかも主要キャラだけはっきり顔が見えて他は全部モブ顔という仕様付き。けれどその異能(?)を女王陛下に見込まれ、王宮の恋愛事情を探るお役目を言い渡された!なので出歯亀のごとく人々のイチャコラぶりを観察していたら、なぜか自分にも恋愛イベント到来!?それも実は女性のフリした女王陛下からの溺愛でー?異能付きモブメイド×正体を隠した訳アリ陛下。
突然王太子から婚約破棄を申し渡された悪役令嬢シルヴィ。王太子の恋人へのいじめ疑惑は大根掘りのアリバイでぶっ潰し、ふんだくった慰謝料とS級冒険者ライセンスを片手に田舎の農場へ悠々移住。さあ憧れのスローライフを!と思いきや、今度はクソ真面目な第二王子が押し掛けてきた!?どうも彼女を王家に仇なす危険人物と見ているらしく、監視と称して居座るようになりー。ならば仕方ない。四大精霊共々私のためにキリキリ働いてもらいます!
三百年生きるといわれる魔法使いは、自分の弟子と宿命づけられた人間の子に魔法を伝授してから、死者の世界(ゴーストワールド)へと退いていく。だが、猟師マリュータは愛息アンブロージをよこせという魔法使いクズマの要求をはねつけた。それが世界をどんな不幸に陥れるかも知らず…。是が非でも弟子を手に入れようとするクズマの呪いは、やがてマリュータ父子のみならず、平和に暮らしていたトナカイを追う人々にも過酷な運命をもたらすのだった!英国発ダーク・ファンタジーのシリーズ、第二弾。
皇帝の圧政に苦しむ北の民を見かねた見習い魔法使いのシンジビスは、魔法使いである祖母の忠告に逆らい、皇帝の街へひとり向かう。そこは正しい者が処刑され、不正が横行する非道の街だった。シンジビスは皇帝を正しい道へ導こうと手を尽くすが、皇帝の残虐行為に拍車がかかるばかり。そのうえ、皇帝に取り入る偽の魔法使いが、シンジビスを亡き者にしようと企んでいた。やがて悪との対決のときを迎え、シンジビスの怒りが炸裂する!英国発ダーク・ファンタジーのシリーズ・完結。