2020年3月発売
特別永住者制度の廃止、外国人への生活保護違法化、公文書での通名使用禁止…。排外主義が支配する日本で、在日三世の柏木太一が反攻の計画のために集めたのは、“武闘派”少年の尹信、自殺願望を抱える宣明、帝國復古党の貴島、妹を「在日韓国人であるゆえ」殺された金泰守、そしてー。怒りと悲しみの青春群像。
自らを“最後のアイヌ”と呼ぶ、誇り高き反骨のアイヌ歌人、森竹竹市。その鋭い眼差しの先には、つねに未来があった。激動の時代にアイヌを生きたその生涯を、彼の詩と、掛川源一郎氏の写真から紐解くノンフィクション。 序章 語るに落ちる、第1章 少年の肩、第2章 鉄道員、第3章「若きウタリに」、第4章『原始林』、第5章 アイヌを生きる 第6章 レラコラチー風のように 終章 「ラストアイヌ」の矜持 あとがき
◎斎藤真理子さん評(「ハフポスト日本版」2020.10.17) 《本書は済州島の海女たちの暮らしと闘いがテーマとなっており、厳しく優しい海の生命力と海女たちの誇り高い人生が溶け込んだ読み応えたっぷりの一冊》 ◎金時鐘さん評(『現代詩手帖』2020年8月号) 《差し出してみたい一冊の詩集》《歴史の闇に取りついた詩人/日本の詩には見られない、まれな詩的リアリズムをここに見る》 ◎「ふぇみん」2020.7.5 《済州島生まれの著者…が海女たちの人生を綴った…海面に浮かび上がる時に、たまりにたまった息を吐く磯笛のような、水の詩に耳をすます。それは絶望の歌でなく、生に続く希望の歌だ》 ◎「毎日新聞」2020.6.14 《詩集に満ちるのは、呼吸のリズム。海に潜り、呼吸を整え、また潜る。海女たちの身体に刻まれた記憶が、詩のリズムの中で読者の体も揺らす》 ◎佐川亜紀さん評(「しんぶん赤旗」2020.5.29) 《一九三二年の海女抗日闘争などをしなやかな言葉で書く。…民衆の闘いの歴史が勇気を与えてくれる》 ◎田原範子さん書評(「週刊読書人」2020.5.22) 《ホ・ヨンソンは、文学は時代に対する応答だという。人びとの苦痛と記憶に光をあて、生と死のあわいを漂う海女の声をひろいあげた》 ◎山内光枝さん書評(「熊本日日新聞」2020.4.26) 《詩人は…激浪のなかで女たちを生かし奮い立たせた命への愛と、痛みをうたった》《声を継ぐということは命を継ぐことに等しいことを、この詩集は静かに訴える》 ◎岡和田晃さん評(「図書新聞」2020.4.18) 《石牟礼道子の小説を読むかのように、言語という「国境」を超克するものとして読むことができる》 白波に身を投じる瞬間、海女は詩であった。 海に浮かぶ瞬間から詩であった。 海女は水で詩を書く。 風が吹けば風に吹かれるままに、雪が降れば雪の降るままに、体いっぱいの愛を込めて詩を書きつづる。 水に生きる海女たちの物語の中で、水を知らぬ生を生きている私をのぞきみることができないだろうかと思いました。 みずからを弱い存在であると思い込んでいる人びとに、限界を飛び越えてゆく彼女たちの勇気を、手渡すことができるかもしれないという思いもあるのです。 ーー「日本の読者に手渡すささやかな息」より 聞こえないわからない痛みの記憶が確かにそこにあることを嚙みしめながら、女たちの語りえない記憶の標(しるし)を打ち込む言葉を紡いで、済州という島の記憶の地図を描きだすようにして歌うホ・ヨンソンの詩の世界の一端に、このとき私ははじめて触れた。 ーー姜信子「訳者あとがき1」より 海女は水で詩を書くーー。韓国済州島の詩人ホ・ヨンソンの詩集。日本植民地下の海女闘争、出稼ぎ・徴用、解放後の済州四・三事件。現代史の激浪を生き抜いた島の海女ひとりひとりの名に呼びかけ、語りえない女たちの声、愛と痛みの記憶を歌う祈りのことば。姜信子・趙倫子訳。
転生したら中華風乙女ゲームのライバルキャラ!? 皇帝の寵愛をいいことに後宮を牛耳る悪役寵姫? このままでは処刑エンドにまっしぐら! 回避するため前世の記憶を駆使して フラグ解消に暗躍! ──のハズが攻略対象が全員、私にメロメロに? オレ様皇帝陛下、天才少年文官、武骨な軍人、 チャラ男武将に、美貌の宦官まで!! 逆ハーレムエンドも、ご遠慮願いますっ! 異世界転生×中華後宮ラブコメ爆誕!!
SNS炎上、不倫スキャンダル、借金まみれ。人生崖っぷちの人々を攫って匿って問題解決!それが、誘拐屋。腕利きの誘拐屋・田村健一は、ある日、新人誘拐屋の根本翼とコンビを組むことになる。あまりにもお節介な翼は、自らが誘拐した人物の人生相談に乗ってしまう。淡々と仕事を全うしたい田村の抵抗もむなしく、いつの間にか2人は関係のないトラブルに巻き込まれていく。だがすべての出来事は、実は田村の秘めた過去につながっており…。
海の底で、シージャック犯とたった二人きり。 女性潜航士に課せられた、絶体絶命、超高難度ミッション! 2020年、震撼の大本命エンタテインメント! 海洋調査を専門とする日本海洋科学機関ーー通称JAOTEC(ジャオテック)のパイロット・夏海ら潜航チームは、天才科学者・奈良橋教授の開発チームとともに、潜水調査船「りゅうじん6500」に搭載された新型マニピュレーターの検証実験のため、フィリピン沖に向かう。だが、突如武装集団の襲撃に遭い、母船が占拠、船員を人質にとられてしまう! 彼らの目的は、深海の沈没船に隠された、世界を変えうる力を持つ「宝」のサルベージだった。仲間の命を救うため、夏海は調査船に乗り込み、銃を突きつけるシージャック犯とともに、暗く蒼い海の底へと生死をかけたダイブに臨むーー。 緻密な取材に基づくリアリティの極致と圧倒的スケールで迫る、深海エンタメ超大作!
食材偽装の告発にからみ、子会社へ左遷された50歳のサラリーマン、入矢悟。過酷な業務に耐えかねて本社への復帰を図ったが、冤罪での逮捕をきっかけに家庭は崩壊する。すべてを失った入矢は娘に助けを求められ、裏社会へ足を踏み入れる。現代社会の闇を疾駆するノンストップ・ノワール!
突然、失踪した弟。あいつの真実の姿に、僕は辿り着くことができるのだろうか……。弟が放火犯の疑いがある女と姿を消したらしいと、母から連絡があった。僕は彼と交流があった人物に会いに行ったが、弟の印象はそれぞれまるで異なっていたー。弟はどういう人間だったのか。誰のために生きてきたのか。僕たちの声は、弟に届くのだろうか。人生の「希望」とは何かを問う、話題の作家が拓く新境地。
父が託した二つの遺物、それが全ての始まりだった。偽史と小説、大国・伍州で生まれ、その奇抜を極めた内容から遠古より虚構とされてきた二書には、伝説の国、壙と〓南(じなん)の王を巡る、ある“悲劇”が記されていた。数奇なる運命のもと、時代、国境を越え読み解かれていった、物語の結末とは。そして、書に導かれるかのごとく約束の地を訪れた「私」が目撃した光景とはー。二つの虚構が交わる時、世界の果てに絢爛たる真実が顕れる。5000と70年の時を繋ぐ、空前絶後のボーイ・ミーツ・ガール。「日本ファンタジーノベル大賞2019」受賞者による破格のデビュー作。
分断が進む世界で小説に何ができるのか。新時代の希望を描く「EU離脱後」小説。EU離脱に揺れるイギリスのとある施設で眠る謎の老人と、彼を見舞う若い美術史家の女。かつて隣人同士だった二人の人生は、六〇年代に早世した女性アーティストを介して再び交錯しーー不協和音が響く現代に、生きることの意味を改めて問いかける。『両方になる』で読者を驚かせた著者による、奇想とユーモアに満ちた話題作。
すべてを数学に置き換えるインテリ親分とその任侠(「理系ヤクザ」)、突然「ピアノを始める!」と言い出した親分を巡り繰り広げられる大騒動(「ヤクザのピアニスト」)、集まればグチとゴシップ三昧、どうしょうもないオヤジのある一夜(「粗忽飲み屋」)、さらに浅草時代に「俺」が体験した「面白くて怖い人」達との零れ噺(「愉快な人達」)まで、時事ネタ満載!文豪・北野が「組織」に悩む人に贈る、最新小説!
生誕百年前のジョン・レノンに出会ったその同じ冬、隼は旅重なる亡命者スピノザの帰還に立会った…ユウラシアの霧に視界を阻まれ…正夢という名の悪夢、孤高のドゥルージアンによる魔術的時空を舞台とする脱領域的物語。第二長篇『ユウラシヤ』(全4部)の第2部。
大井の港湾倉庫で火災事故が発生。湾岸署の矢島は被害のあった冷凍倉庫で保管されていた身元不明の五体の死体を発見する。異例の事件に警視庁は捜査本部を設置。死体がどこからきて、誰の手で何のために保管されたのか。死体の中で一番最初に身元の判明したフリーライター・如月啓一の遺稿に六人の名前が遺されていたー。“『死』に直面した人間”という究極のテーマに挑戦し、胸に迫る意欲的傑作長編!
武田、今川、北条の同盟で政略結婚をさせられた、三人の姫ー黄梅院、嶺松院、早川殿。束の間の幸せは三家の対立によって崩れてしまう…。戦国の世の道理に翻弄されながらも、愛する家族のために生きる女たちの運命とは!?本願寺顕如の室・如春と亡き朝倉義景の娘や、信玄の娘・松姫の悲恋なども収録した渾身の短編集!