2020年5月13日発売
30余年前。美樹と京一はクラスの誰もが認める恋人同士だった。しかし美樹は、心療内科医として働く別の男と結婚。そして2年ほど前に自殺してしまったという。作家の“私”は、同級生の死の真相を追いかけるが…。人間の「愛」と「生」の意味に触れる文学作品。
美麗な容貌と色好みで知られる在原業平の一代記。千年前から読み継がれる歌物語の沃野に分け入り、小説に紡ぐことで、日本の美の源流が立ち現れた。これは文学史上の事件である!
アビーは有名な大富豪ジェイクの邸宅で、家政婦をしている。学歴もなんの資格もない私に、彼は仕事をくれた。雇い主がぶっきらぼうでも、アビーは熱心に働いて感謝を示した。ある日、ジェイクに一緒に外出しようと誘われてから、二人の距離はみるみる近くなり、アビーは彼に身を任せてしまう。ただし、ジェイクは「僕に恋はするな」と何度も警告した。そのたび、アビーはほろ苦い気持ちで「大丈夫」と繰り返した。だがピルをのみ忘れたと気づいたとき、彼女はパニックに陥った。彼の子供は欲しい。問題は私の体では赤ん坊が育たないこと…。
事故で記憶喪失になった親友を見舞ったリオは、親友の兄で会社社長のリュサンドロスとでくわし、動揺した。6週間前まで二人は熱いデートを重ねていた。ところが、彼に純潔を捧げようと心に決めた日、リオは不運にも暴漢に襲われてしまう。リュサンドロスに会う勇気はなく、真実も告げられぬまま、泣く泣く姿を消したのだった。うつむく彼女に、リュサンドロスは意外な言葉を投げかけた。「妹が記憶を取り戻すまで、恋人のふりを続けてくれないか」胸に広がる切ない痛みを抑えて、リオは黙ってうなずいた。
愛に恵まれず、かつて路上生活をしていたナタリーは、里親の元にいる弟を引き取るため、必死にお金を貯める日々。そんなとき、知り合ったセクシーなイタリアのIT企業社長、マッシモ・ブルネッティに彼の恋人役を演じてほしいと言われる。破格の報酬額を聞いて、承諾したナタリーは、別世界のように豪奢で美しいコモ湖畔のマッシモの邸宅へいざなわれた。パーティ会場に集う人々の注目のなか、婚約者と紹介され、マッシモに熱く唇を奪われてしまうー彼にとっては遊びのキス。でもナタリーにとって、それは初めてのキスで…。
ジャスミンは1歳の息子を連れ、実家近くの海辺の町へ引っ越してきた。病院の救命救急科に看護師として採用されたものの、出産以来離れていた仕事の勘はすぐには取り戻せず、戸惑う日々。そんななか、端整な容姿の敏腕医師ジェドに淡い恋心を抱くようになる。ただ気がかりなのは、海辺を散歩中に会ったときは気さくで魅力的なのに、職場ではひたすら仕事に集中し、冷徹なまでに人を寄せつけないことだ。だがある日、生後まもない患者の命が失われて動揺したジャスミンは、ジェドに慰められるうち、いつしか彼と心を開き合って唇を重ねていた。しかし、同じ職場で働く彼女の姉がジェドと浅からぬ仲だと漏れ聞き、思わず問いただしたジャスミンに、彼は否定しつつも再び背を向けて…。
小児病棟でボランティアとして働くファウスタは、病院の食堂で見かけた美しい医師ニコに胸をときめかせた。やがて、言葉を交わすうち、彼も憎からず思ってくれていることを知る。実はファウスタは王家に生まれたが、密かに一般人との結婚を夢見ていた。ニコは人柄もすてき。知れば知るほど、彼を好きになっていく…。孤児として育ったニコは、ずっと実の親を捜しつづけていた。出自もわからずに、王女であるファウスタと結婚など考えられなかった。だがある日、ニコのとんでもない出生の秘密が明らかになるーなんと彼は、最近亡くなったさる国の王の、落とし胤だった!
2年前の夜、婚約者に手酷く裏切られて以来、恋に臆病なジョージア。そんな彼女にとって、父の右腕を務めるジェイ・ブラックは、気の置けない仲であり、大切な存在だった。けれども彼女は、ジェイが抱えている秘密をまだ知らない。じつは、彼はさる大企業を継ぐべき立場の御曹司であること。そして2年前のあの日、失意の彼女を抱いて慰め、一夜を過ごしたこと。彼女はその直後、事故で前後の記憶を失ってしまっていた。あるとき、暴君で知られる父の命に、ジョージアの心は千々に乱れる。父は告げたージョージアは父が選んだ冷血な実業家と、彼女の妹は…ジェイ・ブラックと結婚するように、と。
ありえない。妹の婚約者の義兄がサクソンだなんて!マギーは相手方の富豪一族と顔合わせする妹につき添い、事故で失明した“ホーク”という気難しい義兄を和ませる役回りだった。狙った獲物は逃さない鷹ーホークと彼が呼ばれるのも不思議ではない。サクソンは目的のためなら手段を選ばない冷徹な実業家だ。かつてマギーは仕事で出会ったハンサムなサクソンに惹かれたが、誤解がもとで彼から猛烈な怒りを買ってしまった。逃げるように田舎に引っ込み、ひっそりと彼を想いつづけてきたのだ。だが、そんな彼女に、サクソンは有無を言わせぬ鋭い調子で命じた。「心から反省しているとわかるまで、私の目になってもらう」
アニーはかつてのボスであるブラントに連れられ、彼の屋敷を訪ねた。女手ひとつで育ててきた2歳になる愛息のショーンが、実の子ではないと告げられたのは、つい先日のこと。アニーが出産した日、病院の手違いで赤ん坊が入れ替わったのだという。一人はアニーが、もう一人はブラントの亡き妻が産んだ子供…。ブラントはアニーにとって、手の届かない遠い世界の大富豪だった。その彼とこんな形で再会するなんて、なんという皮肉なの?育児室に通され、そこにいた幼子を見て、アニーは思わず抱き寄せた。間違いない、この子は私が産んだ子ーブラントはまだ知らないけれど、結婚前の彼とたった一度だけ過ごした、あの夜に授かった子だわ。
病院のベッドで目覚めたとき、わたしは記憶を失っていた。傍らの男性ラウールは、わたしが彼の妻シェリーで、二児の母だと言うが、何も思い出せない。どうやらわたしは自動車事故で九死に一生を得たらしい。退院後、夫とともにパリ郊外の自宅で暮らし始めた。日ごと深まっていく夫への愛情。けれど、いまだ戻らぬ記憶の片隅に奇妙な確信が芽生えたのだー“わたしはシェリーではない”と。(『わたしの中の他人』)。恋人が企む悪事の計画をもれ聞いたホリーは、逃げだしたところを捕まり、無理やり飛行機に乗せられてしまった!ああ、もうおしまいだわ…。死を覚悟したが、運よくパラシュートで脱出に成功した。地上に降り、やっとのことで一軒のキャビンに辿り着くと、そこにはセクシーな男性の姿が。銃口を向けられて名を名乗れと命令され、息をのんだ。何も思い出せないーいったい、私は誰?(『炎のメモリー』)
友人の牧場からの帰宅途中、猛烈な嵐に遭ったブリジットは、偶然通りかかった男性と一緒に小屋に避難した。九死に一生を得た二人は互いの体を温め合い、愛し合った。だが翌日救助されると、彼はあっさりと別れを告げた。3週間後、ブリジットはあの夜の男性、アダムを新聞で見つける。なんと彼は名家の御曹司で、とてつもなく裕福な企業家だった。私とは身分が違いすぎるから、素性も明かさず去ったのね。時を同じくして、ブリジットは身ごもっていることに気づいた。アダムの情熱的な愛の営みと冷たい別れを思い出して胸が疼くが、彼に拒まれることを思うと、妊娠を告げるのは怖くて…。
ジェイムは二十歳そこそこでブレークと結婚した。年上で裕福、しかもセクシーで優しい夫は、彼女のすべてだった。だがまだ年若く世慣れていないジェイムに結婚は早すぎたのか、忙しい夫は不在が多く、ちらつく女性の影にも不安をあおられ、愛されている自信がなくなった彼女は、ついに家を飛び出してしまう。ほどなくして妊娠がわかり、ジェイムは夫に手紙で知らせた。きっと彼は私とこの子を迎えに来てくれるーそう期待したが、なんと夫からの返事はなく、ジェイムは絶望した。3年後。ジェイムの近隣の屋敷に、ふらりと夫が移り住んできた。いったい何が目的なの?娘を見たら、彼はなんて言うだろう…。
せっかくのパーティなのに、エドニーは少しも楽しめなかった。エスコート役を頼んだ知人にしつこく言い寄られ、あまり事を荒立てないよう拒絶するのに四苦八苦していた。とうとう強引にキスされそうになったとき、どこからともなく現れた男性がエドニーを救い出してくれた。長身で黒い髪、黒い目、洗練された雰囲気ー彼はエドニーを家へ送り届けると、慰めるような優しいキスをした。なんだか夢みたいだったわ…。翌週、転職先のオフィスで、エドニーは思いがけずあの男性の名前を知った。サヴィル・クレイソーンー彼こそ、エドニーの新しいボスだった。