2020年8月26日発売
2020+年、オリンピック後の東京に新設された、対自然災害の実験都市・SC特別区。そこは未来の理想都市として、AIで完璧に管理されていたはずだった。そのオープン初日、安全管理センターの所長・神代は、街に仕掛けられた罠に気づく。街のセキュリティ突破には、ダークWEB上で巨額の懸賞金がかけられていたのだ。神代は、副所長の鷹宮やオペレーターたちと、カジノやITサミットを狙ったテロに対処していく。だが、その裏では不可解な死がエリア内で多発していて…
サブロウは森に囲まれた老人ホームらしき施設で、平穏な日々を送っていた。だが自分は何者でいつ入所したのか、そもそもこの施設は何なのか、全く記憶がないことに気付く。不審に思っていると、謎の「協力者」からのメッセージが見付かった。「ここは監獄だ。逃げるためのヒントはあちこちにある。ピースを集めよ」サブロウは情報収集担当のエリザ、戦略策定担当のドック、技術・メカ担当のミッチという仲間を集め、施設脱出計画を立ち上げるが…!?『アリス殺し』の鬼才が仕掛ける予測不能の脱獄SFミステリ。
担任に駆り出され、隣接する特別支援学校の手伝いをすることになった女子高生のヨーコ。そこで出会ったのは難聴を抱える男子高生・ミズキだった。人と真っすぐに向き合おうとするミズキの姿に、どこか人と距離を置きがちだったヨーコも少しずつ変わりはじめる。次第にミズキへ心惹かれていくヨーコだが、誰にも言っていない“ある事情”のせいで、あと一歩が踏み出せなくて…。珠玉のヒューマンラブストーリー!
些細なきっかけで、仲の良かったグループからいじめの対象になってしまった高校二年生の祥子。 学校にも家にも居場所がない祥子にとっての毎日は、まるで溺れているようで、息苦しい。 そんな祥子は、ある日「名前のない」喫茶店を見つける。 中に入ってみるとそこには、あたたかな珈琲を淹れてくれるマスターと、個性的な常連客、そして祥子と同じくらいの男子高校生、皐月がいた。 誰にも思いを言い出せず、息が詰まりそうだった祥子は、いつしか彼らに自分の犯したある「過ち」を告白。優しく迎えてくれたその喫茶店で、祥子はようやく苦しかった気持ちがほどけていくのを感じ……!?
月5万で生活する天涯孤独の極貧令嬢・麗子。国内屈指のセレブ校に入学したが同級生に悪役令嬢へと仕立て上げられてしまう。自らの居場所に悩み、学園を去ることを考えはじめる麗子。そんな麗子に追い打ちをかけるかのごとく突如現れたのは全ての元凶である行方不明の父親だった!
派遣社員の紗央、アルバイトを掛け持ちする良子、ベトナム人留学生のリエン。彼女たちは皆、“人と違う自分”を出せずに居心地の悪さを抱えていた。そんな折、地球外生命体の労働力を期待して、惑星難民を受け入れる法案が可決。奇妙な糸で結ばれた三人が、それぞれ選んだ道とはー。第14回小説現代長編新人賞受賞作!
企業のトラブル請負という仕事をめぐって最愛の恋人・雪江と師を続けて亡くした西澤奈美は心の整理がつがす空虚な日々を送っていた。そんな彼女が親しみを寄せるタバコ屋の上井久子がオレオレ詐欺に遭う。久子を慰める術を持たない奈美だったが、自分が入居する雑居ビルのオーナーから隣のビルに入った怪しげな会社が詐欺集団ではないかという見立てを聞き、密かに証拠をつかみ匿名で警察に通報する。しかしその後、逮捕を逃れた残党の影がちらつき、たびたび襲撃を受けるように。奈美は、彼女が育った児童養護施設の後輩で雪江を慕っていたという松井の協力を得て久子を騙した犯人を突き止め、ついには自ら拉致されて敵地に辿り着くという無謀な賭けに出る…。
第42回吉川英治文学新人賞受賞作!! 時間も金も、家族も友人も贅沢品だ。 共感度120%で大反響、続々重版! 「響け! ユーフォニアム」シリーズ著者が、息詰まる「現代」に風穴を開ける会心作! 遊ぶ時間? そんなのない。遊ぶ金? そんなの、もっとない。学費のため、家に月8万を入れるため、日夜バイトに明け暮れる大学生・宮田陽彩。浪費家の母を抱え、友達もおらず、ただひたすら精神をすり減らすーーそんな宮田の日常は、傍若無人な同級生・江永雅と出会ったことで一変する! 愛情は、すべてを帳消しにできる魔法なんかじゃないーー。 息詰まる「現代」に風穴を開ける、「響け! ユーフォニアム」シリーズ著者の会心作!
明治44年、文豪・森鴎外の末子として誕生した類。優しい父と美しい母志げ、姉の茉莉、杏奴と千駄木の大きな屋敷で何不自由なく暮らしていた。大正11年に父が亡くなり、生活は一変。大きな喪失を抱えながら、自らの道を模索する類は、杏奴とともに画業を志しパリへ遊学。帰国後に母を看取り、やがて、画家・安宅安五郎の娘と結婚。明るい未来が開けるはずが、戦争によって財産が失われ困窮していくーー。 昭和26年、心機一転を図り東京・千駄木で書店を開業。忙しない日々のなか、身を削り挑んだ文筆の道で才能を認められていくが……。 明治、大正、昭和、平成。時代の荒波に大きく揺さぶられながら、自らの生と格闘し続けた生涯が鮮やかによみがえる圧巻の長編小説。 【著者略歴】 朝井まかて 1959年大阪府生まれ。2008年小説現代長編新人賞奨励賞を受賞して作家デビュー。2013年に発表した『恋歌』で本屋が選ぶ時代小説大賞を、2014年に直木賞を受賞。ほか、同年『阿蘭陀西鶴』で織田作之助賞、2015年『すかたん』で大阪ほんま本大賞、2016年『眩』で中山義秀文学賞、2017年『福袋』で舟橋聖一文学賞、2018年『雲上雲下』で中央公論文芸賞、『悪玉伝』で司馬遼太郎賞、2019年に大阪文化賞を受賞。近著に『落花狼藉』『グッドバイ』『輪舞曲』などがある。
小泉今日子さん推薦!心温まる家族の物語 人生の旅を豊かにするのは、大切な記憶。 人生の旅を愉快にするのは、大切な仲間。 旅はいつか終わっても仲間が記憶を繋いでくれる。 心が温かくなる一冊です。 ー小泉今日子 10歳の「僕」の親友は、元ボクサーで85歳の祖父、ナポレオン。ふたりは「皇帝」と「副官」としていつも行動を共にする。スーパー高齢者の祖父はボウリングでストライクを連発し、失礼なチンピラを殴り倒し、エスペラント語で会話し、ディスコミュージックに合わせノリノリで踊る。だがこの頃様子がおかしい。長年連れ添った妻ジョゼフィーヌとの離婚を一方的に決めたり、ボクサー時代のライバルのことで隠し事もあるようだ。もともと折り合いの悪い息子(「僕」の父親)への態度も、どんどん悪くなっている。やがて、そんなナポレオンに「最後の戦い」の時がやってくる……。 破天荒な最強祖父と家族の秘密、老いを、相棒である10歳の孫目線で綴る、笑って泣けるフランス発家族小説。
昭和29年、大阪城付近で政治家秘書が頭を麻袋で覆われた刺殺体となって見つかる。大阪市警視庁が騒然とするなか、若手の新城は初めての殺人事件捜査に意気込むが、上層部の思惑により国警から派遣された警察官僚の守屋と組みはめに。帝大卒のエリートなのに聞き込みもできない守屋に、中卒叩き上げの新城は厄介者を押し付けられたと苛立ちを募らせるがー。はぐれ者バディVS猟奇殺人犯、戦後大阪の「闇」を圧倒的リアリティで描き切る傑作長篇。
バブル景気末期の1989年、S県。飯野電気喜里工場は、日本の代表的自動車会社アスカの最新フラッグシップモデルの照明部品の製造を受注する。品質管理課の塚田は連日、深夜残業と休日出勤を繰り返し身も心も疲弊していた。が、塚田だけではない、社員897名全員が厳しい納期と品質管理に汲々としていた。そんな中、突如1人の社員による工場内での暴行事件が発生。彼は犯行後、失踪し行方不明に。同じ頃、聞こえ始めた奇妙な音。機械の轟音あるいは耳鳴り、それとも得体の知れない動物の鳴き声か。その後さらに社内で連鎖する製造事故、暴行事件、自殺、突然死そして殺人。多くの社員が工場内で何かの姿を見る。あれは何だ?しかし取引先の製造ラインを止めないため最優先される納期。みな無言で続ける勤務。すべてがおかしい、狂っている。ある日、気が付けば工場内外、至るところ隈笹が繁茂していた…。
繊細な鉛筆画と、美しい水彩画ミドルアースの決定的なイメージ!スケッチと初期のコンセプト画が満載。アイディアの段階から完成にいたるまでの過程が手にとるように分かる。本書のために新たに描かれた多数のフルカラーの絵やスケッチもふくめ、200以上の豊富な図版が掲載された決定版!
殻、空、虚、骸…あれは都市の、この世の、崩壊の音。富士が裂けた。電線のカラスが道にボトボト落下した。雨みたいにばらばらと人の死が降った。生き残った者は、ツルツルの肌を持つあのひとたちに奉仕した。パンデミック後の光景、時の層を描く小説7篇。
その目はあまりにも死んだ兄の目に似ていた。あの時、逆賊のテントで、みずからの手で殺したあの兄の目に…… 絶対平和主義を貫き、正しい生き方を求め、 最後には自死を選んだ伝記作家の名手ツヴァイクーー 聖書、聖典を材に、時代の「証人」として 第一次大戦中から亡命時代に至る激動の時代に書き残した、 人類永遠の主題「戦争と平和」をめぐる四つの物語。 本邦初訳を含む新編新訳。 シュテファン・ツヴァイクは、自死する前に、世界が彼に何をあたえ、そして奪ったかを書きとめた。その記述は、まぎれもない絶望の冷徹さからくる容赦のない正確さをもってなされた。彼は名声の喜びと屈辱の災禍を記録する。彼は、自分がそこから追放された楽園について語る。 ーハンナ・アーレント あなたこそは本当にわれわれの時代が必要としている、高潔なヨーロッパ精神の体現者です。このような人が現れるのをわたしは二十年来待ちわびていました。われわれロマンス語圏の国には、どうしてあなたほどのスケールの批評家がいないのでしょう! ーロマン・ロラン ツヴァイクの作品の多くは、無垢でありながら闇の領域に足を踏み入れてしまう人物の視点から語られている。わたしは常々、ツヴァイク自身は冒険をしないタイプの人、つまり彼が作品のなかで掘り下げて書いているのはあくまでも自分が興味をもった出来事で、彼自身の体験ではないのだと思っていた。だが事実はまったく逆のようだ。 ーウェス・アンダーソン