2021年10月27日発売
日本と世界の狭間で生まれた中篇二作。外国から京都に来た青年の日常や、周囲の扱い方に対する違和感、その中で生きる不安や葛藤等を、「きみ」という二人称を用いた独特の文章で内省的に描く。京都文学賞受賞作(「鴨川ランナー」)。福井の英会話教室を突如やめる羽目になった主人公は、ある日同僚の紹介で結婚式の牧師役のバイトを紹介されるが…(「異言」)。第二回京都文学賞満票で受賞。日本語を母語としない著者が紡ぐ、新しい感性による越境文学。
「BUTTER」著者渾身の女子大河小説 大正最後の年。かの天璋院篤姫が名付け親だという一色乕児は、渡辺ゆりにプロポーズした。 彼女からの受諾の条件は、シスターフッドの契りを結ぶ河井道と3人で暮らす、という前代未聞のものだったーー。
小さい頃から、殴って、殴られるのが普通だった。誰も本当のことを教えてくれなかった。なぜ自分だけが、こんな目にあうんだろうー上京して芸人となった石山の前に現れる、過去の全て。ここにいるのは、出会いと決断があったから。著者渾身の初小説。
3.11直前に教え子をいじめ自殺に追いやってしまったかもしれない元教師の妙と、沖縄新基地建設反対デモの警備中にデモ参加者を不慮の事故で死なせてしまったかもしれない便利屋の忍。過去の出来事に苛まれるふたりは、「感染者第一号」を誰もが恐れる地で出会った。人が人を傷つけ、傷つけられる世界で、「東京からの移住者」が遂げた謎の死をめぐり、ふたりの運命は動き出すー。哀しみと、苛烈な祈りの物語。
英雄ガガーリンの母が“地球の心臓部”に突き進む「空のかなたの坊や」、厳格な校長だった母の思い出を抒情豊かに綴る「バックベルトの付いたコート」、ロシアの大都市を麻痺させたコンピュータ・ウィルスをめぐる数奇な物語「聖夜のサイバーパンク、あるいは『クリスマスの夜ー117.DIR』」、“ロシア文学史上もっとも汚い言葉で書かれた小説”と称される型破りな「ロザンナ」、孤独な女教師の追憶を流れるような文体で活写する「霧の中から月が出た」、ある知識人が罰として引き取ることになった“レーニン”が大暴れする「馬鹿と暮らして」、モスクワのバラックを舞台に悪臭と官能が入り混じる「赤いキャビアのサンドイッチ」、謎の作家が体験する鏡の中の世界を描く「トロヤの空の眺め」など、すべてがユニークかつオリジナルな12の物語。現代ロシアの多様な魅力を映しだすいまだかつてない「沼」アンソロジー。
俺たちは大事な約束を忘れていたよな。刑罰では拭いきれない加害者への憎しみ。二人きりの兄弟が選んだのは“仇討ち”だったー。鮮烈、圧巻、陶酔のハードボイルド。円熟の筆致で描き出す「男の美学」。表題作含む二編収録!!
「法律を知らないと不幸になる」と医師の側に立ち、法律問題や医療過誤訴訟を闘っている異能の弁護士・雨守誠に、ある日総合病院から依頼が入った。急死した2歳児の両親に医療過誤で訴えられそうで、病院と医師を弁護してほしいというのだ。救えなかったら医師が悪いのか?-自身の信念に基づき、雨守は医療現場の矛盾や不条理に斬り込んでいく。弁護士の執念を描き切る法廷サスペンス。
優しい家族や人外に囲まれて、嬉し恥ずかしの甘々新婚生活を送る軍司令官シャルロと新妻パティ。ある日パティの姉の出産祝いに出かけた折、ついでに昔先祖の竜が住んでいたという領地へ向かうことに。なんとそこには今も竜がーそれもパティとそっくりな、ちんちくりんの白い子竜がいて!?『はじめまして!ぼくの可愛い子孫ちゃん!』そう言ってやたら愛でてくるご先祖様。その最中、シャルロが女領主に幽閉されたとの知らせが飛び込んできてー