2021年11月22日発売
「こうなったら、まあさんのお相手をすぐに決めなくてはなりませんね」方子は十四歳になるが、婚約するのに決して早過ぎることはない。皇族の娘は生まれ落ちた時から、配偶者を探し始めるのが常である。しかしもしかしたら皇太子妃にという輝やかしい枷が、梨本宮家の動きを鈍くしていたのである。伊都子は再び頭を働かす。あの宮家、あの侯爵と親の顔と息子たちの年齢を思い浮かべる。宮家の妃が娘のために奔走した縁談の内幕とは?
子どもたちだけは生き延びさせねば。昭和20年終戦前後、日本が最も悲惨な時代を生きた母と子たち。その絆や愛とたくましさが、戦前世相歌とともに蘇るー。非常時の母と子を疎開生活を通して描く戦災・終戦ドラマ。
ある雪の降る日、みちるは、偶然マリアに出会った。切れ長の茶色の瞳、筋の通った鼻、口角の上がった唇、ストレートの黒髪。マリアに亡くなった母の面影を見たみちるの目から涙があふれると、マリアは不思議そうにしながら、ハンカチを渡してくれたー。孤高のギタリスト、両親を知らず施設で育ったマリア。知れば、知るほどに惹かれていくみちるだが、手を伸ばせばいつでも触れられるほど近づいても、決して愛は手に入らない。傷を抱え、それでも潔く生きる大人達に背中を押され、この愛を貫くために、みちるは人生をかけた大きな決断をする。ジェンダーと女性の生き方の多様性を問う問題作。新人作家衝撃のデビュー。
昭和31年生まれ、大阪で苦労して育った正行は、就職後、東京に出て羽振り良く暮らしていたものの、事業に失敗し、中学生の長男の面倒をみながら主夫としてヒモのような生活を送っていた。偶然再会した古い仲間との邂逅が、過去の自分の人生と向き合い、自分を変えて生き直すきっかけをくれる。読み終わった後、多くの気づきと清々しさをくれる感動作。
本土よりはるか南方の“東硫黄島”。この小さな無人島は四方を海に囲まれ独自の生態系を形づくっていた。学芸員の蜂須賀をはじめとする調査団が組織され、島の生菜系と生き物たちを調査することになった。外来生物の持ち込みを防ぐために厳重な準備と防護のもと、島に上陸を果たす。しかし、到着後まもなく調査団のひとりが殺されてしまう。口の中に外来植物の種子を詰め込まれたおぞましい遺体に、疑心暗鬼になっていく調査団メンバー。調査船とも連絡が取れなくなり、ボートも使用不能に。島から脱出できない中、第二の殺人が起こってしまうー楽園の島に閉じこめられた調査団を襲う惨劇。
スカーレット・マッケインは、荒れ果てたイングランドをわたり歩く無法者の少女。今日も銀行から札束を盗むと、無人地帯の森に逃げこんだ。そこで見つけたのが、横転したバス。中にいたのは、野獣の餌食になるのを免れただひとり生き残った男の子、アルバート・ブラウンだった。スカーレットは仕方なく、この頼りなさそうな少年を次の町まで連れていくことにした。しつこい追跡者から逃走しながら…。
父と子、交錯する運命ー後鳥羽と土御門、北条泰時と時氏、そして貴種の落し胤玄洲。動乱の時代に生きるそれぞれの葛藤を描き出す。