2021年2月26日発売
自分が犯した「あの罪」が、無差別大量殺人事件を引き起こしたのだろうか。銀行員の安達は、世間を震撼させた事件の犯人が同級生だったことに気づいて絶句する。小学生の頃、小さな見栄から彼がいじめに遭うきっかけを作ってしまった。その後、普通の人生から道を踏み外した彼は、大量殺人犯となり、自らに火を点け、動機不明のまま死んでいった。罪悪感に苛まれる安達は、犯人の悪の芽がどこで生じたのかを調べ始めー。絶望の果てに、人間は何を見るのか。魂の叫びと祈りが胸に刺さる、長編ミステリの傑作!
小網町の白扇屋・吉野屋へ婿入りした岡三郎は、一緒になったばかりの妻に惚れ込んでいたが、どうやらまだ夫婦の契りがないらしい。それを聞いた老舗眼鏡屋・村田屋のあるじの長兵衛は、吉野屋の一番弟子が問題の鍵を握ると言い出して…(「蒼い月代」)。飛鳥山にて湯治中の長兵衛のもとを自身番が訪ねてきた。村田屋の手代頭を名乗る男が、村田屋の天眼鏡を江戸で評判の料理屋の板長へ貢げばそこへの仕入れがかなうと、王子村の豆腐屋から大金を騙し盗ったらしく…(「湯どうふ牡丹雪」)。創業百二十年を迎える老舗眼鏡屋のあるじは、知恵と人情で問題に挑むお江戸の“名探偵”。時代小説の名手による、心に沁みる極上の六篇。
父を殺め、国に背いた王女・ローズは、母・レイナ王妃を守るため、ドエム公爵の軍門に下った。戦争の気配が濃厚に漂う芸術の都『オリアナ王国』では、ローズとドエムの結婚が噂されている。結婚なんて絶対にさせない。たとえ親が許しても、僕が許さない。なぜなら…ローズが『覇王』になれば僕の『陰の実力者』プレイが捗るのだから!!!!!!!!
ミュージシャンへの夢を捨てきれないまま、怠惰な日々を送っていた宮路。ある日、演奏に訪れた老人ホームで、神がかったサックスの音を耳にする。吹いていたのは、ホームの介護士・渡部だった。「神様」に出会った興奮に突き動かされた宮路はホームに通い始め、やがて入居者とも親しくなっていく…。人生の行き止まりで立ちすくんでいる青年と、人生の最終コーナーに差し掛かった大人たちが奏でる感動長編。二〇一九年本屋大賞受賞作家が贈る、たしかな希望の物語。
高校を中退し、相撲ファンの叔父の勧めで弱小相撲部屋に呼出見習いとして入門した十七歳の篤。実家を出たいがため、志もないままこの道を選んだ。しかし、力士たちと生活を共にし、彼らの挑戦や葛藤に立ち会うのち、「呼出」という仕事の喜びに目覚めていく。表舞台には立たないけれど頑張る人全員にエールを送る物語。第33回小説すばる新人賞受賞作。
長年の夢だった弁護士事務所にかかってきた一本の不審な電話。丹前は、相手が奈良地検時代に起訴した殺人犯だと気づくも、彼は山中で恋人とともに遺体となって見つかった。他殺を疑い捜査に協力する丹前だが、調べが進むにつれ過去の事件の思わぬ真相が暴かれていきー。『真相ーヤメ検が暴く』ほか、『詐病ーさかな』『十指紋』『うそ発見器』の短編3作を収録。
東京下町にひっそりとある、居酒屋「ぼったくり」。名に似合わずお得なその店には、旨い酒と美味しい料理、そして今時珍しい義理人情があるー旨いものと人々のふれあいを描いた短編連作小説の番外編第二弾!!両親による「ぼったくり」開店秘話収録!全国の銘酒情報、簡単なつまみの作り方も満載!
元最上位の遊女・お染。寄る年波には勝てず、馴染みの客たちも離れてしまい、いまや衣を新調するための金にも困るようなありさま。元来の勝ち気な性格もあって、ひと思いに死んでしまおうかと思うが、金に困ってひとり死んだと言われることはあまりにも悔しく、ならば、心中をしようと考える。独り身で大食らい、ぬけている金蔵を相手に選び、手練手管で、ついに心中の約束を取りつけるのだがー
近代教育及び植民地経験を経た韓国・朝鮮民間説話の近代的変容を捉える。日本人研究者の植民地主義・朝鮮人研究者の抵抗民族主義という二分法的な図式が散見される朝鮮民俗学史。しかし、そこには日本人研究者の果たした役割とその影響がきわめて大きく、朝鮮民間説話学は近代日本の学知の影響を受けながら形成されたものであった。未公開資料・新出資料を含めた膨大な近代資料を収集・整理・分析し、説話のモティーフや構造的形式の影響関係に注目。説話の歪曲という観点を乗り越え、近現代の韓国・朝鮮民間説話学の形成過程を総合的に分析し、個別説話の伝承とその変容を複合的に捉えなおし、その意味を考察する。東アジア比較民間説話学を新たに再構築する基盤を提供する一冊。
クリスティアーノー16歳から想い続けてきた私の大切な人。その夜、ジュリエンヌは憧れのイタリア人富豪に純潔を捧げた。クリスティアーノは生きるために身を売ろうとした私を救い、住まいと教育を与え、彼の会社で働くチャンスまでくれた。だから一夜の思い出以上は望まず、夜明けとともに姿を消した。ところが数カ月後、ジュリエンヌは妊娠していることに気づく。再会したクリスティアーノの反応は衝撃的だった。“自分の子を望んではいなかったが、こうなってはしかたない”そして愛する男性は憎しみをこめ、彼女に結婚を申しこんだ…。
ある日裁判所から届いた召喚状を読み、貧しいマヤは驚愕した。借金をすぐに清算しなければ、家が没収されるという。両親の代理で出向いたマヤに、債権者の富豪ラッファエーレは、彫刻のように美しい顔で驚くべき解決策を持ちかける。「ぼくと結婚して後継ぎをもうければ、借金は棒引きにする」見知らぬ人と愛のない結婚をして子供を産むなんて、無理よ!でも断れば、障害のある弟をはじめ、一家は路頭に迷う…。悩んだ末、両親に高給の仕事が見つかったと嘘をつき、マヤは偽りの花嫁になるために、イタリアへと旅立った。大スター作家リン・グレアムが描く、胸に響く珠玉のシンデレラロマンス。一見、傲慢で冷酷に見えたヒーローの隠された優しさに気づき、しだいに心惹かれていくヒロイン。待望の妊娠がわかったとき、喜びと同時に悲しみも湧きあがり…。
横暴な父親と兄に虐げられてきたシーアは、23歳になり、牢獄のような生家から解放されたが自由になれたわけではなく、強いられた結婚という、新たな鳥籠へ移された。夫は、ギリシアの若き海運王、クリスト・カラス。ハンサムで恐ろしく頭の切れる彼は妻の自由への渇望を見抜き、結婚で得られる相続が完了すれば、離婚に応じると言った。シーアはそのときを夢見てクリストの完璧な妻を演じたが、夜ごと夫の愛の技巧に触れ、いつしか思い知るようになる。囚われているのはもうこの身ではなく、心なのだと。結婚式を終えた直後に逃亡を図るヒロインと、美しい妻を逃しはしないと阻止するヒーロー。大型新人作家による日本デビュー作。
イマジェンの片想いは、絶望的だった。百貨店王と呼ばれる老富豪のもとで働いているが、その息子で、会社の有能なブレーンでもあるアレックスは、イマジェンのことを、父親の財産目当てと決めつけている。彼にすでに婚約者がいるというだけでもつらいのに…。何も知らない老富豪は、息子の婚約祝いに屋敷を購入し、あろうことか、イマジェンに下見に行くよう命じた。ここが彼の愛の巣になるのね…。ひとり涙に暮れていると、ふいにアレックスが現れ、「婚約を破棄してきた」と告げる。
やせっぽちの不器用な小娘だったころ、アンバーは王子に恋をした。王子は小娘には目もくれず、持参金目当てで婚約証書に署名した。深く傷ついた彼女は姿を消し、密かに独力で暮らし始めた…。8年後。まさか、信じられない。あの王子様がートリスが微笑んでいる。友人の結婚式から連れ出され、アンバーは彼とめくるめく一夜を過ごした。積年の想いに身をまかせ、最後まで正体を明かせないまま。後日、自分が消息を絶っているせいで婚約が無効にできず、長年トリスを束縛してしまっていたことを知ったアンバーは、正式に婚約を破棄するために彼と面会する勇気をかき集める。きっと隠し通すことはできないけれどー彼の子を宿していることは。
婚約者の裏切りを知って傷つき、鬱々としていたある夜、サスキアは富豪のマラカイと出逢って強く惹かれ、ベッドを共にした。その後、彼の運営する慈善施設を訪ねたけれど、いつも不在だった。私は避けられているの?赤ちゃんを身ごもったと伝えたいのに。だが、慈善パーティで彼に再会したとき、サスキアは衝撃を受けた。「きみのお腹の子がぼくの子なら、結婚しなくてはならない」ああ、マラカイは知っていた…。そして義務感に駆られたの?何より哀しいのは、少女の頃からの夢が打ち砕かれたことだった。運命的に結ばれた両親のように、愛に満ちた結婚をするという夢が!サスキアはきっぱり言った。「いいえ、この子は一人で育てます」
子爵のドミニクは亡き父が作った借金を清算するため、裕福な商人の娘レイチェルを、ほぼ面識のないまま花嫁に迎えた。結婚後は、不器量で幼い妻を田舎に置いて、彼は上京したが、妻はそのあいだに忽然と姿を消してしまった。6年たった今も、レイチェルの消息はいっこうにわからないが、跡継ぎが欲しいドミニクは、妻の生死を確認し、夫婦のよりを戻すなり、別の女性と結婚するなりしたいと思っていた。そんな折、ドミニクは叔母の紹介で謎めいたレディと知り合い、見目麗しく、知的な会話のできる彼女の魅力にとらわれていく。まさか夢にも思わなかったーそのレディこそが、失踪中の妻だとは!リージェンシーの旗手の珠玉作をリバイバル!行方知れずの妻の件に決着をつけるまでは、再婚することもできないドミニク。けれども、魅惑のレディに恋してしまった彼は、たまらず彼女に求愛するが、けんもほろろに拒絶されて…。
伯父の死後、天涯孤独となったブルックは、由緒ある屋敷と土地を手放さざるを得なくなった。屋敷を買った大手建設会社のパーティに、寂しさをこらえ出席すると、アランという黒髪の尊大な男に言い寄られる。女は金で買えるとでも思っているようなアランの発言を聞いて、彼の鼻をへし折りたくなり、誘惑にのるふりをしたブルック。だが彼女がバージンと気づくや、アランは突然立ち去った。後日、ブルックの勤め先の会社が買収され、新しい会長秘書となった彼女は、その人物を見て言葉を失うーアラン?このあいだの傲慢な人が会長だというの?大人気のボス&秘書もの。部下であるヒロインをからかうような言動をとるヒーローが、なぜか気になってしかたがないヒロイン。ある日、ボスとの出張先のロンドンで倒れてしまい…。
交通遺児だったノリーンは従姉一家に引き取られ、まるで使用人のようにこき使われて育った。やがて美しい従姉は、心臓外科医として名高いラモンと結婚。密かに彼を慕っていた看護師のノリーンは、祝福の陰で人知れず涙した。だがその後、不幸にも従姉が肺炎で亡くなると、ラモンの激しい怒りは、看護していたノリーンに向けられたのだった。2年後、ノリーンの体は悲鳴をあげていた。心臓に問題があり、高額の手術を受けなければ、長くは生きられないとわかったのだ。医療費を工面するため、悪化していく体調を押して働き続けた結果、彼女は倒れ、緊急手術を受けることになるーラモンのメスによって!病を抱えながらもけなげに生きるヒロインの恋物語シリーズ。大スター作家が描いた、伝説的人気を誇る名作!
8歳で父親を亡くしてから、ジェーンと母は長く貧困に苦しんだが、いまは優しい伯爵夫人のメイドとして、穏やかな日々を送っている。ある日、ケンダル氏という見目麗しい殿方が屋敷を訪れた。客人にお茶を出しながら、ジェーンはつい、彼を盗み見てしまった。いかにも裕福な身なり。深みのある声。なんて魅力的なのかしら。彼は、ヨークシャーのたいへんな資産家である大叔父から、ある女性を捜し、連れてきてほしいと依頼を受けたと言う。伯爵夫人がそれは誰かときくと、ケンダル氏は困惑ぎみにこたえた。「ご存じでしょうか…ジェーン・ベイリーという名のご婦人を」わ、私?驚きのあまり、ジェーンはお盆をひっくり返してしまいー。RITA賞受賞作家の話題作『伯爵と日陰のシンデレラ』の関連作。ジェーンはケンダル氏とともに、5日かけてヨークシャーへ向かうことに。身分違いの恋を募るせつない旅の終わりに、大叔父が明かした意外な秘密とは…?