2021年5月14日発売
世阿弥を師と仰ぐ、若き金春大夫・氏信(のち金春禅竹)は能の奥義を極めんと苦悶の道を歩んでいた。そんな中、隆盛を誇る観世座一門に大きな問題が巻き起こる。跡を継ぐ者たちは何を思い、どう動くのかー。能の歴史的なターニングポイントを物語に昇華し、風姿花伝、六輪一露之記といった秘伝書誕生の裏側に迫る意欲作。
「ビアトリスは強引に俺の婚約者におさまったんだ。俺は最初から不本意だった」婚約者であるアーネスト王子がそう言っているのを知ってしまった、公爵令嬢ビアトリス。人気者の王太子殿下と嫌われ者の公爵令嬢という関係に甘んじていたビアトリスだったが、気持ちを切り替えて好きに生きることを決意する。「今までアーネストさまにかまけてばかりで、他の方々とあまり交流してこなかったわね。もったいないことをしたものだわ」けれど、美貌の辺境伯令息や気のいい友人たちと学院生活を楽しむ彼女に、それまで塩対応だったアーネストが、なぜか積極的に絡んでくるようになってー!?
病院での夜勤のあと、ピクシーは兄の話を聞いて耳を疑った。面倒を見るのがいやで、私の子を捨ててきたですって?いいえ、兄のめあては子供の父親ギリシア富豪トールのお金だ。1年半前、ピクシーはトールに純潔を捧げて身ごもったが、妊娠を告げると、“君を知らない”と彼に追い払われたのだった。急いで会いに行った彼は、今もハンサムで堂々としていて、ピクシーは安っぽい自分の格好を恥ずかしく思った。でも昔と同じ屈辱を味わってでも、トールには真実を伝えよう。どうか母親失格だといって、彼があの子を奪いませんように…。
エジンバラの高級ホテルに仕事の話で呼びだされたケイトリンは、豪華な部屋の広間にいる人物を見て愕然とした。砂漠の国の君主カディルーわたしの息子の父親がなぜここに?5年前、スコットランドで地所の購入を考えている彼と出会い、漆黒の瞳の誘惑に抗えず熱い一夜を過ごして純潔を捧げた。夜明け前に彼が忽然と姿を消すとは夢にも思わずに。やがて予想外の妊娠に気づいた彼女はカディルについて調べた末、その身分と不実を知り、子どものことは秘密にしようと決めたのだ。だが今、真相を知ったカディルの手に母子とも落ちるしかなく…。
その日、バイオレットは真昼の誘拐劇の被害者となった。モンテ・ブランコ王国の王子、ハビエル・デラクルスによって。彼の兄マテオ王にカジノで負けたバイオレットの父親が、娘を王に売ったというのだ。パパがそんなことするなんて…!抵抗むなしく、彼女は贅を尽くした異国の王宮に閉じ込められ、王との謁見までの数日間、ハビエルとともに過ごすことになる。国民にも怖れられるほど強面の王子に国を案内され、街を歩き、ダンスを教わるうち、バイオレットは彼に強く惹かれていく。兄王のそばにいても、きっと私はもう、弟しか目に入らない…。
ケータリングサービスを営むジェーンは、ある夜、ずっと避けてきた男性、大富豪のガブリエルと会ってしまう。ジェーンの元夫とガブリエルの元妻は不倫関係にあったのだが、ふたりは3年前、共に交通事故で亡くなった。ガブリエルがジェーンを捜していると聞き、怖くなった彼女は、名前も髪の色も変え、過去を捨てて逃げたのだった。ところがガブリエルはジェーンの正体に気づいていないらしく、花束や食事の誘いで、情熱的に交際を迫ってくる。拒まなければならないのに、ジェーンは彼に惹かれていき…。
看護師のステイシーは、新任医師の顔を見て愕然とした。忘れ得ぬ男性がー愛しい娘の父親ノアが目の前にいる。3年前、ふたりは強烈に惹かれあい、めくるめく一夜を過ごした。そしてステイシーは小さな命を授かり、独りで懸命に育ててきた。ファーストネームしか知らない男性を見つけるすべはなかったのだ。記憶と違わず魅惑的なノアに再び強く惹かれるステイシー。娘のことを話す勇気が出ないまま、彼との距離は急速に近づいた。しかし、ついに意を決して真実をノアに伝えると、彼の顔からすべての表情が消えてなくなり、冷たい声が虚ろに響いた。「予防措置はとっていた。あの頃、君は本当に独り身だったのか?」
憧れの人と初めて結ばれ、トリシアは幸せに酔いしれた。相手の名はカイル・ハモンド、世界有数の億万長者だ。施設で育ったトリシアは彼との温かい家庭を夢見たが、翌日、突然カイルの父親が心臓発作で亡くなり、事態は急変する。カイルの妹が、トリシアが父から薬を奪ったとでっちあげたせいで、トリシアは彼の怒りを買い、絶縁されてしまった。6年後、ようやく立ち直ったトリシアを、皮肉な運命が待ち受けていた。彼女の勤め先を買収した大企業の社長が、なんとカイルだというのだ!新しいボスとしてやってきた彼は冷徹に彼女を見据え、握手さえ拒んだ。彼は私をどうしようというの?恐ろしい予感にトリシアは身震いした。
昼はフラワーショップの店員、夜はウェイトレスをしながら、4歳の息子を育てる未婚の母ゾウイ。そんな彼女の家に、新聞社に勤める独身貴族のクープが間借り人として引っ越してくる。明るく楽しいクープと触れ合ううち、息子が彼になつくようになり、しだいにゾウイも惹かれていくが、男性に傷つけられた過去があって…(『すてきな同居人』)。敵対する両家の跡取りであるフルールとマットは愛し合い、密かに結婚式を挙げた。だがその夜、フルールの母とマットの父が駆け落ち。この地を出ようと言うマットに、フルールは家族のために残ると告げるほかなかった。以来、音信不通になり、妊娠に気づいた彼女は世間の冷たい視線に耐え、彼の子を産み育ててきた。6年後ー(『秘密のウエディング』)。幼い娘の子育てを優先して昇進の話を断ったナタリーは、閑職に追いやられた。准男爵家出身のエリート社長ラファエルが気分を害して、こんな仕打ちをしたに違いない。同僚と残業中、ナタリーが社長のことを“冷血な暴君”と呼んで憎まれ口をたたいていたところ、彼女の背後に、ラファエル本人が美しい顔を歪ませて立っていた!(『甘美な嘘』)。
ローラは地味な容姿のせいか、20代も終わりでいまだに独身だ。ある日、ローラの名付け親がレイロフという友人を伴って訪ねてきた。そのハンサムなオランダ人医師を見るなり、ローラは目をみはった。包容力と落ち着きのある大人の彼は、まさに思い描いてきた理想の男性。しかし、レイロフが心を奪われたのは、見るからに華やかな妹だった。ほどなく婚約した二人を、ローラは胸の痛みをこらえながら祝福した。ところが移り気な妹は、出会ったばかりの別の男性と駆け落ちし、婚約破棄をレイロフに伝える役目をローラに押しつけた。ローラがありのままを告げると、レイロフは彼女を見据え、驚くべき言葉を口にした!「それなら、君と結婚したっていいわけだ」
ベスことエリザベスは里親の家を転々としたつらい生い立ちゆえ、極力、人との関わりを避けて生きてきた。だが、このままではいけないと、苦手なパーティに参加し、知的でなおかつ容姿端麗な実業家のダンと出逢う。初対面なのになぜか懐かしさを覚えたエリザベスは、お堅い自分を捨て、フルネームも素性も明かさぬまま、彼と夢のような一夜を分かち合った。人生で初めて知る喜び…。でも、あまりに性急すぎたかも…。ふと我に返った彼女は、眠るダンを置いて、彼のもとから姿を消した。彼の子を身ごもったとわかったのは、それから数カ月後のことだった。さらには、ダンと会うことはもう二度とないと思っていたのに、彼が謎の女性“ベス”の正体を突き止め、エリザベスの家へやってきた!
米系大手広告代理店・オメガエージェントに勤務している矢吹蛍子は、バンクーバーに出張し、ケビン坂田という人物と会って欲しいという社命を受けた。クライアントが60億円ものフィーを支払う謎のデータサイエンティスト・ケビンは、無事来日し、高田馬場に仕事場を構えるが、担当の矢吹にも極秘プロジェクトの中味は知らされず…都知事選を目前に控えた東京。水面下ではあまりに危険な極秘プロジェクト「レッドネック」が始動していた。結末には、すべての読者が震撼する!
「宇和島藩伊達家の墓所の中にある」柴田家の墓。重臣といえるほどの名家ではない柴田家が、なぜそのような所に祀られているのか。その謎を解く鍵となる人物が、著者の四世代前の祖先、高祖父に当たる“柴田快太郎”であったー!八代藩主伊達宗城の密命を受け脱藩したという高祖父の伝説を、『下山事件』で昭和史の謎を掘り起こした柴田哲孝が、再び現代に蘇らせる!幕末の動乱を迫真の筆致と視点で描く、歴史小説の傑作、誕生。
凶賊「六道丸」に、大坂の庶民が脅かされていた文政三年ー。豪商・杣屋徳兵衛は奉行所とつるみ、御政道をねじ曲げていた。捨訴からその実態を知った若き与力・大塩平八郎は、その不正を暴くべく、放蕩息子の久代助を捕えるが…。男も惚れる快男児を、気鋭の著者が描く新たな代表作登場!
皇帝の十三番目の子供という生まれながらの地位チートに加え、生まれつきレベル∞、かつ、従えた他人の能力を自分の能力にプラスできるというチートスキルを持った世界最強のステータスを持つノア。天より与えられた才能を持つノアは、その最強の力で魔剣の中でも最上位に君臨する水の魔剣レヴィアタンを従え、長年続いた帝位継承争いに終止符を打ち、ついには地上最強の権力者である皇帝の座まで上り詰める。最強の部下を揃え、偉大な功績をいくつも残し、一歩ずつ新時代を築いていく皇帝ノアは、さらにはハイポーションまで生成することに成功し、世界の常識すらも覆していきー!?自らが赴いての龍脈が眠るゲラハ砂漠への調査、帝国を脅かす反乱勢力の存在…。まだまだ厄介事が絶えないノアだが、『人は宝』その言葉を体現するように、民を、そして人を至宝とし、着実にミーレス帝国をさらなる発展へと導いていく!!
自分の体のサイズをめぐって悩みを抱える主人公エリザベス。同じようなコンプレックスをもつ女性たちとも関わって生きている。ダイエットに取り組み、次第に彼女は痩せていくのだがー。人が自分の体を生きることの居心地のわるさを描き出したモナ・アワドのデビュー作。
伯爵家の長男として生まれたレスト。将来の後継ぎとなるべく貴族として必要な様々なことを無理やり勉強させられていたが、そんな勉強や貴族社会に辟易していて、なんとかこの立場から逃れたいと考えていた。そんなある日、レストは腹違いの弟を跡継ぎにしようと暗躍し始めた継母を利用して、狙い通り伯爵家から追放されることに成功する。追放された先は最果ての島だったが、心許せる臣下達と共にのんびり暮らすため、領地開発を始めるのだった…。