2021年6月16日発売
ハングルが書き込まれたアドレス帳を拾った美大職員の江里子は、アート作品にちなんで韓国で持ち主を探すことに…(『ハングルを追って』)。後継者もなく工房を畳もうと考えていた人形師の正風が、フィリピンからの留学生と出会い心を開いていく…(『人形師とひそかな祈り』)。現代水墨画家の成龍はコレクターたちのパーティに出席。会場で本土の実業家の夫人と出会い、街の混乱の中で再会を…(『香港山水』)。有名な写真家だった父が、記憶をなくして海外から帰国。娘は母の話から、父の生涯を辿ることになる…(『写真家』)。ミャンマー料理店の店主に、反政府運動に加わって投獄された話を聞く。劣悪な環境の中での奇妙な体験とは…(『光をえがく人』)。アートが照らす五つの物語。
20世紀初頭のイギリス。遠い太陽の光が海辺の一日を照らし、生まれては消える波のうねりを描き出す。そこに重なるのは、男女6人の独白。いくつもの声が、幼少期から晩年まで、幻想のように過ぎた日々の思い出を物語る。くり返す描写と語りが重なり、繊細な感覚と記憶が波音と響き合う。作家みずから劇=詩と呼び、小説の純粋性を追求した作品であり、後世に多大な影響を与えた、ウルフ文学の到達点。詩情豊かな訳文による、45年ぶりの新訳。
果樹園の蜂の巣で、最下層の蜂として生を享けたフローラ七一七。女王を崇めて労働を称える教理により厳重に管理される蜂社会で、フローラはほかの蜂とは異なっていた。育児室の世話をし、花蜜を集めることになった彼女は、巣の存続の危機が迫るなか、女王にのみ許される神聖な母性を手にしたのだ…。蜜蜂の実際の生態をもとにして蜂の巣の全体主義的社会を描き、『侍女の物語』になぞらえて評された驚くべき物語。
18世紀、独立戦争中のアメリカ。記者ロディは投獄された英国兵エドワード・ターナーを訪ねた。なぜ植民地開拓者と先住民族の息子アシュリーを殺したのか訊くために。残されたアシュリーの手記の異変に気づいた囚人エドは、追及される立場から一転、驚くべき推理を始める。それは部隊で続く不審死やスパイの存在、さらには国家の陰謀にかかわるものだった…『開かせていただき光栄です』シリーズ最終作。
時空の覇権を争う二大勢力“エージェンシー”と“ガーデン”の工作員は、あらゆる時代と場所に介入し、自陣に有利な未来を作り出すべく永い暗闘を続けていた。ある平行世界で二つの巨大帝国を壊滅させるミッションを成功させた“エージェンシー”の工作員レッドは、作戦遂行中ずっと、本来ならそこにいるはずのない敵の存在を感じていた。そして、激闘を終えた静寂の中で、“ガーデン”の工作員ブルーからの手紙を発見するー思いがけず文通を始めた彼女たちは、やがてお互いを好敵手と認めあうようになるが…ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、英国SF協会賞を受賞した、超絶技巧の時空横断SF中篇。
舞台は、1965年、ディープサウス(アメリカ最南部)、フロリダ州の美しい大学町。当時の湿度や空気、香りまでふっと漂ってくる。好奇心旺盛な青年の体験や思考を通して、私たちは、アパルトヘイト(人種隔離)が見せかけの平和の維持に機能していた時代や、今もアメリカの根底に横たわる分断の歴史を追体験する。
5年つきあった彼氏と別れた編集者の咲は、失恋の傷を癒す旅に出て雪山で遭難した。そこで自衛官の紘一に救助された咲は「あなたのこと、ずっと待ってました」と抱きつく。それから3か月、「交際ゼロ日」で結婚した2人。だが、結婚生活初日から価値観がスレ違い、数日で大ゲンカ。離婚を決意する。そして、同時に両家の父母にも離婚騒動が勃発し…。北川景子、永山瑛太ほか出演。「全員離婚家族」が巻き起こす人気ドラマが小説に!
地球の滅亡、感染症、種の絶滅、大量消費…『フィフティ・ピープル』『保健室のアン・ウニョン先生』の人気作家が放つ初めてのSF短編集。文明社会の行きづまりを軽やかに描き出し、今を生きる女性たちにエールを贈る、シリアスでポップな8つの物語。
緋雪の依頼を受けて、地図に記されていない封都インキュナブラへ向かったジル。そこは『喪神の負の遺産』-“旧神”を奉ずる者たちの魂魄を材料にして形作られた幻想の都だった。“聖母”アチャコと“神子”ストラウスの本拠地へと足を踏み入れたジルは、苦戦の末、絶対絶命の危機を迎えてしまい…!?「なろうコン」大賞受賞作『吸血姫は薔薇色の夢をみる』の100余年後の世界を描く人気シリーズ、第13弾!
魔王を倒すために勇者一行の一員として旅立った聖女は、道中に後輩の聖女見習いと婚約者だった勇者に裏切られ、殺されてしまう。死の間際、日本の女子高生だった前世を思い出すものの、何の役にも立たず花のモンスターに食べられてしまう。気がつけば、女子高生&聖女の記憶を持ったまま、上半身は人、下半身は植物のモンスター・アルラウネに転生していた。裏切り者に復讐はしたいが、地に生えているので移動はできず、魔物だからと退治されたくもない。よし、だったら光合成をしながら静かに暮らそう!平穏無事な日々を望むも、そうはいかないモンスター娘の徒然日記。
高遠夜霧と壇ノ浦知千佳は、高校の修学旅行中、クラスごと異世界に召喚された。賢者から“ギフト”を与えられたクラスメイトたちがほぼ全滅してしまう中、“ギフト”を受け取れなかった二人は、夜霧が元々特殊な“即死能力”を持っていたのと、知千佳が壇ノ浦流弓術という古武術の達人だったのに加え、壇ノ浦もこもこという強力な守護霊が憑いていたこともあり、この世界で飄々と旅を続けていた。しかし、この世界の神であるマルナリルナが死んだことで、元の世界に帰るために集めていた“賢者の石”が融合して女神となり、ルーと名付けられて夜霧たちの同行者になる一方、UEGと名乗る女神も復活し、この世界を滅ぼうそうと動きはじめた。ルーが完全復活すれば元の世界に帰れるらしいのだがー書き下ろし前日譚シリーズ「狭間」を収録!
「ねえねえ、あなたはくさのせいれいさん?」俺の声が聞こえるハイエルフの幼女セフィとの出会いで、運命は動き出す。セフィに“ユグ”を名づけられ、エルフの里でのんびりと育てられることになった…かと思いきや、どうやらエルフは迫害を受け、逃げてきたらしい…。-エルフたちを守るために雑草は奮闘し、進化する!異色の雑草成長ファンタジー。
優秀なサンチェス公爵家には二人の姉妹がいた。姉のフローラは才色兼備かつ聖女候補。妹のカロリーナは地味で才能もない落ちこぼれ…そんなカロリーナのもとに隣国との関係調整のため第二皇子との縁談が舞い込む。ただし皇子は、野蛮で残酷無比と噂の人物。「私でも役に立てるなら」と政略結婚を受け入れるカロリーナだったが、嫁いでみると人生が一変。噂に反して紳士的な皇子や皇后に正当に評価され、自分を認められるように。一方王国に残されたフローラは不調続きでー第2回アース・スターノベル大賞、奨励賞受賞。
オリアナは最愛の恋人であるヴィンセントと共に謎の死を迎えてしまうが、気がつくと七歳の頃に巻き戻っていた。入学式で再会するも彼には前の人生の記憶がなく、前に付き合っていたことはほら話と思われて、第一印象は最悪に…。それでも彼が心配で傍に居続けようとがんばるオリアナの、生きるか死ぬか、二度目の魔法学校生活がはじまる…!
かつて“鬼才”と称された女騎士アメリアの転生者であり、国王ヴァルターの唯一の護衛役である貴族令嬢フローラは縁談話から逃れるため、ミスレナ商国に行くことに。出発前、“北の魔女”システィアに彼の地で薬草の採取を頼まれたものの、ミスレナに着くなり「トラブルメーカーだから」と単独行動を余儀なくされる。「こうなったら一人でさっさと依頼をこなして、二人の鼻を明かしてやる!」と息巻くフローラだったが、次第にアメリアとヴァルターにとって因縁深い暗殺者集団の陰謀が明らかになっていき…。前世で命を懸けて守った王子=現国王に振り回される、強くて可愛い転生女騎士の戦闘系!?ラブコメ第2巻!
202X年春、日中外相会議開催の四日前、尖閣諸島水域で石垣島の漁船二隻が、領海侵犯した中国海警船三隻に追い払われる事件が発生。そんな中、米インド太平洋軍司令部から、SLBM搭載可能の原子力潜水艦を含む三隻の中国潜水艦が所在不明との一報が入る。さらに中国艦隊が南沙諸島の太平島領海に急接近しているというのだ。次々と軍事行動を起こす中国。日本国内でも尖閣諸島を護れとの声が高まるのだが、政府は軍事衝突に発展するのを恐れ具体的に対処しなかった。国の対応に業を煮やしたある民間人らが尖閣諸島への上陸を企て、作戦を実行に移した!尖閣をめぐる日中戦争、ついに勃発か!?