2021年8月発売
自分に何の期待もせず無気力に過ごす大学生、敷石和也。ある日駅のホームで、女性が線路に転落するのを目撃。右往左往しているうちに意識が遠のきー見知らぬ子どもの姿となって目覚める。目の前には、小学生時代の自分が…!不可解なタイムスリップの謎を追いながら、小学生時代の自分を客観的に見つめる和也。はたして、自分の身に起こった「奇跡」とどう向き合っていくのか。
午後5時開店、午後8時閉店。亡き夫との思い出をきっかけに松井波子が開いた「クロード子ども食堂」。スタッフは、夫とうまくいかない近所の主婦や、就活のアピール目的の大学生。お客さんは、デートに向かうお母さんに置いていかれる小学生や、娘と絶縁し孤独に暮らすおじいさん。みんないろいろあるけれど、あたたかいごはんを食べれば、きっと元気になれるはず。
とある商家・高木家の三代目伸太郎は、初代・友之丞から受け継いだ乃木希典の赤瓢箪を懐に、中国戦線からフィリピンへと転戦。そこへ偶然にも養子に出ていた実弟の礼三が上官として赴任してくる。久しぶりの再会を喜び合う二人だが、間もなく米軍との戦闘は激しさを増していき…。自らの戦争体験や従軍作家としての経験を生かして、末端の兵士の姿を活写した戦争文学の極致。
1986年以降に発表された10作品を収録する“無頼派作家”最晩年の短編小説集。作者以上の無頼派である棋士・芹沢博文との交流と最期を綴った「男の花道」、中年男が嫁探しをする悲喜劇「男の十字路」、あるいは亡くなり、あるいは落ちぶれてしまったかつてのギャンブル仲間の姿を描いた「男の旅路」、無口だが芯のある男らしい男を描出した遺作「オールドボーイ」といった“男シリーズ”のほか、単行本未収録作品である「赤い靴」「青年」「蜘蛛太夫」「道路の虹」などをまとめた、色川ファン垂涎の一冊。
元自衛官の村主は、残虐な殺人事件により恋人の雪乃とその家族を失った。犯人は二十歳の男で、危険運転を咎められたゆえの身勝手な犯行だった。村主の怒りは、犯人、その妻、そして彼らの一歳の息子へと向けられる。第5回草思社・文芸社W出版賞金賞受賞作品。
過去のトラウマでお菓子と男性に恐怖を覚える華乃子は、なぜか甘党である上司、高倉恭平のスイーツ巡りにリハビリ代わりに付き合うことに。彼だけは一緒にいても怖さを感じず、お菓子も美味しく食べられる。どんどん恭平に惹かれていく華乃子。「すごく綺麗だ。真っ白で、柔らかそうで」過去と向き合うと決めた彼女を恭平は甘〜く溺愛してきて…!?
信州から満州、明治から今日までを舞台に、戦争と激動の時を越え、愛と不屈の精神が織りなす人間讃歌。そして今、若者たちの「武器よさらば!」の歌声が響く。元特攻志願少年、米寿を迎える著者渾身の「遺言書」。
現代日本の「子どもの文学」をいろどった作家、作品の魅力を探る、第二弾!石井桃子、宮沢賢治、金子みすゞから、打木村治、詩人の永瀬清子、絵本作家の中谷千代子、赤羽末吉、林明子、ベートーヴェンの伝記まで、作家と作品を幅広く紹介。また、「動物」を切り口にした独自の視点での作品論も自由に展開!
日本植民地時代終焉期に生を享けた金源一。社会主義運動に奔走し、激動の時代を駆け抜けた父の像をさまざまな人々の証言をもとに綴った自伝的小説。戦前から戦後にかけて、息子の記憶を通して描く「父の時代」の詳細な記録。
スラム街に君臨する二大徒党、エゾントファミリーとハーリアスは、莫大な金を生み出すスラム街の裏経済を巡って長年対立していた。その情勢の中、シェリルはアキラと一緒にヨノズカ駅遺跡から持ち帰った遺物を換金するために、遺物販売店の立ち上げを計画する。だがそれは、アキラとシェリルが二大徒党の大抗争に巻き込まれる切っ掛けとなってしまった。暗躍する情報屋ヴィオラ。意外な理由でアキラと再会したキャロル。二大徒党に狙われるシェリルの運命はー!?巨大な人型兵器まで現れた大抗争の中、二大徒党を同時に敵に回したアキラが、新たな装備で暴れ回る!!
映画好きの青年・江渡木はゾンビが存在し、映画でよくみる出来事が起きる「ゾンビ映画の世界」に転移してしまう。ゾンビに抗体をもつ女性・アリスに出会った江渡木は、彼女に一目惚れした結果、「口説き文句」を言ってしまうのだった!「きみが主人公の映画を僕に撮らせてくれ!」かくして二人はカメラ片手に世界を救うため旅立つことに!?
“我らが願いは…統一”北朝鮮の現政権が勝手に崩壊するという、韓国にとって理想的なシナリオが現実のものとなった朝鮮半島。しかしそこには、いまだ統一国家が成立してはいなかった。一般人の南北間の往来は禁じられ、朝鮮半島北部は無能な「統一過渡政府」のもと、貧困と暴力が蔓延し、麻薬組織が暗躍する無法地帯となり果てていた。つい何年か前まで、最も理想的と謳われていたシナリオ。それがいざ現実のものとなるや、餓鬼と修羅の跋扈する畜生道への扉が開かれたのだ。韓国で理想的に語られる筋書きが現実化した後の朝鮮半島を描いた近未来ディストピア小説。北の社会の実情をリアルに描き、読者を一気に引き込む話題作。
対米国力差から真に日本のことを考えるならば、大和型戦艦の建造計画は絶対に葬らねばならない!日本海軍リベラル派は、避けられぬ対米戦へ向け、大胆な航空主兵主義を打ち出した。その中心は、零戦および超零戦「烈風」へとつながる高性能戦闘機の開発と、装甲空母「信濃」らで構成する機動部隊の創設であった。しかし、造船、航空設計、海軍中枢で恩讐を忘れぬ国内の敵が牙を剥く。一方、日増しに緊張感の高まる日米関係。重度なる米海軍の挑発に耐え抜いていた日本に対し、しびれを切らしたルーズベルトは、ついに宣戦布告。台湾の日本軍基地に奇襲をしかけるのであった!