2021年9月発売
愛する両親を喪い、悲しみに暮れる乙女エミリーは、叔母の夫である尊大な男モントーニの手に落ちて、イタリア山中の不気味な古城に幽閉されてしまうーー刊行から二二七年を経て、今なお世界中で読み継がれるゴシック小説の源流。イギリス文学史上に不朽の名作として屹立する異形の超大作、待望の本邦初訳!「あれだ」何時間ぶりかで口を開いたモントーニが言った。「あれがユドルフォ城だ」 エミリーはモントーニが領有するとされている城を見つめ、暗い畏怖の念をおぼえた。というのも、今は夕陽に照らし出されてはいるが、その雄麗なゴシック様式や崩れかけた鈍色の石の城壁は何とも陰鬱で荘厳な雰囲気を醸し出していたからだ。彼女が見つめていると、城壁に当たっていた陽が薄れてゆき、暗い紫の色合いが残されることになった。山肌に薄靄が立ち昇ってゆくと、その色合いはさらに濃さを増して広がっていったが、一方、上部の銃眼胸壁は依然として夕陽に輝いていた。やがてその銃眼からも光は薄れてゆき、城全体が夕暮れ時の厳かな薄闇に包まれていった。人気もなく、ひっそりと壮麗に佇む城はこの場一帯の君主の如き様相を漂わせ、その孤独な支配に闖入せんとする者を威嚇しているかのごとき趣であった。夕闇が深まってゆくにつれその姿形も朧になり、不気味さを増していった。(本書より)
悪漢の魔の手を逃れ、故国フランスに辿り着いたエミリーは、かつて結婚を誓ったヴァランクールと痛切な再会を果たす。彼が犯した罪とはなにかーー刊行から二二七年を経て、今なお世界中で読み継がれるゴシック小説の源流。イギリス文学史上に不朽の名作として屹立する異形の超大作、待望の本邦初訳! どれほど彼女がモントーニの悪辣さに苦しめられたかを聞くにつれ、憐れみと憤りの感情が交互に彼の心を支配することになった。彼女はモントーニの行為を語るにあたり、その罪深さを誇張するというよりは、むしろ控えめに話したのであったが、それでも、それを聴いていたヴァランクールは、一度ならず椅子から立ち上がり、その場から歩み去っていった。それは、怒りというよりは、自責の念に駆られてのことのようであった。「わたしの苦しみはもう終わったのです」彼女は言った。「だって、モントーニの暴虐から逃れることができたのですから。そして貴方も元気そうだしーーどうぞ悲しそうなお顔はなさらないでくださいまし」 ヴァランクールは前にもまして動揺した。「エミリー、僕は貴女にふさわしい人間ではない」彼は言った。「ふさわしい人間ではないのです……」(本書より)
全米図書賞受賞作! 子を宿した15 歳の少女エシュと、南部の過酷な社会環境に立ち向かうその家族たち、仲間たち。そして彼らの運命を一変させる、あの巨大ハリケーンの襲来。フォークナーの再来との呼び声も高い、現代アメリカ文学最重要の作家による神話のごとき傑作。 「登場人物の内なるパッションとメキシコ湾で刻々と勢力を増す自然の脅威が絡まり合い、廃品と鶏に囲まれて暮らす貧しき人々のまっすぐな生き様の中に、古典悲劇にも通じる愛と執着と絶望がいっさいの気取りを排した形で浮かび上がる」--「ワシントン・ポスト」 「カトリーナによりもたらされた破壊と、すべてを洗い流された海辺の街の原初の風景について、本書は水没したニューオーリンズの映像よりもはるかに多くを教えてくれる」--「ニューヨーカー」 「ウォードの堂々たる語りには、フォークナーを想起させるものがある。今日的な若者言葉と神話的な呪文のリズムの間を自由に行き来し、パッションの発露を怖れない。苛烈な物語のほぼ全編に、パッションが満ちあふれている」--「パリ・レビュー」 一日目 裸電球の下での出産 二日目 隠された卵 三日目 土の中の病原菌 四日目 盗む価値 五日目 骨を引き上げろ 六日目 確かな手 七日目 闘う犬と闘う男たち 八日目 思い知らせる 九日目 ハリケーン日食 十日目 無限の目の中で 十一日目 カトリーナ 十二日目 生きている 謝辞 カテゴリー5のハリケーンを生き延びて ジェスミン・ウォードとの質疑応答 訳者あとがき
2019年6月にスタートした韓国文学の源流シリーズは今回、短編選をスタートします。朝鮮文学時代から今の韓国現代文学に続く、古典的作品から現代まで、その時代を代表する短編の名作をセレクトし、韓国文学の源流を俯瞰できる10巻です。現代韓国文学に親しみ始めた読者が、遡って古い時代の文学も読めるようにしたいと考えています。 短編10巻、各巻は6〜10編の各時代の主要作品を網羅します。 各巻には小説が書かれた時代がわかるような解説とその時代の地図、簡単な文学史年表が入ります。よりいっそう、韓国文学に親しんでいただければ幸いです。 日本植民地時代の1930年代韓国は、プロレタリア文学とモダニズム文学との相克の時代。揺れ動く時代を背景に、若い男女の交友関係を軸に、社会運動にのめり込んでゆかざるを得ない暗い時代が描かれる。実りのない恋愛を通して強く自立した生き方を模索する愛と葛藤の日々が、読むものの心に深く響いてくる。 2021年8月上旬全国書店にて発売。
悲しい別れを乗り越え日常へと戻ったネロとミーちゃん。 来る戦いのために勇者二人を鍛えながら、二都市でのお祭りを開催! 冷えたエールに枝豆、モフモフふれあい所など盛りだくさんでお祭りを満喫。 そして、勇者引き抜きの功績でまさかの貴族に!? ブロッケン山周辺を手に入れたので、まずは領地の整備&大掃除。モフモフ領地、運営開始します!
秋深まる季節、冒険者ギルド設立に向けて大忙しのエルト。ギルドの場所や建物を検討したり、併設するレストランのメニューを考えたり……と、そこに現れたのは危険なブルーヒドラ! 新たなモフモフ種族やモフモフの着ぐるみを被ったS級冒険者も加わり、みんなでブルーヒドラ討伐&ギルド設立に奔走! 領地発展はもうどうにも止まりません!?
魔王討伐の代償で若返ったサクヤは、冒険者養成学園へと通っていた。 そんな中、学園同士で覇を競う「連合学園祭」が開幕し、優勝を誓うフユナ先輩を支えることに。 一方で対戦校に所属し、フユナのライバルであるフィネスは、一目惚れしたサクヤのことを探していた。 「連合学園祭」で二人の少女が激突した時、チカラモチャーは真の実力を発揮する!
救世主パーティーを追放された後、自分の店と新たな仲間を手に入れたアルヴィン。仕入れを兼ねた遺跡探索の帰りに助けた少女の正体は、王国御三家のご令嬢でーー庶民生活を体験したい彼女は、お店に来ることに!?
大厄災により人類は1%未満まで減少、地球上のほとんどが不浄の土地となってしまった。生き残った人々は、わずかに残った土地で人工知能カーネにより生活を制御され、平和に暮らしていた。”殺人”などとは無縁の世界、のはずだったーー。
大人気プロジェクト小説版が登場! Paradox Live終了後、「BAE」「The Cat's Whiskers」「cozmez」「悪漢奴等」は、訪れた平穏の中でそれぞれの過去を思いだしていた。14人のラッパーたちが成し遂げたかった想いの原点が、4つの記憶の物語として描かれるーー ・アンがアレン、夏準と出会ってからBAE結成までの秘話を解禁! ・西門、神林、椿の三人で過ごした美しくも儚い日々が初めて語られるーー ・那由汰と四季の出会い、そしてサンタを信じる珂波汰にこっそりプレゼントを準備!? ・翠石組に玲央が加入した直後、紗月や北斎と夏祭りの出し物を企画するように依織から言われるがその意図とは・・・? ここでしか読めないオリジナルストーリーが満載!
警察専門のカウンセラー・高階唯子の仕事は、事件被害者やその家族のケアをすることだ。夫を殺されたのに自分こそ罰を受けるべきだという妻。誘拐犯をかばい嘘の証言をする少女。心の傷から快復したはずなのに、姉を殺した加害者に復讐した少年…多くを語らないクライエントが抱える痛みと謎を解決するため、唯子は奔走する。絶望の淵で、人は誰を想い、何を願うのか。そして長い沈黙の後に訪れる、小さいけれど確かな希望ー。深く胸に響く物語。
謎の焼死体、社長令嬢誘拐事件、不遇な少年たちの約束ーー。 全てを覆すための哀しき犯罪計画とは。 スリリングでいて、痛いほどに切ないーー。新潮ミステリー大賞作家の大飛躍。 コミュニティから爪弾きにされた三人の少年。父親が暴力団組長の玉山陸人。虐待を受け児童養護施設で育った日高航。愛人殺しの罪で服役中の父親を持つ冲匡海。不遇な少年たちは誓った。「真逆の世界」を実現させると。やがてヤクザとなった三人は、一件の放火事件をきっかけに、地元・新潟にある大手製薬会社の社長令嬢誘拐計画を立てることになるがーー。 【著者プロフィール】 生馬直樹(いくま・なおき) 1983年12月、新潟県生まれ。2016年「夏をなくした少年たち」で第3回新潮ミステリー大賞を受賞。そのほかの著書に『偽りのラストパス』『雪と心臓』。
フランシスは作家志望の21歳の大学生。かつての恋人のボビーと共にダブリンでポエトリー・パフォーマンスを行っている。二人の才能に目をつけたジャーナリストのメリッサと親しくなるが、フランシスはメリッサの俳優の夫に惹かれていく……。BBCドラマ化決定
シリーズ第十弾。最新長編。 今、明かされる「ガリレオの真実」。 房総沖で男性の銃殺遺体が見つかった。 失踪した恋人の行方をたどると、関係者として天才物理学者の名が浮上した。 警視庁の刑事・草薙は、横須賀の両親のもとで過ごす湯川学を訪ねる。 「愛する人を守ることは罪なのか」 ガリレオシリーズ最大の秘密が明かされる。
あれから1年。浪速では医療が崩壊し、東京には聖火がやってきたーー ワクチンをめぐる厚生労働省技官・白鳥の奔走。そして、ついに東城大学医学部付属病院で院内クラスターが……。田口医師はこの難局をどう乗り越えるか!? 混迷を極める日本の2020-2021を描き尽くす、最新コロナウイルス小説! 『コロナ黙示録』に続く、現代ニッポンの“その後”。 累計1000万部突破『チーム・バチスタの栄光』シリーズ、書き下ろし最新作 (あらすじ) 2020年9月、新型コロナウイルスは第二波が収まりつつあった。安保宰三は体調不良を理由に首相を辞任、後継の酸ヶ湯政権がGotoキャンペーンに励み、五輪の開催に向けて邁進していた。 そんな中、日本に新型コロナウイルスの変異株が上陸する。それまで目先を誤魔化しながら感染対策を自画自賛していた浪速府知事・鵜飼の統治下、浪速の医療が崩壊し始め……。 浪速を再生するべく、政策集団「梁山泊」の盟主・村雨元浪速府知事が、大ボラ吹きと呼ばれるフリー病理医の彦根医師や、ニューヨーク帰りの天馬医師とともに行動を開始する。
フリーの分子生物学者(バイオハッカー)“Q”のもとにかかってきた一本の電話ーバイオソニック社のCEO(最高経営責任者)であり、Qと同じ研究室出身の織原純一郎が行方不明になったらしい。織原には失踪癖があり、今回もどこかでサーフィンにでも興じているのではないかと軽く考えるQであったが、CFO(最高財務責任者)牧村の話によれば、COO(副社長)の河原崎がCEOの解職動議を提出する気でおり、織原が臨時取締役会に出席しなければ解職は免れないという。開催日はちょうど一週間後。友人として、それまでに織原を見つけ出すことを依頼されたQは、手配された探偵兼ドライバーの黒人カカウとともに捜索に乗り出すが…。
気がつけば彼女の幻影を探す日々。孤独を抱えて生きる男にとって、カクテル『YOKOHAMA』を傾けながら「あの頃」に耽るひと時は、唯一自分の心と向き合える時間だった。表題作『未来への手紙と風の女』ほか、4作を収録。
中原昌也氏推薦 「純文学=純愛じゃない! しかし……勝手にしやがれ! 」 海外の文芸誌で話題をさらった 稀代の新人作家、衝撃のデビュー作! 中原昌也氏推薦 「純文学=純愛じゃない! しかし……勝手にしやがれ! 」 海外の文芸誌で話題をさらった 稀代の新人作家、衝撃のデビュー作! 2年前、佐藤が働くアフィリエイト広告の会社に、ひとりの女性が入社した。 本名、栗原ミニ子。通称、ミニ。 売れない小説家のミニは、天性の才能とセンスで商品が飛ぶように売れる広告を書き、 業界で「フェイク広告の巨匠」と呼ばれ、崇められるようになる。 しかし、ミニの傷を知るうちに、許されない関係になっていってーー。 表題作をはじめとして、「愛」にまつわる痛みや孤独を、 暴力的なまでに描きぬいた短編集。 ■目次 フェイク広告の巨匠 蛸やったら、 くらくらと美味しそうな黄色のイチョウ くたびれもうけ 新代田から フェイク広告の巨匠 蛸やったら、 くらくらと美味しそうな黄色のイチョウ くたびれもうけ 新代田から