2021年発売
書き下ろし長篇歴史小説 2022年NHK大河ドラマ 『鎌倉殿の13人』を差配した影の主役、北条政子! 北条時政の長女であって宗時、義時の姉。源頼朝の正妻にして頼家・実朝の母。頼朝没後は尼将軍として鎌倉幕府を実質差配。幕府守護のためには実子も見捨て、承久の変では三上皇を隠岐などに配流した鋼鉄の女帝。 万寿(政子)は義時の正室の兄にあたる伊賀光季(みつすえ)と、大江広元の子息の大江親広(ちかひろ)を、京都守護として派遣した。後鳥羽院に無言の圧力をかける方策だった。 これらはすべて万寿が将軍職を代行して発令したものだった。実朝在世の時期からすでに万寿は鎌倉の最高権威であったが、将軍が不在となったいまは、その権威をあからさまに示して御家人たちを差配することになった。(中略)実際は万寿が幕府を差配し、「尼将軍」と呼ばれていた。--本文より
この国はユートピアか、究極のディストピアか。 北海道新聞文学賞受賞作家が、閉塞を深める今の世に問う渾身の長篇小説。 清潔にとりすました社会が隠蔽する限りない闇。汚れた仕事を押しつけられ周縁に排除される人々。 近未来のこの国は私たちの国の合わせ鏡である。 「至福の死」に抗う老人・結城紘一郎は、脳内空間の向こうになにを求めたのか……。 政府による「高齢期リスク・チェック」により、5年以内に「人生の成就」プランを受けるよう勧告された便利屋の結城紘一郎。利用者に「至福の死」をもたらすこの政策を拒絶する紘一郎のもとに、プランを提供する企業の社員、楢本千晶が家族からの依頼を受けて説得に訪れた。 この出会いがやがて、互いの人生を大きく揺り動かすことになる……。
東京のまちに生き、まちに思いを馳せる人々が織りなす、七つの物語。 自撰小説集第一弾。 優しさあふれる文体に好感が持てる短編作品集です。 引越手形 ルック、バック 雷声 側溝 暖を取る --サウナ愉楽編ーー 今日此頃 また、あした
宇宙へと向かった由希奈は、剣之介に出会えるのか? オリジナルテレビアニメ『クロムクロ』のその後を描くオリジナルストーリー。 ワームホールの先に消えた青馬剣之介時貞を追いかけ、2021年9月、白羽由希奈は航宙艦〈くろべ〉で富山きときと宇宙港を旅立つ。剣之介がいるはずの射手座χ1をめざして……。 2018年に電子書籍で発売された小説『クロムクロ 秒速29万kmの亡霊』第1話〜第4話までを著者自ら加筆修正し収録。
星の海を渡り、再び巡り会った二人の運命の時。 オリジナルテレビアニメ『クロムクロ』のその後を描くオリジナルストーリー。 激闘の末に射手座26星系で剣之介と再会を果たした由希奈。しかし、剣之介はエフィドルグによる調整を受けており、記憶が改竄されてしまっていた。 由希奈は剣之介と共にすごした記憶を取り戻すべく奮闘を始めるが…………。 2018年に電子書籍で発売された小説『クロムクロ 秒速29万kmの亡霊』第5話〜第7話(最終話)までを著者自ら加筆修正し収録。
カミーノ・アイランドに夏がやってきた。 直筆原稿盗難事件から数年が経ち、独立系書店の名物店主ブルース・ケーブルは相も変わらず精力的に書店を切り盛りしている。 そんななか、超大型ハリケーンの接近中に殺人事件が起こり、不審を抱いたブルースは犯人捜しに乗り出す。 その行く手に待ちうけるのは……?
昭和、平成、令和ーー時代は変わっても、実家から送られてくる小包の中身は変わらない!? 業者から買った野菜を「実家から」と偽る女性、父が毎年受け取っていた小包の謎、そして、母から届いた最後の荷物ーー。 実家から届く様々な《想い》を、是非、開封してください。
「あの味っこさ会えて、いかった」 青森県南部の葵岳登山口にあるレストラン。そのシェフ・登磨には亡き祖母との思い出の味があった。それを思い出させてくれたのは、意外な人物で……。
テロ・グループがMERS変異ウイルスを蔓延させた豪華客船“ヘブン・オン・アース”。アメリカの作戦によりテロリストは一掃されたが、乗船していた“サイレント・コア”原田拓海一尉の血液検査で意外な結果が出る。その頃、中国軍による南シナ海東沙島奇襲作戦に端を発した東シナ海の戦いは九日目を迎えていた。解放軍はこれまで数度のミサイル攻撃を仕掛けていたが、海上自衛隊のイージス護衛艦がこれを迎撃、飽和攻撃を撃退した。台湾軍とともに防戦に徹する日本、いたずらに死者を増やす中国軍。しかし、尖閣諸島をめぐる状勢は新たな局面を迎えようとしていた。
病に冒されながらも、最後までピアノを弾き続けた妻がこの世を去った。シューマン「幻想曲」の楽譜の間に、短くもあたたかい言葉を残してー。無慈悲な現実に立たされてもなお明るく生きた家族の物語。
十文字鑓で突き破れ! “賤ヶ岳七本鑓”と呼ばれ、戦国を戦い抜いた猛将の生きざま! そして関ヶ原の戦い〈裏切り〉の真実とは!? 『九十三歳の関ヶ原』著者の戦国歴史長編! 信長、光秀、秀吉、家康ーー戦国を渡り歩いた男。 近江国の戦国武将・浅井長政に仕える脇坂甚内安治。 その後、浅井を離れ織田信長の部将・羽柴秀吉のもとで頭角を現す。 本能寺の変を経て、賤ヶ岳の戦いでは敵の首を獲り、“七本鑓”の功名を立てる。 大名となった安治は秀吉から水軍編制を命じられ、小田原攻め、朝鮮の役で奮闘。 そして、一族の命運を分ける関ヶ原の戦いへーー。 戦国時代を豪胆に生きぬいた武将の生きざまを描く歴史長編! 【目次】 序章 老将の回想 第一章 主家滅亡 第二章 貂(てん)の皮 第三章 大返しと仇討ち 第四章 七本鑓 第五章 朝鮮ノ役 第六章 関ヶ原合戦
プレオープン中に起きた銃乱射事件のため閉園に追い込まれたテーマパーク・イリュジオンランド。廃墟コレクターの資産家・十嶋庵はかつての夢の国を二十年ぶりに解き放つ。狭き門をくぐり抜け、廃遊園地へと招かれた廃墟マニアのコンビニ店員・眞上永太郎を待っていたのは、『このイリュジオンランドは、宝を見つけたものに譲る』という十嶋からの伝言だった。それぞれに因縁を抱えた招待客たちは宝探しをはじめるが、翌朝串刺しになった血まみれの着ぐるみが見つかる。止まらない殺人、見つからない犯人、最後に真実を見つけ出すのは…2021年最注目の俊英による廃墟×本格ミステリ!
友安小輪は、怯えていた。彼女と恋人の住むアパートに、ある日突然謎の老人が現われ執拗ないやがらせを始めたのだ。弱々しい老人相手にもかかわらずなぜか恋人は萎縮し、警察に被害を訴えてもまともに取り合ってもらえない。一方、都内の若夫婦が老爺に襲われ、夫が死亡し妻は襲撃者に略取され行方不明となる事件が起きる。幼い頃、姉を殺害されたことがきっかけで刑事となった佐坂湘は、くせ者ながら優秀さで知られる警視庁捜査一課の北野谷輝巳と組んで、消えた女性の行方を追うが…『死刑に至る病』『虜囚の犬』の俊英がストーカー犯罪を題材に描く衝撃作!
一族の闇、怨念、陰謀が渦巻く宮廷ーー 藤原道長の娘にして、一条天皇の后・彰子。 父に利用されるだけだった内気な少女は、いかにして怨霊が跋扈する朝廷に平穏をもたらす「国母」となったのか。 『天地明察』『光圀伝』の著者が、“平安のゴッドマザー”の感動の生涯を描く。 わずか十二歳で入内した、藤原道長の娘・彰子。父に言われるがままに宮中に入り、一条天皇を迎える最初の夜、彼女は一条天皇の初めての男児誕生の報を聞く。男児を産んだのは、藤原定子。夫である一条天皇は、優しく彰子に接するが、彼が真に愛した女性・定子の存在は、つねに彰子に付きまとう。 「透明な存在になって消えてしまいたい」--父・道長によって華やかに整えられた宮中で心を閉ざし、孤独を深める彰子であったが、一人の幼子によって、彼女の世界は大きく変わった。 定子の崩御により遺された子、敦康。道長の思惑により、十四歳の彰子がその子の母親代わりとして定められたのだ。戸惑いながらも幼い敦康を腕に抱き、母になる決意を固めた彰子は、愛する者を守るため、自らの人生を取り戻すために戦い始めるーー。 平安王朝を新たな視点からドラマチックに描いた著者渾身の傑作長編。
またもう一度選ぶならこの大学をわたしは選ぶ。本館前の芝生の中で、もはや学生は輪になって集わない。占春園の池のほとりで、もはや学生はギターを持って歌わない。それでも日本のやさしい春は、その襞の中に育んだあざみのけなげな一本を、校門脇のコンクリートの狭間にわずかな土を見つけて置いていった。もしもう一度選ぶならこの大学をわたしは選ぶ。(本書所収「もう一度選ぶなら」)より。東京教育大学は、1960年代末〜70年代初頭の学園紛争で唯一、歴史を閉じた大学である。半世紀を経て、かつての日々を愛惜込めて追尋する珠玉の小説群。主人公たちが求めた自治と自由と民主は、もはや色あせてしまったのか。大学は確かになくなったが、たたかいは思想を生み、仲間を繋ぎ、彼らの人生を支えた。