2021年発売
言うまでもなく北原白秋は、明治・大正・昭和にわたり詩人、歌人、民謡作家、童謡詩人として活躍したマルチの文芸家。この鳥越碧さんの小説は、創作における苦悩の軌跡を縦軸、三人の妻との愛憎を横軸にして、その文学者白秋の生涯を追ったものです。白秋は明治18(1885)年、福岡県柳河(現・柳川)の造り酒屋の跡取りとして生まれました。早くから文学に目覚め、中学卒業を前に、文学を一生の仕事にすると決意して東京に出奔、早稲田大学に入ります。『明星』の与謝野鉄幹、晶子、石川啄木、木下杢太郎らと親交を結ぶ中、次第に詩人として頭角を現わし『邪宗門』で世の寵児となりますが、経済的には実家が倒産し、苦境に陥ります。そんなとき出会ったのが、隣家の人妻、松下俊子でした。彼女と愛し合うようになった白秋は、俊子の夫から姦通罪で訴えられて拘置され、仕事も名声も失います。二人は一度は別れますが、やがて再会して結婚。しかし結婚生活はうまくいかず離婚、白秋は経済的のみならず創作の面でも行き詰まります。そんな中、『青鞜』に勤めていた江口章子(あやこ)と知り合い再婚、心の安定を得ます。尽くす章子に支えられながら童謡の仕事を始めた白秋は、ようやく窮乏生活から脱しますが、自宅を新築した地鎮祭の夜、なぜか章子は雑誌編集者と駆け落ちをしてしまいます。三度目の妻は佐藤菊子。子供にも恵まれ、ようやく安らかな家庭を得ましたが、すでに詩歌壇の大御所となった白秋は、文学的苦悩からしばしば感情を爆発させるようになります。誰からも怖れられて距離を置かれ、糖尿病から視力も奪われ、孤独感を募らせる中で白秋は昭和17(1942)年、58歳で世を去ります。著者・鳥越碧さんは平成2(1990)年に、尾形光琳の生涯を描いた『雁金屋草紙』で第1回時代小説大賞を受賞、その後も多くの作品を世に問うてきたベテラン作家で、その練達の筆で白秋の苦闘の実相に迫ります。
*第24回大藪春彦賞受賞作 蒲田署強行犯係の森垣里穂子は、殺人未遂事件の捜査中に無戸籍者が隠れ住む生活共同体を発見する。その共同体“ユートピア”のリーダーはリョウ、その妹のハナが事件の容疑者となっていた。彼らの置かれた状況を知った里穂子は、捜査が“ユートピア”を壊すのではないかと葛藤を抱くようになり……『十の輪をくぐる』の著者渾身の書き下ろし長編ミステリ。
新元号が発表された日、宣伝部の砂原江見は岐路に立たされていた。長く勤めた老舗映画会社・銀都活劇が大手IT企業に買収されることが決まったのだ。社内には弛緩した雰囲気が漂い、退職者も続出していた。DVD宣伝を手がける江見の部署も、一癖ある部下たちも、この先どうなるかわからない。では銀活の名前が消えるまでに、自分は何がしたいのか。バブル、ロスジェネ、ゆとり、さとり、様々な世代から「働き方」を問いかける。
金持ちで蒐集家のおばに育てられたアントンは十五歳で絵を描き始めた。完成した絵はおばの不興を買うが、屋敷を訪れたローベルトおじは絵の勉強を続けるよう激励する。実はこのローベルトこそ、バルカン半島の某公国を巻き込み、架空の画聖をでっちあげて世界中の美術館や蒐集家を手玉に取った天才詐欺師にして贋作画家だった。十七歳になったアントンはおじの待つ公国へ向かったが…。虚構と現実の境界を軽妙に突く傑作コミックノヴェル。
『風斬り』のフェリックスの倒したエーベルハルトは無事リリーを救出し、今まで通りの日常へと戻っていった。そして、それから三年の月日が経ち、厳しい修行を行っていたエーベルハルトは冒険者の最高位である、Sランク冒険者になっていた。 そんなある日、ギルドでワイバーン討伐の依頼を受けたエーベルハルトは何事もなく依頼を完遂。しかし、ワイバーンの行動に疑問を持ち調査を開始する。すると、調査を行っている最中に謎の男と遭遇し戦闘することにーー。 だが、お互いに誤解していたようで話をしてみると、その男は皇国三大師団の一つ特魔師団の団長ジェットと判明。その後、エーベルハルトは再会したジェットにスカウトされ特魔師団へ入ることに!?
『剣聖』へと至った冒険者イオスは、年に一度の激レアモンスター『氷の衛士ラルゴリン』や、それを狙うA級の冒険者パーティー『宵闇の光刃』の噂を聞く。 背中が弱点のラルゴリンを倒すため、背後からの攻撃が得意な斥候に転職してスキル集めや炎の武器作りを始めるイオス。そこへ新たなる強者ーー『商会』の冷酷な双子が姿を現す。 一方、いまだイオスの成り上がりに気づいていない元仲間のグレイルもまた、己の方が格上だと勘違いしたままラルゴリン戦に挑むーー Web版から2万7000字の加筆でおくる、成り上がりファンタジー第2弾!
国家転覆の危機を救った第五分隊が普段の日常業務にあたっていると、アルマという自身の名前以外の記憶を失った女騎士と遭遇する。行く当てもない彼女をひとまず第五分隊で預かることに。そんななか隣国のソーサラー王国がアスタロトに突如宣戦布告を告げる。攻め入ってきた隣国の兵士たちがアルマを見ると、皆一様に驚愕の顔に。アルマは一体何者なのか、そしてアルマの記憶が蘇るとともにセイラの隠された過去が明らかにーー。「小説家になろう」発王道バトルファンタジー第3弾!
フランス革命の只中、18世紀末のトリノで、世界周游の向こうを張って42日間の室内旅行を敢行、蟄居文学の嚆矢となったグザヴィエ・ド・メーストル「部屋をめぐる旅」--その続編「部屋をめぐる夜の遠征」、および「アオスタ市の癩病者」の小説3篇と、批評家サント゠ブーヴによる小伝を収録。 われわれは、ここに再版する興味深い発見や冒険を行なった人物よりも前に存在した旅行家たちの価値を、貶めるつもりはない。マゼラン、ドレーク、アンソン、クックといった方々は、疑いなく立派な人物である。ただ、もしわれわれの思い違いが過ぎるのでなければ、あえてこう言わねばならない、『部屋をめぐる旅』には先立つ全ての旅をはるかに上回る特別な価値があるのだ、と。 ーージョゼフ・ド・メーストル デカルトは、ナッサウ公マウリッツに仕えていたとき、同じ方法で、ただし比類ない真剣さで、軍隊生活の空白を埋めていた。〔……〕グザヴィエ・ド・メーストルもまた、不安も煩悶もなかったようで、『部屋をめぐる旅』を書きはじめた。独創的な主題であり、何でもないことについて何でも語ることができた。 ーーアナトール・フランス サヴォワ人の筆すさびがわれわれに残した不滅の小著…… ーーホルヘ・ルイス・ボルヘス 彼はそのとき住み慣れて知り切っていると信じた自分の部屋の周游旅行を志すことに依ってこの憂さを消そうと計画したのであった。これは確かによい思いつきだ。憂愁と退屈には旅行は何よりもの慰安である。それに仔細な観察に眼と心とを慣らすということは人の精神に無駄なことではない。で彼は自分の部屋を旅行し、観察し、数々の未知を発見し、これに就てのエキゾチクと云ってよいほどの驚きを記録している。彼の部屋は殆ど一つの世界である。 ーーきだみのる クサヴィエ・ド・メストルは二つの冒険譚を書いた。小説もあるが、それはまあいい。何よりも風変わりな冒険物をいうべきだろう。フランス人が文章においてとりわけたっとぶ「クラルテ」と「レジェルテ」、つまり明晰さと軽妙さとをほどよくそなえ、フランス語散文の好見本にちがいない。 だが、この名前が文学辞典にみつかるかどうか、大いにあやしい。 ーー池内紀
偽善社会をこき下ろし、ディドロに「心臓に毛が生えている」と評された、人相不明の諷刺作家フジュレ・ド・モンブロンーエロティックな妖精物語『深紅のソファー』と遊女の成り上がりの物語『修繕屋マルゴ』、奔放不羈な旅人の紀行文学『コスモポリット(世界市民)』を収録。
中学校の国語教師・檀千郷(だんちさと)は、受け持ちの女子生徒から自作の小説原稿を渡される。その小説の中では、猫を愛する奇妙な二人組・ネコジゴハンターが大暴れしていた。そして檀先生は、ある条件下で他人の明日の体験が少しだけ観えるという、不思議な力を持っていた。ネコジゴハンターとは何か。父の言葉、悲観と楽観、猫と野球……、檀先生が「サークル」に関わるにつれ、物語は加速していく。小説を読む楽しさ、面白さに満ちながら、うつむく人を明るい方へとそっと連れ出す、一大エンターテインメント長編!
子爵令嬢だけど少年のように活発な私。 おとなしく結婚するなんて絶対無理! 男のフリして騎士隊長の付き人に。 隊長は『野獣』と呼ばれるゴツい騎士 ……だけど女性に怖がられコミュ障気味!? 「女性との接しかた」の教育係まですることに!? ところが一緒に過ごすなか私にキュン!? 「男にも女にも盗られたくない!」と嫉妬心爆発! 野獣のように迫ってきて!? 大型ワンコな騎士隊長との純情体格差ラブ!
幼い頃に両親を亡くし、魔王に拾われた少年ブラッド。 彼は母親代わりの魔王から溺愛されて育った。 しかし魔王は忙しい。 そのためブラッドは、剣、魔法、治癒、支援ーーそれぞれの魔王軍最強格の四天王に育てられた。 四天王たちの厳しい教育において、「無能」と蔑まれていたブラッドは、 魔王城を飛び出し、四天王たちと絶縁して冒険者になることにした。 しかし彼は気付いていなかった。 最弱だと思っていた自分が、常識基準では、十分最強で万能だったということに。 「こいつ等はただのゴブリンじゃないのか?」 「これは正真正銘、ゴブリンキングですわ!」 そして彼は周囲から実力を認められていき、瞬く間に成り上がっていくーー。
アナベルは聖女である。 人々を癒やすための「神聖力」が減少してしまった「役立たず」だったが。 力を失ったアナベルは、教会のため、そして自らの借金のため金持ちの成り上がり貴族と結婚させられることに。 せめて思い出を作りたいと思ったアナベルは花祭りで偶然出会った聖騎士に告白する。 その思い出を胸にしたくもない結婚を受け入れたはずがーー突然教会にやってきた聖騎士ーーリュカは言う。 「アナベル嬢。どうか私と結婚してください」 「………………は?」 いきなりプロポーズされ戸惑うが、 さらに驚きの事実が判明する。 「なんで聖騎士が呪われてるんですか!?」 「これには事情がありまして……。不本意ですが呪われてしまいました」 神聖力を失った聖女は、愛の力で聖騎士の呪いを解けるのか!?
二十年前に世界を救った大聖女・ソフィア。長い眠りから目覚めた彼女は、かつての仲間たちと再会し、新しい出会いを重ねていく。ある日、ソフィアは聖騎士のルミナリエとともに、教会を出て二人暮らしをはじめることに。条件に合致する物件は、元は高名な聖騎士が住んでいたというさるお屋敷。しかし、そこには強力な悪霊が住み着き、並の聖女の浄化は受け付けないらしい。悪霊浄化と新生活のため、ソフィアとルミナリエはさっそくお屋敷へ。そこで彼女たちが出会ったのは、哀しき過去を背負ったアンデッドでー?コミカライズも絶好調!聖女さまの冒険ファンタジー、第二弾!
5年間在籍したAランクパーティを離脱し、かつての教え子たちのパーティ『クローバー』に加入した赤魔道士のユーク。 ある日、そんな彼らのもとに国選依頼(ミッション)が届く。 その内容は新発見されたダンジョンへの調査&攻略配信。きな臭さを感じつつ依頼を引き受けたユークらは、ダンジョン近郊の交易都市ドゥナへと赴く。 さっそく迷宮攻略(ダンジョンアタック)に挑むクローバー。順調に迷宮(ダンジョン)を踏破していく一行だが、深層部にある都市型の迷宮と一帯を覆う黄昏色の陽光を目にしたとき、突如ユークの身体に異変が生じる。 このダンジョンは、嫌な予感がするーー。 コミカライズも絶好調の冒険ファンタジー、第2弾!
ついに……ついに俺の『学校で引きこもろう計画』は完遂した! いや前回まで『早期退学計画』って言ってたじゃん、とかいうツッコミは横に置き、悠々自適な引きこもりライフが始まろうとしたまさにそのとき、謎の! 転校生! 現る!? それはそれとして最恐最悪の魔神さんが復活したり、刺客が放たれたり、世界の摂理を歪めた手法でレベルアップしたりと、なんかもうカオスな感じになりかけている気がしなくもないが、 今回は海だ! 水着だ! 温泉だ! それからえーっと……そう! チーム戦だ! やっぱりカオスな異世界引きこもりファンタジー、第五弾が始まるよー!(ヤケクソ
最強の魔王ヴェノムザードを倒した勇者ユージーン。 目的を果たし満足していたユージーンだが、滅び行く魔王の手により転生させられてしまう。 そして気がついたらーーはるか未来の世界で、ユリウス=フォン=カーライルという貴族の少年に転生していた! 勇者という使命から解放されたユリウスは、2度目の人生、そして学園生活を謳歌することを決意する。 だが、ユリウスは貴族でありながら魔力もなく、親には見放され、双子の弟・ガイアスからも蔑まれる落ちこぼれだったらしい。 しかし、勇者としての力を持って転生したユリウスは、魔法も剣術も全てが劣化してしまった世界で無自覚に無双してしまうことに! 馬鹿にしていたクラスメイトやガイアスの反応は変わっていきーー!! 最強勇者の学園無双物語、開幕!