2022年12月27日発売
アメリカの天才物理学者ルーカス・マルティーノは、自らが立案した極秘のK88計画の実験中に大爆発に巻き込まれ瀕死の重傷を負った。事故の起きた研究所が、連合国支配圏とソビエト社会主義国支配圏の境界近くにあったため、マルティーノはいちはやく現場に駆けつけたソビエト側の病院に収容されてしまう。そして3か月後、外交交渉の末、マルティーノは解放されることになる。だが国境線の検問所のゲートから現れたのは、卵型の金属の仮面をつけ、体のほとんどが機械で出来た、変わり果てた姿のマルティーノであった!果たして彼は本物のマルティーノなのか、それとも別人なのか、本物であれば洗脳されているのではないのか、解放したソビエトの意図とは?解放に立ち会った中央ヨーロッパ国境地区の保安責任者ショーン・ロジャーズは、様々な方法でこの人物の正体をつきとめようと試みるもののことごとく失敗に終わる。その後、新たにマルティーノの追跡調査担当者に任命されたロジャーズは、マルティーノをニューヨークに送り届け、彼を泳がせ、その行動を追跡することで正体に迫ろうとするが…。全編に緊張感をみなぎらせ、独特の抒情を漂わせつつ展開する、SF界の巨匠バドリスの代表的長編SFスパイ・スリラー。
合作のバリエーション!リレー式ミステリの傑作「畸形の天女」・競作推理・推理教室など、多彩な11作品+座談会7本を収録。希少な作品多数。
1981年、大学のキャンパスで出会った三人。永遠だった筈の友情は、雪乃の唐突な失踪により崩れてしまう。それから三十余年が経ち、彼女から届いた一通の手紙。そこに書かれていたこととは…。封印されていたあの頃が蘇り、托された想いを道標に、初老を迎えた「若者たち」が再会へと動き出す。切ないほどに純粋な約束が三人の心を繋ぎ、其々の人生を温かく包む感動作。
風間徹治は高校ラグビーの指導者として強豪ラグビー部を預かるが、自身の起こした体罰事件を端緒に挫折。その後は他校に転任。そこにも弱小ラグビー部があったものの、教育とラグビー指導への情熱を失った風間は一切関与しようとしなかった。だが、類稀なラグビーセンスの持ち主である草薙透が入部。草薙は風間に監督就任を要請した…。再びラグビー指導者としての歩みを進める風間。強豪チームから弱小チームへと環境が激変した中、風間の真の再生はなるか。
魔力のない伯爵令嬢・アリツィアは帳簿付けに夢中で社交界に一切興味なし。家族からは結婚の心配をされるが、数多の令嬢が花嫁の座を狙う公爵家の令息・ミロスワフと密かに恋愛中なのだ。そして留学から戻ったミロスワフと婚約し、幸せの絶頂…のはずが、自由奔放なエリート魔力使い・カミルに気に入られ、最愛の妹を人質に婚約破棄を迫られてしまい!?
異世界に転生し、第一王子に生まれながらも、スキルの才能に恵まれなかったフォルツ。この世界では、王族として絶対必要であるスキルが無能と判断されたことで、王位継承は絶望的だった。しかし、前世での無念から努力を誓っていた彼は、そんな境遇を気にもせず、自分に出来ることを地道に繰り返して成長していった。そしていつしか、貴族達に無用と言われたスキルの実際の能力に気づき、別格の戦闘力を手に入れる。魔術師に知られる属性ではなかったが、充分な力を発揮できる、すばらしいスキルだったのだ。王国から旅に出された日々で知り合った、天才魔女ネーフィカを仲間にしたことで、フォルツは世界でも最強クラスだと自信を深めていた。そんなフォルツにもついにチャンスが訪れ、王子として一軍を率いての、同盟国への出兵が決まった。華やかな実績があっても、王になりたいわけではない。しかし、努力で身につけたスキルを駆使することで、反乱の危機にあった同盟国を救い、姫騎士ミェーチとも関係することに。結界を守る聖女ピエタをも支えることで、フォルツの実力は人々に知られ、讃えられてゆく。かつては無能と囁かれた第一王子フォルツだったが、いよいよ、ハーレムな日々を掴み取ることに!
現在推理小説とよばれている探偵小説が、摩訶不思議な謎の提供と、一分の隙もない論理的な解明という、長篇小説の形で定着したのは、一九二〇年代から三〇年代の初期のことではなかったろうか。私がはじめてそういう傾向の探偵小説にぶつかったのは、大阪薬専の学生時代のことであった。物はA・A・ミルンの「赤い家の秘密」であった。当時神戸から大阪の学校へ汽車通学をしていた私は、神戸の古本屋で全冊見つけて揃えると、汽車の中で、教室で、講議もそっちのけにして、教師にかくれて貪り読んだ。(横溝正史「推理小説の故郷」より)
血液から希少な魔石を生み出せる特殊体質をもつ伯爵令嬢ローゼ。それに目をつけた悪辣な義母たちに非道の限りを尽くされ、気づけば余命わずかとなっていた。そんな彼女が嫁がされた相手は、天涯孤独で借金まみれの没落貴族レオ。「ぼくは君がここに来てくれて嬉しいよ」絶望に打ちのめされたローゼの心を、彼のまっすぐな優しさと献身が解きほぐしていく。そんななか、無情にも義母の魔の手が忍び寄る。だが、レオには隠された秘密があってー!?第2回Jパブ大賞大賞受賞。
作家自身が見つめ、経験した、ナチスのチェコ侵略、「プラハの春」の挫折、そして「ビロード革命」。歴史の大きな出来事についての語りはしかし奔放に、自在に逸脱し、メランコリーとグロテスクとユーモアがまじりあう中に、シュールで鮮烈なイメージが立ち上がってくるー。フラバル後期の傑作短編集。