2022年2月24日発売
「僕がこの大樹を折って見せるよ。ヒナタ」この決断にヒナタは、予想通りといったような、あたかも僕のことを昔から知っているかのような熱い視線を向ける。もちろん熱いと言ってもそれは決して鼓舞とかといったものではない。例えるなら光を求めて飛んだ蛾がその光に感電する様を期待するような。「あんたがこの大樹に干渉し得る何者かになった時、この大樹は折れる。七瀬、あんたは何者になる言うんや?」「さあね。もしかすると君の言った通り、白馬の王子様かもしれないよ」異常な父、余命宣告を受けた母、家出した兄、二人の美少女…。ある男子高生の歪んだ日常を描くYouTuberによる衝撃の初小説!
現役新聞記者だから描けたリアル検察小説。見習い女性検事が異動先の鹿児島で一悶着を起こす「ジャンブルズ」、小倉支部の万年窓際検事が組織から孤立しながら凶悪暴力団に立ち向かう「海と殺意」ほか、全四話+αの連作短編集。
「この船は呪われている、乗客は破滅を迎えるだろう」バタヴィアからオランダへ向かう帆船ザーンダム号に乗船しようとしていた名探偵サミー・ピップスと助手のアレントらに、包帯で顔を覆った怪人がそう宣言した。そして直後、男は炎に包まれて死を遂げた。しかし名探偵は罪人として護送される途上にあり、この怪事件を前になすすべもなかった。オランダへと帰国するバタヴィア総督一家らを乗せ、ザーンダム号が出航せんとしたとき、新たな凶兆が起こる。風を受けてひるがえった帆に、悪魔“トム翁”の印が黒々と浮かび上がったのだ!やがて死んだはずの包帯男が船内に跳梁し、存在しないはずの船の灯りが夜の海に出現、厳重に保管されていた極秘の積荷“愚物”が忽然と消失する。わきおこる謎また謎。だが名探偵は牢にいる。元兵士の助手アレントは、頭脳明晰な総督夫人サラとともに捜査を開始するも、鍵のかかった密室で殺人が!驚愕のSFミステリ『イヴリン嬢は七回殺される』の鬼才の第二作。海洋冒険譚と怪奇小説を組み込んだ全方位型エンタテインメント本格ミステリ!ガーディアン、フィナンシャルタイムズ、サンデータイムズほか“ベスト・ブック・オブ・ザ・イヤー”。英国推理作家協会“スチール・ダガー賞”最終候補作。英国歴史作家協会“ゴールド・クラウン賞”最終候補作。
第一話「しゃくぜん」釈放前の更生プログラムに参加した模範囚が、外出先で姿を消した。発見されるまでの「空白の30分」で何が起きたのか?第二話「甘シャリ」刑務所内で行われた運動会の翌日、集団食中毒事件が発生。これは故意の犯行なのか。炊事係の受刑者が容疑者に浮上するが…。第三話「赤犬」古い備品保管庫で原因不明の火災が起きた。火の気もなく、人の出入りもなかったはずの密室でいったいどうして?第四話「がて」窃盗の常習犯である受刑者の心の拠り所は、あるジャズシンガーとの文通。しかし、その女性は実在していなかったー。第五話「チンコロ」「また殺される」と書かれた匿名の投書が刑務所に届く。差出人は元受刑者か。そして、投書に隠された意味とは?骨太の人間ドラマ×驚愕の刑務所ミステリー。
シャルロットは七歳の雌のジャーマンシェパード。お利口だけれど、普段はのんきな元警察犬。彼女と一緒にいると、いろんな事件に遭遇する。向かいの家には隠されたもう一人がいる?偶然関わることとなったドッグスクールの不穏な噂とは?それでも、シャルロットと出会えて本当に良かった。謎に惑い、犬と暮らす喜びに満ちた、極上のコージーミステリー!
その一着を、もっと自由に!もっと楽しく!服に迷うあなたの背中をそっと押すハピネス・エンタテインメント。上野の森に佇む、夜だけオープンする謎めいた洋服屋。そこには一点モノの素敵な服が並ぶ。丹念に仕立てるのはファッションデザイナーの梓振流。ある日、アパレル販売員の五福あやめがお店を訪れた。仕事に追われてばかりの彼女だったが、振流の作るアイテムに心動かされ、退屈だった日常は変わっていく。彼に興味を抱き、同じ時を過ごす中であやめは知る。天才デザイナーの服への想い、哲学、そして隠された秘密まで…。
雪降る夜、ひとりの女が身を投げた。それがすべての始まりだった。非業の運命に翻弄されながらも、強く生きる人々を描く慟哭の長編ミステリー。夏の数日をともに過ごす三組の家族を、悲劇が襲う。最年少の五歳の少女が失踪したのだ。事件性も疑われるが、手掛かりが乏しく、行方は知れぬまま。穏やかな避暑地での日々は永遠に失われてしまったー。三組がそれぞれに秘めた複雑な家庭の事情と、長い時を経て発見された一通の告発状。絡み合った謎が氷解したとき、明らかになる真実とは?第25回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
イラク帰りの元傭兵・鹿島丈は妻の故郷・北海道で、米ソラリス社のデータセンター警備に就く。だが勤務初日、厳重なセキュリティーシステムを突いて、密室殺人が発生。道警やマスコミ、米軍属も駆け付け、現場は混乱を極める。さらに第二の密室殺人が起こってしまい…。封鎖された“クラウドの城”で、鹿島は殺人者と対峙する。IT文明の終着地で、世界を“実効支配”する“バベルの塔”データセンターの内実を描き切った大注目作!ノンストップ、ハードボイルド&本格ミステリー。壮絶にして至高、魂を揺さぶるエンタメ巨編。第25回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
心地よい風の吹く、大阪南部の海辺の町。妻子に逃げられた50オトコが元カノに拾われた先は「喫茶テンノット」。男は、店に来る顔馴染みや町の人々と、再び人生に向き直っていく。 身内を亡くしたイカナゴ漁師、離婚して愛娘と離れ離れになった友、同級生の女性とその年老いた父親との確執と和解ーー町には義理や人情が渦巻いている。
次々と現れる強力な新型ウイルスに対抗するため、この国には“繭”の仕組みができた。政府が定めた期間は外出が禁じられ、巣ごもりを強制されるのだ。しかし、皆が室内で安全に過ごすなか、外に出なければならない者もいる。警察官の水瀬アキオもその一人だ。ある日、AI搭載の猫型マシン・咲良と共に街をパトロールしていたアキオは、無許可で外に出ている犬を見つける。首輪のデータから飼い主を訪ねると、部屋では人が死んでいて…。クライシス・ノベルの名手が描く、非接触時代の「クライシス」。一人と一匹(?)が謎に迫るミステリー!
1987年、長きにわたる戒厳令が解除された台湾ー。全寮制のカトリック系男子高校に通うアハンと、転校生のバーディは、校内のブラスバンド部で出会い、次第に惹かれ合うようになる。特別な愛情に戸惑いながらも青春を謳歌する二人だったが、学校が男女共学になったことで、その微妙な関係が狂い始め…。大手書店チェーン「台湾誠品書店」で12週連続第1位(小説部門)!台湾最大ネット書店「Books.com.tw」で年間TOP100ランクイン!アジアで初めて同性婚を法制化した台湾で6万部突破、異例の大ヒットを記録した長篇小説。
公立小学校の教師になって五年目のひかりは、都内の赴任先で衝撃を受けていた。授業中に教室を出て行く今田真亜紅、不登校気味で給食だけ食べに来る佐内大河、クラス分けに抗議をする児童の母親、日本語が話せないベトナム国籍のグエン・ティ・ロン。前任者は鬱で休職中。さらに同僚からは「多くのことを見ないようにしてください」と言われてしまう。持ち前の負けん気に火がついたひかりは、前向きな性格と行動力で、児童ひとりひとりに向き合おうとするが…。あたたかな涙あふれる傑作長編。
ハイジャンプで全国高校1位になった良。大学進学を機に新しい世界に挑む。ベトナムのフォン、アメリカのソフィアとともに『資本論』を学ぼうと世界に発信する。あらわになる世界資本主義の矛盾にSNS時代の彼らはどこまでも若く、鋭い。
タゴールは1920年にアメリカを訪問した折、富への飽くなき追及が人間性を蝕んでいく様を見て心を痛めた。その反動から、幼な子の世界の真理を「ボラナト(シヴァ神の別名)」の無欲でこだわりのない姿に託し、詩集「幼な子ボラナト」は書き上げられた。タゴールはすでに百年前から、物質文明の果てなき欲望が、自然破壊や人間性喪失をもたらすことになると警鐘を鳴らしていたのである。