2022年6月9日発売
“破倫無道の挙”か、冤罪かーいよいよ結審の時来る。(幸徳秋水が担当弁護士にあてた陳弁書には)無政府主義にたいする誤解への弁駁と、検事の取り調べに不法とが述べてある。この陳弁書にあらわれたところによれば、幸徳は決してこのような無謀を、あえてする男ではない。それは法廷での事実と符号している。社会主義者、無政府主義者たちが明治天皇の暗殺を企てたとされる、いわゆる幸徳事件。当初は「破倫無道の挙」「常識を失した凶暴な沙汰」と断じていた石川啄木は、事件の記録を読むうちに、検察による事実の歪曲に愕然とする。一方、ことを早く片づけたい検察は、逮捕後異例のスピードで予審を終え、嫌疑のかかる26人全員に極刑を求刑してしまうのだったー。事件関係者について綿密に調べ上げ、その真の姿に肉薄した渾身のノンフィクションの完結編。
室生犀星“初の小説”を含む自伝的作品集 婚外子として生まれ、生後間もなく養子に出された〈私〉。いつもやさしい義姉を除いて、周囲に理解してくれる人はおらず、小学校では喧嘩を繰り返して先生からも目をつけられていた。 そんななか、実の父親が亡くなり、母が行方不明になってしまう。ますます自棄になって乱暴を繰り返していた〈私〉は、川のなかでその後の人生を変えるあるものを見つける。それは、苔むした地蔵だったーー。 自伝的色彩の濃い、著者初の小説「幼年時代」をはじめ、「性に目覚める頃」「或る少女の死まで」を加えた“幼年時代三部作”を中心に、繰り返し映画やテレビドラマになった「あにいもうと」を加えた全4篇を収録。
全能の神ゼウスの妃で、結婚や出産を司る女神のジュノが守護する“6月”--ヨーロッパでは、この月に結婚すると幸せが永遠に続くと言われています。そんなすてきな季節にふさわしい、魅惑のウエディング・ストーリー3篇を収録したアンソロジーをお贈りします。
彼との日々は夢のように、 海の色に溶けていった。 「ぼくはアレクサンダー・ディミトリウ。 きみがバルコニーから見ているのには気づいていたよ」 キャサリンは慌てて否定しながら、頬が火照るのを感じていた。 彼は幼い娘が邪魔をしたお詫びにと、キャサリンを食事に誘った。 亡き母の故郷にほど近いギリシアの村で独り静養しているけれど、 わたしがここにいるのは既婚者とデートするためではないわ! しかし、彼が妻を亡くしていると知り、互いに医師であることから ともに感染症の対応にあたるうち、二人の距離は急速に近づいた。 つかのまの恋でいい。私は幸せになれない人間だから……。 そう自分に言い聞かせ、亡き妻を愛する彼にキャサリンは全てを捧げた。 人目を忍んで、めくるめく情熱に身をまかせる二人。やがてアレクサンダーの娘や祖母も含めた家族ぐるみの付き合いが始まり、愛のぬくもりを知るキャサリンでしたが、アレクサンダーの亡き妻の幻影に悩み続けます。そしてついに、せつない片恋は砕け散って……。
1年前に家族を事故で失い、天涯孤独の身となったフェイは、抜け殻のような心を抱えたまま、身を粉にして働いてきた。ある嵐の日、自暴自棄になって馬を走らせた彼女は落馬して、痛みと朦朧とする意識の中で最期を覚悟する。そのときだった、たくましい腕に抱き起こされたのは。フェイが目を開けるとそこには、隣人チェイスの心配顔があった。幼い頃から恋い焦がれてきた人。なぜ今になつて私の構うの?そんなフェイの心中を知ってか知らずか、チェイスは彼女を家まで運ぶと、予想外の驚くべき提案をした。「君の家業はすべて僕が買い取る。代わりに僕の妻にならないか?」
明るい姉の陰に隠れて育った不器量で世間知らずのリサは、 15歳のときから姉の夫の兄ジョエルに軽蔑されてきた。 それは年頃のちょっとした出来心が原因だったが、 リサは彼にふしだらというレッテルを貼られ、心に傷を負った。 以来、恥ずかしさと悔しさから彼とは会わないようにしてきたのに……。 8年後、姉夫婦が亡くなり、ジョエルとリサの2人が 遺された子たちの後見人に指名されたことで、再会を余儀なくされる。 またあの軽蔑のまなざしを向けられるなんて耐えられない! 怯えるリサに、冷たい瞳のジョエルは驚くべきことを言い放った。 「子どもたちとともにいたければ、ぼくと結婚するしかない」 リサは15歳のときに受けた心の傷がもとで、男性とのキスさえ怖がるようになっていきました。当然、純潔の身でジョエルとの結婚生活に突入しますが、厳しい兄のような存在の彼からは経験豊富な女と誤解されたままで……。新妻リサを待ち受ける運命やいかに?
やっとこれは恋だと気づいたけれど、 そんなことは、彼に言えない……。 父の仕事を手伝いながら、のどかで単調な毎日を送るビアトリス。 ある日突然、父が心臓発作で倒れて動転するが、 幸い、近くにいた医師オリバーのおかげで一命をとりとめた。 オリバーとは先日、日の出を見にのぼった丘で偶然出逢い、 長身で感じのいい彼が著名な医師だということを、のちに知った。 父の入院から留守宅のことまで世話をしてくれるオリバーに、 彼女はいつしか特別な気持ちを抱くようになっていく。 そして、元ボーイフレンドからの迷惑行為について相談すると、 オリバーは親切に、ぼくと婚約したふりをすればいいと提案してくれた。 でも切ない……だって、彼はもうすぐ別の誰かと結婚してしまうのだから。 穏やかな作風でありながら、確かな観察力にもとづいた人物像を描いて人気のベティ・ニールズ。本作もまた、身のまわりにいそうな主人公の、初々しく微笑ましいラブストーリーです。邦題にもなっている“日の出の見える丘”を思い浮かべながらお楽しみください。
アシュリンは知人に頼まれ、公衆の面前である男性に近づき、恋人のように振る舞ったが、そのせいで彼の評判は地に落ちた。4年後、アシュリンは思わぬ再会を果たす。親友の会社のボスがその男性、気鋭の投資家ザックだったのだ!親友に代わって彼に荷物を届けた彼女は、そのままパーティに連れだされ、誘惑されて熱いキスを交わしてしまう。だが直後、彼は豹変し、彼女を冷たく突き放して睨みつけた。「君の顔を忘れたことはない。4年前の代償を払ってもらおう」いったいどうやって?アシュリンは不安におののいた。
結婚嫌いの公爵の愛人に甘んじる。 生まれてくる子のために。 貧しく美人でもないジェナは長年働く王宮で疎外感に悩んでいた。 公爵セバスチャンが彼女に興味を持ち、近づいてくるまでは。 彼は国王とも親しいらしい。つまりは権力者だ。 しかしセバスチャンの誘惑を愛と勘違いし、純潔を捧げた直後、 国王にその関係を知られて、ジェナは王宮から追放されてしまう。 失意の中、実家に戻り、ベッドで眠りについていたときだった。 突然、闇の中からセバスチャンが現れ、ジェナは飛び起きた。 どういう手段を使ったのか、公爵は彼女の妊娠を知っていた。 そして、ジェナは夜明けが来る前に彼の屋敷へ連れ去られた……。 マルセラ・ベルの邦訳デビュー作をご紹介します。百合の紋章で知られる公爵ヒーローと刹那的に求め合った結果、小さな命を宿したヒロイン。彼女は公爵家で手厚く保護されますが、ヒーローに結婚の意思はありません。ヒロインの一途な愛と、赤ん坊の運命は?
彼とヴェネツィアの舞踏会に? ああ、私もシンデレラになれたら……。 なんてすてきな人なのかしら! PR会社で働くビーは 来社した長身で逞しくハンサムな男性に妙な頼み事をされた。 その夜開かれる慈善イベントに同行してくれないかというのだ。 彼が最上客アレス・リカイオスと知って断れず承諾した行き先は なんとヴェネツィアの舞踏会。初めてのキスに酔わされた帰途、 ビーは半ば誘拐される形で彼のプライベート機に連れこまれる。 ギリシアのアレスの邸で“緊急事態”が発生したというのだ。 彼の邸に入ると、生後間もない赤ん坊が泣きわめいていた。 「1カ月だけ、ベビーシッターの代わりを務めてくれないか」 3歳で両親を失い、養父母の家で邪魔者扱いされて育った“醜いあひるの子”のヒロイン。恋愛に無縁だった彼女はベビーシッターに雇われた富豪の邸で初めての恋を知り、彼に純潔を捧げ、永遠の恋人になりたいと切に願いますが、彼は愛も結婚も信じぬ主義で……。
5日間で、5億ドルーー それが富豪のベッドに入る代償だった! モデルとして華やかに活躍するシャーメインは、 その日、ドゥバル王国のプリンス・アリの目を意識していた。 美しき獲物を追う、鋭く黒い傲慢な、世界的プレイボーイの瞳。 予想どおりアリは、その夜のディナーに彼女を招待したがーー。 魅力的な富豪の男性は大嫌い。鼻を明かしてやるわ。 シャーメインは彼の誘いを言下に断った。 1年後、チャリティオークションに参加したシャーメインは、 自分とのディナーを高額で競り落とす男性を待ち望んでいた。 5億ドルもの大金でその権利を落札したのは、あのアリだった! 情熱的な作風で読者を魅了し続けるHQロマンスの大スター作家、ミランダ・リー。得意のゴージャスな富豪ヒーローとの熱い恋物語をお楽しみください。
愛しても、愛しても、未来はない。 彼は結婚しないと誓っているのだから。 ギャビーは16歳のとき、祖父によって借金の形に売られ、 男たちの餌食になりかけたところを間一髪で逃れ、男性恐怖症に陥った。 有罪となった祖父が8年後の今、不服申し立てをするという噂を聞き、 ギャビーは当時祖父を弁護したニックを訪ねることにした。 シカゴで最も優秀な彼がまた担当するのか確かめるだけのつもりが、 事態は予想もしなかった方向へと転がりだす。 獅子のような体格のニックが、突然自宅へ来た彼女に言った。「遅刻だぞ」 どうやらギャビーを住み込みスタッフの志望者と思い込んでいるようだ。 今から面接をすると言われ、言葉を失うギャビーだったが、 あれよあれよと彼のもとで働くことになるーーしかも、ひとつ屋根の下で。 ニックの下で働き始めたギャビーはやがて、彼も過去のつらい経験に囚われていることを知ります。彼を慰めてあげたいと思うようになり、気づけば彼を愛し始めていて……。女性に刹那的な関係しか求めないニックと男性恐怖症のギャビーの、予測不能な恋物語!
また会うことが許されるの? あなたと、そして……私の赤ちゃんに。 保育士のベラのもとにある日、大富豪ブレイクが訪ねてきた。 高級なスーツに身を包み、ベラの産んだ赤ん坊を抱いてーー。 9カ月前、ベラは代理母出産したのち、黙って彼のもとを去った。 子供の成長をともに見守る約束だったのに、出産後、 彼の妻から二度と現れないでと冷たく突き放されたから。 何も知らないブレイクは、瞳に非難の色をたたえて言った。 「妻と離婚した。さしあたってきみに、息子の面倒を見てほしい」 わたしがこの子のナニーに? もちろん、引き受けたくてたまらない。 ブレイクの育てる子供は、本当はわたしの血を分けた実の子ーー。 でも、それは絶対に知られてはならない秘密。いったいどうしたら……。 感動の涙が止まらない、大人気の代理出産がテーマの物語! 輝かしい受賞歴を誇るC・シールドが描きます。心優しく貧しいベラは運命のいたずらで、一度は手放した息子のナニーに。やがてベラが本当の母親と知った富豪に愛なき結婚を申し込まれますが……?