2022年6月発売
都会に消費され、導かれるようにたどり着いた湯布院の宿。美しい二人の女と湯けむりに幻惑され、男は、日常との境界を見失っていくー百日滞在してしまったら、君は綺麗さっぱりこの世界から溶けてなくなってしまいますからね。朗読劇と小説が溶け合い、響き合い、不思議の世界に迷い込む。燃え殻が誘うミステリアスな物語。朗読劇DVD+書き下ろし原作小説、完全限定版!
「人は空想なんかしない。連想するんだ」と雨の日の名探偵。(『奏雨』)。俺はマークスマン。弾は当たる。そして時々消える。(『狙撃』)。「や…ヤブヘバス!」と父が慌てふためき、飛び降りは続く。(『落下』)。積乱雲って呼ばれた女の子。厄介な石にも優しくしたい男の子。(『雷撃』)。俺がお前になって、お前はどこにいったんだよ?(『代替』)。わんわんストーミー・エヴリデイが素敵な散歩を招くまで。(『春嵐』)。妻の海の邪悪な豚が俺の息子をさらいにやってくる。(『縁起』)。
泣いてるのはたぶん、自分の無力さに対してだと思う、わかんないけど。海辺のちいさな部屋で。もう二度と訪れることはないかもしれない東京で。延々と改装工事が続く横浜駅の地下通路で。そして、タイの洞窟にサッカー少年たちが閉じ込められていたあの夏、きみは部屋から姿を消した。どうしようもなくこんがらがっていく世界を生きるわたしたちの姿を演劇界の気鋭が描きだす、15年ぶり待望の第二小説集。
ミステリ界の超新星が仕掛ける、五つの罠。日常に潜む小さな“歪み〞を、あなたは見抜くことができるか。子供が四人しかいない島で、僕らは「YouTuber」になることにした。でも、ある事件を境に島のひとたちがよそよそしくなっていって……(「#拡散希望」)。日本の〈いま〉とミステリが禁断の融合! 緻密で大胆な構成と容赦ない「どんでん返し」の波状攻撃に瞠目せよ。日本推理作家協会賞受賞作を含む、痺れる五篇。
狂気とは、怪奇とは、そして、それを語るということとはーー。恐怖の概念を揺さぶる、唯一無二の「怪談小説」集。深夜の高速道路で語られる百物語、学校を彷徨う伝説の幽霊、子連れでの散歩中に遭遇した呪いの物件……。古今語り継がれる「怪談」の数々を、ホラー界の旗手が戦慄のアップデート。精緻な技巧と無慈悲な想像力が邂逅を果たすとき、そこに真の〈恐怖〉が現出するーー。「小説」ならではの企みに満ちた、著者真髄特濃短編集。
これが、僕と君が共にある、唯一の手段ーー。生きる理の違う美しき人魚と半人前な青年が築いた愛と幸せの形とは。若隠居した大店の跡取り息子・孫一郎は、人魚のおたつに求婚されてしまう。諦めさせるためにも、おたつにねだられるままに御伽話を語る孫一郎だったが、次第にその心は変化していく。しかし、人魚と人間がともに暮らせる未来があるわけでもなく……。「これ以上のラストはない」と選考委員を唸らせた驚嘆の受賞作。
ブレグジットからパンデミックへ。苦悩深まる世界の新たな希望を描く最終巻。私が自分の人生の主人公だとしても、私たちはこの星で生きる資格がない。感染症の流行が始まった英国で、環境破壊に心を痛める少女が海岸で出会ったのは、母の形見の丸い石を届ける途中の男とその相棒。少女も家族と一緒に彼らの旅に加わりーーEU離脱をきっかけに始まった不協和音だらけの交響曲、祈りに満ちた最終楽章。
彼らの敵は人ではない。--ある種の神だ。 戦闘サイボーグ部隊vs.高次元生命体が憑依した超人。 第6回創元SF短編賞受賞作にはじまるアクションSF連作長編。 〈裏世界ピクニック〉の著者、もう一つの代表作! その男は北京の空高く浮かび、ステップを踏んだ。力強く、優美な、狂気を秘めた舞い。そのたびに戦闘機は墜とされ、地上には深々と炎が刻印される。かくしてユーラシアは滅び去ろうとしていた。--西暦2030年、砂に埋もれ廃墟と化した北京へ、米軍の戦争サイボーグ部隊の精鋭12名が突入した。この神のごとき超人、エフゲニー・ウルマノフを倒すために。 第6回創元SF短編賞受賞作収録。『裏世界ピクニック』の著者による本格的アクションSF、ついに書籍化。
遷都した福原の平清盛邸で、怪事件が続発! 清盛の異母弟・平頼盛は、 清盛とその三人の息子から 源頼朝との内通を疑われながらも、 守護刀紛失や変死事件の謎に挑むが!? 第4回細谷正充賞受賞作『蝶として死す』に続く、長編歴史ミステリ! 1180年。平清盛は、高倉上皇や平家一門の反対を押し切ってまで、京都から福原への遷都を強行する。清盛の息子たち、宗盛・知盛・重衡は父親に還都の説得と、富士川の戦いでの大敗を報告するため、清盛邸を訪問するが、それを機に邸で怪事件が続発してしまう。清盛の寝室から平家の守護刀が消え、平家にとって不吉な夢を喧伝していた青侍が切断された屍で発見され、「怪鳥を目撃した」という物の怪騒ぎが起きる。清盛の異母弟・平頼盛は、異母兄に捕縛を命令されていた青侍を取り逃した失敗を取り戻すため、甥たちから源頼朝との内通を疑われる中、事件解決に乗り出すが……。話題作『蝶として死す』に続く、長編歴史ミステリ!
それ(エイリアン)は 感染・変異する── サイバーパンクの巨匠ウィリアム・ギブスンが描く 『エイリアン2』のその後── 未映像化脚本をもとにサイバーパンクの女王パット・カディガンが完全小説化! リドリー・スコットが作り上げた世界をジェームズ・キャメロンがさらに発展させ世界的大ヒットとなった『エイリアン2』。 その続編の脚本家として指名されたのが、当時“サイバーパンク”でSF小説界に革新をもたらしたウィリアム・ギブスン。 しかし、その脚本は様々な事情によって映像化されることはなかった。 「エイリアン2」で生き残ったリプリー、ヒックス、ニュート、ビショップーー4人の運命をギブスンはどう描いたのか? 約30年の時を経て、ギブスン版『エイリアン3』の全貌があきらかとなる。 〈あらすじ〉 惑星LV426から帰還の途にあった宇宙船〈スラコ〉は、軍拡競争を続ける国家・革新人民連合(UPP)の支配するセクターに入る。UPPの部隊が〈スラコ〉に乗りこんだところ、ハイパースリープ・カプセル内にリプリー、ニュート、負傷したヒックスを発見。一体のフェイスハガーが襲ってくるが、部隊は危機一髪で脱出し、ビショップの残骸を奪い去る。〈スラコ〉は宇宙ステーション〈アンカーポイント〉に向かう。そこは小さな月ほどもある巨大な軍事施設で、船は兵器課の管理下に置かれる。植民地海兵隊と科学者のチームが〈スラコ〉に乗りこんだとき、二体のゼノモーフが出現。たちまち戦闘となり、リプリーの睡眠カプセルが激しく損傷する。やがてヒックスとニュートが覚醒。ヒックスは〈アンカーポイント〉で実施されている実験に関する噂を耳にする。ゼノモーフのクローンを作り、遺伝子操作をしているというのだ。その実験は恐るべきハイブリッドを、ひいてはクイーンをも産み出すかもしれない……。
韓国における女性作家の草分け 朴景利による大河小説『土地』第五部始動! 韓国の国民的大河小説であり、たびたびドラマ化もされている朴景利作『土地』は、朝鮮半島・日本・旧満州の近代史を経糸に、その時代に翻弄される様々な人々の日常から生まれる愛と恋・葛藤・悲しみ・喜び・苦難を横糸に織り成す、全五部・20巻の壮大なタペストリーです。 今回の16巻から始まる第五部では、1940年から1945年まで、朝鮮が日本の敗戦により植民地支配から解放されるまでの日々が描かれていきます。 16巻 あらすじ 同郷の友であり同志であった寛洙が牡丹江で病死したことで、吉祥は自分の生き方を見つめ直す。 主治医だった朴医師の死に衝撃を受けた西姫は、心の奥底に秘めていた思いに気づく。二人は互いの存在が束縛であったことを初めて認め合う。寛洙の死は家族を再会させ、新たな絆をもたらした。 還国は家庭を持ち新進気鋭の画家となり、李家に戸籍を移した良絃は女医専に学んでいる。西姫は允国と良絃について意外なことを言い出す。 日本は日中戦争の泥沼から抜け出せず、物資が不足して生活は不便になるばかりだ。朝鮮語の言論は弾圧され、志願兵、創氏改名など新たな制度で朝鮮の人々はますます生きづらくなっている。 第五部 第一篇 魂魄の帰郷 一章 新京の月 二章 踊るコウモリたち 三章 蟾津江の岸辺で 四章 モンチの夢 五章 観音菩薩像 訳注 訳者解説