2022年6月発売
「人は空想なんかしない。連想するんだ」と雨の日の名探偵。(『奏雨』)。俺はマークスマン。弾は当たる。そして時々消える。(『狙撃』)。「や…ヤブヘバス!」と父が慌てふためき、飛び降りは続く。(『落下』)。積乱雲って呼ばれた女の子。厄介な石にも優しくしたい男の子。(『雷撃』)。俺がお前になって、お前はどこにいったんだよ?(『代替』)。わんわんストーミー・エヴリデイが素敵な散歩を招くまで。(『春嵐』)。妻の海の邪悪な豚が俺の息子をさらいにやってくる。(『縁起』)。
バンコクでほんとうに革命が起きる、それがブロッコリー・レボリューションという通称で呼ばれるようになったのだった、とかだったらいいのに。第35回三島由紀夫賞受賞作。演劇界の気衛が描く、この世界を生きるわたしたちの姿。15年ぶり待望の第二小説集。
ミステリ界の超新星が仕掛ける、五つの罠。日常に潜む小さな“歪み〞を、あなたは見抜くことができるか。子供が四人しかいない島で、僕らは「YouTuber」になることにした。でも、ある事件を境に島のひとたちがよそよそしくなっていって……(「#拡散希望」)。日本の〈いま〉とミステリが禁断の融合! 緻密で大胆な構成と容赦ない「どんでん返し」の波状攻撃に瞠目せよ。日本推理作家協会賞受賞作を含む、痺れる五篇。
深夜の高速道路で始まる怪談会、子連れで散歩中に遭遇した呪いの物件、夕暮れの学校を彷徨う幽霊、断筆した先輩作家から預かった、語ってはいけない小説…。古今紡がれてきた「怪談」の数々を、ホラーとミステリ両界の旗手が、更なる戦慄へと塗り替える。精緻な技巧と無慈悲な想像力が現出させる、真なる恐怖を見よ!「小説」ならではの企みに満ちた、著者真髄の七篇。
若隠居した大店の跡取り息子・孫一郎は、人魚のおたつに求婚されてしまう。諦めさせるためにも、おたつにねだられるままに御伽話を語る孫一郎だったが、次第にその心は変化していく。しかし、人魚と人間がともに暮らせる未来があるわけでもなく…。生きる理の違う美しき人魚と、半人前な青年が築いた愛と幸せの形。日本ファンタジーノベル大賞2021大賞受賞作。
イギリス南部ブライトンに暮らす少女サシャは、環境破壊や貧困問題に憤概しながら、問題行動を繰り返す弟ロバートに日々手を焼いている。サシャはある日、母の形見の丸い石を東部サフォークに住む元の持ち主に返す旅の途中というアートと、一緒にブログを書いているシャーロットに出会った。二人は姉弟の母グレースと意気投合し、ロバートはシャーロットに一目ぼれ。家族三人はアートたちの旅に同行することになった。一方、石の元の持ち主で百歳を超える老人ダニエルは、ベッドで夢を見ている。戦時中、ドイツ系ユダヤ人として敵性外国人と見なされ収容所に入れられた記憶、そしてフランスで行方を絶った妹のことーEU離脱による分断を描くことから始まった四部作の、パンデミック下で書かれた最終巻。
彼らの敵は人ではない。--ある種の神だ。 戦闘サイボーグ部隊vs.高次元生命体が憑依した超人。 第6回創元SF短編賞受賞作にはじまるアクションSF連作長編。 〈裏世界ピクニック〉の著者、もう一つの代表作! その男は北京の空高く浮かび、ステップを踏んだ。力強く、優美な、狂気を秘めた舞い。そのたびに戦闘機は墜とされ、地上には深々と炎が刻印される。かくしてユーラシアは滅び去ろうとしていた。--西暦2030年、砂に埋もれ廃墟と化した北京へ、米軍の戦争サイボーグ部隊の精鋭12名が突入した。この神のごとき超人、エフゲニー・ウルマノフを倒すために。 第6回創元SF短編賞受賞作収録。『裏世界ピクニック』の著者による本格的アクションSF、ついに書籍化。
遷都した福原の平清盛邸で、怪事件が続発! 清盛の異母弟・平頼盛は、 清盛とその三人の息子から 源頼朝との内通を疑われながらも、 守護刀紛失や変死事件の謎に挑むが!? 第4回細谷正充賞受賞作『蝶として死す』に続く、長編歴史ミステリ! 1180年。平清盛は、高倉上皇や平家一門の反対を押し切ってまで、京都から福原への遷都を強行する。清盛の息子たち、宗盛・知盛・重衡は父親に還都の説得と、富士川の戦いでの大敗を報告するため、清盛邸を訪問するが、それを機に邸で怪事件が続発してしまう。清盛の寝室から平家の守護刀が消え、平家にとって不吉な夢を喧伝していた青侍が切断された屍で発見され、「怪鳥を目撃した」という物の怪騒ぎが起きる。清盛の異母弟・平頼盛は、異母兄に捕縛を命令されていた青侍を取り逃した失敗を取り戻すため、甥たちから源頼朝との内通を疑われる中、事件解決に乗り出すが……。話題作『蝶として死す』に続く、長編歴史ミステリ!
リドリー・スコットが作り上げた世界をジェームズ・キャメロンがさらに発展させ世界的大ヒットとなった『エイリアン2』。その続編の脚本家として指名されたのが、当時“サイバーパンク”でSF小説界に革新をもたらしたウィリアム・ギブスン。しかし、その脚本は様々な事情によって映像化されることはなかった。『エイリアン2』で生き残ったリプリー、ヒックス、ニュート、ビショップー4人の運命をギブスンはどう描いたのか?約30年の時を経て、ギブスン版『エイリアン3』の全貌があきらかとなる。
韓国における女性作家の草分け 朴景利による大河小説『土地』第五部始動! 韓国の国民的大河小説であり、たびたびドラマ化もされている朴景利作『土地』は、朝鮮半島・日本・旧満州の近代史を経糸に、その時代に翻弄される様々な人々の日常から生まれる愛と恋・葛藤・悲しみ・喜び・苦難を横糸に織り成す、全五部・20巻の壮大なタペストリーです。 今回の16巻から始まる第五部では、1940年から1945年まで、朝鮮が日本の敗戦により植民地支配から解放されるまでの日々が描かれていきます。 16巻 あらすじ 同郷の友であり同志であった寛洙が牡丹江で病死したことで、吉祥は自分の生き方を見つめ直す。 主治医だった朴医師の死に衝撃を受けた西姫は、心の奥底に秘めていた思いに気づく。二人は互いの存在が束縛であったことを初めて認め合う。寛洙の死は家族を再会させ、新たな絆をもたらした。 還国は家庭を持ち新進気鋭の画家となり、李家に戸籍を移した良絃は女医専に学んでいる。西姫は允国と良絃について意外なことを言い出す。 日本は日中戦争の泥沼から抜け出せず、物資が不足して生活は不便になるばかりだ。朝鮮語の言論は弾圧され、志願兵、創氏改名など新たな制度で朝鮮の人々はますます生きづらくなっている。 第五部 第一篇 魂魄の帰郷 一章 新京の月 二章 踊るコウモリたち 三章 蟾津江の岸辺で 四章 モンチの夢 五章 観音菩薩像 訳注 訳者解説