2022年9月21日発売
思春期の息子、碧人が笑わなくなって三か月。接し方に悩む「ほぼ専業主婦」の舞は、母としてできることを探し、もがいていく。かつて同室に入院していた、トーウンさんの言葉を思い出しながらー。子どもの心は、大人よりも実は複雑。笑顔を取り戻す手がかりは、いまだ世に知られない『ばら』の物語。繊細な感性で孤独に寄り添う小説。
五女・皐月との出会いは、同時に十一人の家族との出会いでもあった。昭和の時代、決して裕福ではない家庭で生まれた彼女たちは、それぞれが波乱に満ちた人生を送ることになるー。
……一緒に死んでくれるよね? ……うん、一緒に死ぬよ。 コロナ禍で推しアイドルに会えなくなった氷織が落ちていった沼は、推しアイドルの〈なりきり〉とのメッセージ交歓だった。 顔を見たこともない相手への恋ーー。それがすべての悲劇の始まりだった。 『みんな蛍を殺したかった』に続く、「黒歴史シリーズ」の第二弾
19歳のハロルドは、79歳のモードを愛してしまった。 孤独な青年は愛することの素晴らしさを知る。 40年前、この芝居を見て、私は号泣した。 黒柳徹子 自殺を演じるのが趣味という19歳の青年ハロルド。 規則に縛られることを嫌い、ひたすら自由に生きる79歳の女性モード。 60歳の年齢差がある二人を結びつけたのは、縁もゆかりもない他人の葬式だった。 しだいにハロルドは天衣無縫に行動するモードに惹かれていくーー特異なユーモア感覚で哀しい現実を描き、高く評価される映画の小説化 原題:Harold and Maude
20世紀イタリアの「最も美しい声」ともいわれる作家、ナタリーア・ギンズブルグ。その人生をたどり現前させる珠玉の37篇で編まれた決定版選集。初公開の記事・ノンフィクションも収める。 屈託なく闊歩する女優さながらの女性、内気でひっこみ思案の女性、どんな女性でも時おり暗い井戸に落ちることがある。その傍らには、相手の目を見られず、内面が崩壊した、でも放っておけない男たち……。17歳のデビュー作から、少し悪意のある子どもの視線で語るような文体は「従来にない言語感覚」と評される。 不器用で孤独で、ことばが一種の「魔法」であった子ども時代。ファシズムにもナチスにも抗って活動したレオーネとの結婚と流刑地での暮らしと夫の獄死、革命が夢であった時間から、社会が反転する戦後の渦の中へ。パヴェーゼやカルヴィーノと働いた出版社での仕事。生活の現場や工場のルポルタージュ。やがて長男カルロは稀代の歴史家になった。 人生は勝手に進み、人はそれを眺めるしかない。そして運命はときに不意打ちをする。「フェミニズムは嫌い」と表明しながら、ナタリーアは共闘し、悲痛を生きのびる多くの女性たちの物語を書き続けた。 編者と訳者による本格的作家論・解説を付す。 I 物語 不在 九月 子どもたち ジュリエッタ 裏切り 帰宅 海辺の家 元帥 わたしの夫 ドイツ軍のエッラ通過 娘たち 冒険の日々 荷馬車に乗って 母親 日曜日 II 記憶とクロニクル 思い出 アブルッツォの冬 ある村の年代記 農民 破れ靴 夏 マテーラの空をカラスが飛ぶ 南の女性たち 子ども時代 女性について アッルミニウム社の工場では百年まえの生活 身障者 フェッリエーリ社訪問 家 恐怖 怠慢 私の精神分析 子ども時代 白い口ひげ パッリダッシの月 パッラマッリオ街 やさしい花 編者解説──ひとつの声の変遷 ドメーニコ・スカルパ 訳者解説 望月紀子