2022年9月7日発売
私はもう大人で、30歳も超えて、それでもまだこの人の子だ。ゆるゆる静かに衰えていくだけのこの人の娘だ。30歳の琴美は東京で派遣社員として働いている。そんな日々に一筋の光が。それは偶然、路上ライブで出会ったアイドルの『ゆな』だった。ライブへ通い、仲間もでき、彼女への没頭が、ゆるく過ごしていた琴美を変えていく。しかし、父親が倒れ、介護が必要になったため、札幌へ戻ることを決意する。交通事故で5年前に母親は他界、妹は結婚し、アメリカへ。初めての二人きりの父子生活で、元塾講師の父親はいつだって正しく、その変わらない「正しさ」は時折、耐えがたいほどに憎らしい一方で、日に日に不自由になっていく父の体。それを目の当たりにした琴美は、ますます『ゆな』を追い求めていく…。閉鎖的な環境、明るい展望も見えない中、生き続けるためのよすがを求めて懸命にもがく姿を描き切った、著者の新境地。
植松英美は大企業・山藤グループ総帥の南郷英雄が実の父親と知らされる。英雄は何者かに射殺されていた。母の秋子が英雄と知り合ったきっかけや、なぜ一人で英美を産もうと決意したのか、英美は英雄の秘められた半生をたどり始めるがー。
食べることそのものに嫌悪を覚えている女子高生・三橋唯。「食べること」と「人のつながり」はあまりに分かちがたく、孤独に自分を否定するしかなかった唯が、はじめて居場所を見つけたのは、食べ物の臭いが一切しない「吸血鬼の館」だったー。みんなが口をそろえて「幸せだ」という行為を幸せと思えず、ひとり孤独に苦しんできた少女の成長を描く青春小説。
子供たちからのS.O.Sが聞こえる。ストリートに生きる日系ブラジル人の少年。介護に追い詰められるヤングケアラーの少女。不器用な、「見えない存在」である彼らを、今日も見守る大人たちがいる。
四百年後、太陽が大爆発を起こし、地球は滅亡するー生き延びるには、太陽系を脱出するしかない。人類は、一万基以上の巨大な“地球エンジン”を設置、地球そのものを宇宙船として、はるか四・三光年の彼方へ旅立つことを決意する…。
突然空に現れた宇宙船。次々地球に降り立った神は、みすぼらしい姿でこう言った。「わしらは神じゃ。この世界を創造した労に報いると思って、食べものを少し分けてくれんかのう」。神は老後を地球で暮らすことを望んでいた。
高校卒業から二十数年。41歳の誕生日を迎えた朝、バレーボール部の仲間「ガンプ君」からメッセージが届く。「41」という数字の美しさを讃えたあとに「500万ドルのストックオプションをプレゼントする」と書かれた謎のメールは他の部員たちの誕生日にも届いていたものだった。真偽もガンプ君の消息も不明のまま「不惑」を迎えた元男子高校生たちは、再会を果たす。「そろそろ隠居かな」と言いつつ、まだ諦めきれない私たち。人生をやり直すのに「遅い」なんてことはない。家庭も仕事も諦めたわけじゃない。それにしても40代。「不惑」を過ぎても迷いっぱなし。
亡き父親の正体は大怪盗だったー!?長男の「ぼく」は、傷ついた弟妹と愛する乳母のため二代目怪盗フラヌールを襲名。持ち主にお宝を戻す“返却活動”を開始する。次なる標的は、天才研究者が集う海底大学。忍びこめたかと思いきや、初代怪盗フラヌールを唯一捕らえたベテラン刑事と、新世代の名探偵が立ちはだかり、不可能犯罪まで発生!二代目怪盗フラヌールは、数多の謎を解き明かし、任務を完遂できるのか!?衝撃の怪盗ミステリー、ここに開幕!
世に蔓延する感染症。アルバイト店員ミチルの収入は激減し転居を余儀なくされる。そんなミチルを温かく迎えてくれたのは、40歳以上独身女性限定のシェアハウス「若葉荘」の人々だった。訳ありな女性達が迷いながらもたくましく生きる様を見て、ミチルは自分の幸せを他の誰でもない自分で叶える術を身につけていく。迷える女性に読んで欲しい珠玉の物語。
引きこもりの日々から突然、たった一人の家族である母を亡くした坂本曜。社会生活に無知な彼がとったその後の行動、そして流転の日々-人々のつながりと家族の再生を描いた連作短篇集。
荒ぶる魂を抱き、戦国の世を流星のごとく疾駆した十河一存。三好長慶の末弟にして、鬼十河、夜叉十河と称された猛将の秘められた一途な想いとはーその内面と波乱の生涯に迫る!第22回歴史浪漫文学賞受賞作。