小説むすび | 2023年11月発売

2023年11月発売

森のロマンス森のロマンス

都パリを逐電したラ・モット夫妻は、荒野の一軒家で保護した美しき娘アドリーヌとともに、鬱蒼たる森の僧院に身を隠す。彼らを待ち受けるのは恐るべき悪謀ーー 今なお世界中で読み継がれる名著『ユドルフォ城の怪奇』に先駆けて執筆され、著者の出世作となったゴシック小説の傑作。刊行から二三二年を経て本邦初訳!  袖口にスリットが入ったグレーのキャムレットの衣装は、彼女の容姿を引き立てこそすれ、飾り立てるものではなかった。開いた胸元には乱れた髪が覆いかぶさり、慌てて纏った軽いベールは、混乱していたためか、上げられたままになっていた。(…)この荒涼とした家、そしてそこに巣くう粗暴な輩たちとはあまりに対照的な、優雅で洗練されたその様相を見るにつけ、彼は、これは実人生での出来事というよりは、想像力が生み出したロマンスなのではないか、という気がしてくるのであった。彼は何とか彼女を慰めようと努めたが、その誠意あふれる同情心に疑いを差し挟む余地はなかった。娘の恐怖心は徐々に収まってゆき、悲しみと同時に感謝の念も湧き上がってきた。 「ああ、ありがたや……」彼女は言った、「わたしをお救いくださるために、天が貴方様を遣わしてくださったのですね……どうか貴方様に神の報いがございますよう……わたしには貴方様以外、この世に一人の味方もないのです……」(本書より)

戦国女刑事戦国女刑事

著者

横関大

出版社

小学館

発売日

2023年11月8日 発売

信子様、天下統一お願いしまーす! ルパンに忍者、そして今度は… 映像化オファー殺到の最旬エンタメ作家が放つ、 全五話の異世界警察ミステリー。 女が国を守る時代、到来すーー “尾張の大うつけ”こと織田信子率いる捜査一課第5係は、策士・木下秀美と理論派・明智光葉ほか曲者揃いだ。信子の野望は警視庁を統べること。事件解決のためには潜入捜査も辞さないというトンデモ捜査班に、徳川康子は迷い込んだ。難事件の捜査に加え、信子のパワハラ、いや恐怖政治に戦々恐々。日中呼び出されるや、リアル千本ノックに付き合わされ、夜は歌舞伎町でホスト三昧だ。休む間もなく、捜査一課で次々と汚職が発覚。 どうする康子? その面白さ、切腹絶倒級! 【編集担当からのおすすめ情報】 「ルパンの娘」シリーズ、『忍者に結婚は難しい』ほか、最新作が次々と映像化される横関大氏が放つ、(おそらく)映像化困難な異世界警察ミステリーです。織田信子、木下秀美ら織田班の面々に加え、警視総監に足利昭菜、捜査一課長に松永久美子、ライバル係長に今川義乃、上杉謙子、武田玄代などなど脇役陣も超豪華。史実を大胆に取り入れつつ、男女を鮮やかに逆転させた異世界は、きっと、まだ見ぬ風景のはず。ぜひご高覧くださいませ。 第一話 桶狭間に散る 第二話 姉川の失恋 第三話 竜虎、相搏つ 第四話 本願寺一族の野望 第五話 本能寺殺人事件

QQ

著者

呉勝浩

出版社

小学館

発売日

2023年11月8日 発売

圧倒的な「いま」を描く、著者史上最大巨編 千葉県富津市の清掃会社に勤める町谷亜八(ハチ)は、過去に傷害事件を起こし執行猶予中の身だ。ようやく手に入れた「まっとうな暮らし」からはみ出さぬよう生きている。唯一の愉しみは、祖父の遺したアウディでアクアラインを走ることだった。ある日、血の繋がらない姉・ロクから数年ぶりに連絡が入る。二人の弟、キュウを脅す人物が現れたというのだ。 キュウにはダンスの天賦の才があった。彼の未来を守るため、ハチとロクは、かつてある罪を犯していた。折しも、華々しいデビューを飾り、キュウは一気に注目を集め始めたところである。事件が明るみに出ればスキャンダルは避けられない。弟のため、ハチは平穏な日々から一歩を踏み出す。 一方、キュウをプロデュースする百瀬は、その才能に惚れ込み、コロナ禍に閉塞する人々を変えるカリスマとして彼を売り出しはじめた。<Q>と名付けられたキュウは、SNSを通じ世界中で拡散され続ける。かつてない大規模ゲリラライブの準備が進む中、<Q>への殺害予告が届くーー。 抗いようのない現実と、圧倒的な「いま」を描く。世界をアップロードさせる著者渾身の一作。 【編集担当からのおすすめ情報】 直近の三作品が直木賞にすべてノミネート、2022年発売された『爆弾』でミステリランキングを席巻。著者の最新作は、圧倒的なスケールとスピードをはらんだ傑作となりました。発売前から書店員さんのあいだで話題沸騰。2023年、最大の注目作です。

京都東山邸の小鳥遊先生京都東山邸の小鳥遊先生

出版社

ポプラ社

発売日

2023年11月8日 発売

『京都寺町三条のホームズ』シリーズで大人気! 望月麻衣、待望の初の単行本!! 京都東山の住宅街に佇む、瀟洒な洋館「東山邸」。もとは大正時代の華族が建てたという古い屋敷には年の離れた小鳥遊姉妹ーー姉・葉月と妹で大学生の美沙が暮らしている。葉月はデビュー作のドラマが当たり人気脚本家だったが、批判を受け、思うように書けないでいた。ある夜、祇園の小料理屋で駆け出し俳優の鈴木英輔の出演ドラマを酷評していると、お忍びで来ていた英輔本人と遭遇。「あなたのヒギンズ教授になってあげる」と啖呵をきった葉月は、英輔と京都を舞台に奔走するが、ある事件が起きて……? 一緒に英輔を“推し”ながら、気づけば仲間に囲まれて ラストは温かな感動に包まれる、望月麻衣の傑作長編! ■著者プロフィール 望月 麻衣(もちづき・まい) 北海道生まれ。2013年にエブリスタ主催第2回電子書籍大賞を受賞し、作家デビュー。京都を舞台にした「わが家は祇園の拝み屋さん」シリーズ、「京都寺町三条のホームズ」シリーズ、「満月珈琲店の星詠み」シリーズなどで多くの読者の支持を得ている。2016年「京都寺町三条のホームズ」で第4回京都本大賞を受賞。本作が文芸初単行本となる。京都府在住。

朝鮮の抵抗詩人朝鮮の抵抗詩人

著者

金正勲

出版社

明石書店

発売日

2023年11月9日 発売

ジャンル

苛酷な日本の植民地支配に抵抗した詩人たち。学生運動のなかから生まれた若き詩人、「満洲」地域で生を受け、二重のディアスポラとして朝鮮語の叙情性を極めた詩人……。その文学の軌跡と現代への影響を韓国・北朝鮮・中国・日本の文学者・研究者たちが描く。  まえがき 第1部 学生運動と抵抗詩人 朝鮮南部の抵抗作家、李石城を読むーー発掘の意味をこめて[金正勲]  はじめに  1 李石城は何者か  2 発掘された詩から映し出されるもの  3 日本の思想家から朝鮮の思想家へ  4 『堤防工事』のテーマと意義  おわりに 『堤防工事』[李石城(金正勲 訳)] 朝鮮植民地期のアナキズム独立運動[亀田博] 鄭瑀采の活動と詩篇に表れる抵抗精神[金正勲]  はじめに  1 鄭瑀采の成長過程と文壇デビュー  2 「醒進會」活動と投獄  3 凄絶な生きざまの現場と自我省察の歌  4 詩文にみられる抵抗精神  おわりに 歴史的人物、朴準埰の書き残した詩篇に関する考察ーー早稲田大学留学時代の作品を中心に[金正勲]  はじめに  1 詩ノートの実物  2 家族愛と故郷愛を描いた詩  3 早稲田大学留学時代の詩  4 抗日的抵抗詩  おわりに 朴準埰の発掘詩紹介[金正勲 訳] 第2部 抵抗から独立へ 尹東柱ーー詩による抵抗の充実と苦悩[愛沢革]  1 尹東柱の詩を新しい眼で読みなおすことが問われている  2 尹東柱は情感偏重の抒情詩人ではないーー金時鐘による尹東柱批評の意味  3 尹東柱と宋夢奎 李相和ーー抵抗と復活の世界性[佐川亜紀]  1 代表作「奪われた野にも春は来るのか」の生命表現ーー女性表象をめぐって  2 世界的な問い  3 虐げられた人々への共感  4 作品「詩人に」--創造への呼びかけ 植民地時代の朝鮮における『国民文学』[渡邊澄子] 二重のディアスポラ、尹東柱[崔一]  1 尹東柱の発見  2 「満州」という空間と韓民族アイデンティティ  3 「満州」の不在と抽象的な故郷  4 「二重ディアスポラ」の漂流する故郷  5 「国民」という記標を持つ者と持っていない者 尹東柱の児童詩とその文学史的意義[金萬石]  1 尹東柱の児童詩学習と創作  2 尹東柱の追求した児童詩の形態  3 尹東柱児童詩の思想・美学的価値  4 結論 李陸史の文筆活動と詩[ハン・ジュンモ] 歴史における詩的参与[文炳蘭]  1 詩の機能  2 歴史と詩人  3 真実の詩と虚偽の詩 第3部 付録・関連短文  李石城の新発見日本語詩稿に出会ってーーその驚きと感動の言葉[金正勲]  雪の降る凍土にも花は咲くかーー出来損ない息子の想父曲[李明翰]  李石城ーー抵抗詩から抵抗小説へ[金正勲]  朴準埰の発掘詩ーー「KBSラジオインタビュー(光州放送局)」[金正勲]  鄭瑀采の生涯と文学[金正勲]  朝鮮近代文学のパイオニア、趙明熙[金正勲]  あとがき

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