小説むすび | 2023年2月27日発売

2023年2月27日発売

濃霧は危険濃霧は危険

過保護に育てられたレデヴン館の相続人ビル・レデヴン少年は、同年代の少女のいる知人宅で休暇を過ごすよう親に命じられ、気乗りしないまま、シルバーのロールスロイスに乗せられ目的地に向かっていた。ところが、霧が濃くたちこめた荒れ地の途中で、いきなり、意味も分からないまま、お抱え運転手のブランドンに車からつまみ出されてしまう。同じころ、周到な計画のもとに、〈ナイフ〉と呼ばれる若者がボースタル少年院から逃亡する。 ビルは荒れ地をさまよううちに少年パッチと知り合い、行動をともにするようになる。二人はビルが思わぬ形で手に入れた暗号で書かれた文書を解読しながら、〈にやついた若者〉、〈ヴァイオリン〉、片手が鉤爪の男との、追いつ追われつの冒険へと踏み出してゆく。 オールタイムベスト級の傑作を次々と発表し、いわゆる英国ミステリ小説の黄金時代最後の作家としてゆるぎない地位を築いたクリスチアナ・ブランドが、すべての少年少女のために、みずみずしい筆致で、荒涼とした大地と海が広がるイギリス南部のダートムアを舞台に繰り広げられる冒険を描いたジュヴナイルの傑作。 【炉辺談話】『濃霧は危険』(山口雅也) 濃霧は危険

ロマンロマン

【国書刊行会 創業50周年記念復刊】 《現代ロシア文学のモンスター》ソローキンの傑作長編が復活!! 〈彼女が目を上げ、二人の目は出会った。「どうか教えて下さい」彼女の視線に胸の内に熱い波がわきたち、思わず身が震えるのを感じながら、ロマンは言った。「教えて……」彼が繰り返すと、彼女はすべてを悟ってまた目を外した。その頬がさっと赤く染まった。「ああ、なんと早く!」ロマンの頭にそんな思いがよぎった……〉 優秀な弁護士としての首都での暮らしにピリオドをうった青年ロマンは、画家として第二の人生を歩むために、故郷の村クルトイ・ヤールへと戻ることにした。旧知の友や親類に囲まれた素晴らしく愉快な日々。都会では忘れていた人間としての生活に、彼は大きな喜びを感じる。そして、やがて彼は運命の女性にめぐり会う…… 「現代文学のモンスター」の異名をとる作者が、ツルゲーネフ、チェーホフ、ゴーゴリといった十九世紀ロシア文学の精髄を戯画化しながら描く、衝撃のスプラッター・ノヴェル。 「創造的破壊とはこのことか。 文学界きってのデストロイヤーが小説《ロマン》をぶっ壊し、フィクションの未来を切り拓く衝撃的な大傑作」 ーー豊崎由美(書評家) ◎装幀=松本久木(松本工房) Роман, 1994 *本書は、1998年に小社より刊行した『ロマン』1・2を合本し、若干の改訂を行った上で、新装版として刊行したものです。

クルーゾークルーゾー

国家崩壊を神話的に描く、21世紀の『魔の山』  1989年夏、東ドイツで⽂学を学ぶエドは、恋⼈を事故で亡くして絶望し、人生からの逃亡を決意する。向かったのはバルト海に浮かぶ小さな島、ヒッデンゼー。対岸にデンマークを望むこの島は、自由を求める人々の憧れの地だ。島に到着したエドは、さしあたり⼀夏を過ごそうと「隠者亭」の⽫洗いの職に就く。実質、島はクルーゾーというカリスマ的な男によって統治されていた。強烈な影響力で周囲を動かすクルーゾーに、エドは畏怖と憧れを抱く。やがて、クルーゾーは詩への情熱からエドを特別な存在として認め、二人は心を通わせ、深い絆で結ばれていく。だが、夏が終わり、秘かに国境を越えようと住人が一人また一人と去っていくと、平穏な日々に亀裂が……。  最後に一人、島に残った男が知る世界の大転換と、友との約束とは? 極限で見出した、真の自由と友情とは?  いまドイツで最も注目され、《バッハマン賞》《ライプツィヒ書籍見本市賞》など、数多の文学賞の栄誉に輝く詩人が、夢と現実の境界を溶かす語りで、国家の終焉を神話に昇華させた長篇。本書で《ドイツ書籍賞》を受賞している。

多情所感多情所感

コロナ後を生き抜く キーワードは「やさしさ」 ユーモア溢れる筆致で多くの読者を魅了した『女の答えはピッチにある』(サッカー本大賞2021受賞)の著者による、韓国で大反響のエッセイ、日本上陸! 新型コロナウィルスの世界的な流行で生活は一変し、人と関わらない日々が普通になりつつある。今まであたりまえだと思っていたことが、そうではなかったと思い知った著者が、日常生活を振り返り、自分がつらかったとき、困難に直面したとき、他者の大小さまざまな「やさしさ」がいかに自分自身を立ち上がらせてくれていたのか、しみじみと実感したエピソードが本書には詰まっている。 『多情所感』とは、 韓国の四字熟語「多情多感 (思いやりが深いこと )」にちなんだ造語。コロナ前には気づかなかった、女子サッカーチームの先輩たちから自然に受けていた励まし、偽善的な上司からの悟り、客室乗務員時代の女性たちの連帯、社会にはびこるマウントや偏見、SNSの言葉の落とし穴、塞ぎ込んでいたときに救ってくれた友人の料理のあたたかさ…。タイトルの通り、著者の繊細な感受性が日常生活や社会の様々な層の感情を掬いあげていくが、それには秘密がある。著者が小学校3年生の時に、大人たちが何気なく使う言葉や表現でクラスメートが深く傷つけられていると感じた記憶が明かされる。その姿が自らの深い傷になり、今も反芻し、差別する側の目が自らの内にないか常に問いかけている著者の繊細さがあるからこそ、本書の言葉は人を包みこむやさしさをもつ。 大きく感情を揺さぶられながら、相手の立場で考える想像力を取り戻す力を与えてくれる、心の点滴のような一冊。  日本の読者のみなさんへ 第一部 海苔刷毛置き、みたいな文が書きたい  旅に正解はありますか  逆さま人間たち  サッカーと大家  虚飾に関して  自分だけを信じるわけには、いかないから  先祖嫌悪はおやめください  納涼特集 私の幽霊年代記  スーパーで、ようやく  彼のSNSを見た  本で人生が変わるということ  Dが笑えば私もうれしい──#私がもう使わない言葉 第二部 ひとつの季節を越えさせてくれた  扉の前で、今は  そんな私たちが、いたんだってば  飛行機はわるくなかった  あるミニマリストの試練  wkw/tk/1996@7'55"/hk.net  プーパッポンカレーの喜びと悲しみ  ひょっとして、これは私のソウルフード  あとで会おうね、オンラインで  コーヒーと酒、コロナ時代のスポーツ  旬の食べ物をしっかり摂ること  ひとつの季節を越えさせてくれた  あとがき──コロナ時代の近況と、書かれていないやさしさについて  訳者あとがき

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