2024年1月29日発売
ぼくはローマから高速鉄道“フレッチャロッサ(赤い矢)”に乗ってモデナへと向かっている。多額の借金を返済すべく、イタリア人物理学者の回顧録のゴーストライターをしていたけれど、失踪してしまった彼をさがし出すために。車中でぼくは思い出すー画家として失敗し、まぐれ当たりで作家になった日々、第二作が全く書けない苦痛、カリフォルニアでの幻覚剤療法。そして、物理学者の回顧録はこう始まるー“時間は起点と終点のある一本線ではない。さまざまな先端を持つ一本の矢なのだ”。自身も最初の詩集で高評価を受けた作家が、自信喪失の作家の苦悩をユーモアを交えながら描き出す、デビュー長篇にして傑作。
狷介で知られた馬琴の素顔、けなげな哀歓が鮮やかに甦る!大名の家臣の家に生まれた、馬琴。若き主君に仕えるもパワハラに堪えかねて出奔。放浪の末、当代一の戯作者・山東京伝の門をたたき、蔦屋重三郎の店に奉公して戯作の道に踏み出した。やがて独自の小説の道を開き、ついに人気作者になる。が、妻はヒステリー、愛する息子は柔弱、『南総里見八犬伝』に着手するも板元とはトラブル続きだ。それでも馬琴は滝沢家再興の夢を捨てず、締切に追われながら家計簿をつけ、息子と共に庭の花園で草花を丹精する。
第一次世界第戦前夜の英国。南アフリカから帰国し、退屈しきっていたスコットランド出身の青年リチャード・ハネーのもとに謎のアメリカ人が来訪する。数日後、彼は死体となって発見された。殺人の容疑をかけられ、追われる身となったハネーだが、ヨーロッパを世界大戦に巻き込む大いなる陰謀を知り、これを阻止すべく立ち上がる。そして追いつ追われつの大冒険に…。スパイ小説の原点ともいうべき傑作がエドワード・ゴーリーの魅力的なイラスト入りで蘇る。
日本思想史上で今も異彩を放つ革新右翼のカリスマ、北一輝。彼は何を目指し、何に破れたのか?『国体論及び純正社会主義』で明治期政治体制の構造的欠陥を撃ち、続く『国家改造案原理大綱』で青年将校たちの思想的バックボーンとなった北一輝。二・二六事件で破滅を迎えるまでの、北一輝の政治理論と歴史との相克、彼に心酔する革新右翼活動家らとのパセティックな日々を描き、彼らの「夢」と「錯誤」に迫るーその生涯のクライマックスから終焉を活写した、迫真のノンフィクション小説。
ドイツ人捕虜を翻弄する数奇な運命。謀略の飛行機事故や英国空軍パイロット射殺事件が見え隠れする中、“奇妙な捕虜”の過去が徐々に明かされていく…。「100%アリバイ」の作者であるクリストファー・ブッシュが別名義で書いた異色のミステリ!
一文無しになった凸凹コンビが革工場に就職!出勤初日から殺人事件に遭遇し、“しぶしぶ”事件解決に乗り出すジョニーとサム。そんな二人に忍び寄る怪しい影の正体とは…。命の危機に晒された二人の運命や如何に?愉快痛快、呵呵大笑、抱腹絶倒のユーモア・ミステリ。
著者
エルンスト・ラウパッハ / カール・シュピンドラー / ゴットフリート・ペーター・ラウシュニク / フランツ・ゼーラフ・クリスマー / ヨーゼフ・リッター・ヴィーザー・フォン・メーレンハイム / ルドルフ・ヒルシュ出版社
幻戯書房ジャンル
ポリドリ『ヴァンパイア』ブームのさなか、1820〜30年代にかけて発表された、ラウパッハ『死者を起こすなかれ』、シュピンドラー『ヴァンパイアの花嫁』など怪縁が織りなすドイツ・ヴァンパイア文学傑作短編集。本邦初訳。ヴァンパイア学者が詳述する訳者解題「ヴァンパイア文学のネットワーク」を併録。 死人花嫁 ゴットフリート・ペーター・ラウシュニク 死者を起こすなかれ エルンスト・ラウパッハ ヴァンパイアの花嫁 カール・シュピンドラー ヴァンパイア アルスキルトの伝説 J・E・H 狂想曲ーーヴァンパイア イジドーア ヴァンパイアとの駆け落ち ヒルシュとヴィーザー ヴァンパイア ワラキア怪奇譚 F・S・クリスマー 註 ヴァンパイア関係事項年譜 訳者解題 ヴァンパイア文学のネットワーク
公爵令嬢ジュリエッタは前世の夫バルトロマイと再会したものの、互いの家は政敵同士。実は彼とは前世でも家の確執ゆえに悲惨な末路を迎えていた。だから今世は徹底して彼を避けていたのに、なぜか何度も遭遇してしまい!?その上彼は前世の記憶がないのに会えば必ずアプローチ。ムード皆無だけど直球なその言動に不覚にもときめいて…。そんな折、両家の確執の裏に彼女の家に憑いた悪魔がいることが判明。二人で真相を探ろうとするがー
騎士科のランスロットにパートナーとして指名された魔女侯補のリタは、実は昔、勇者達と冥王討伐した伝説の魔女ヴィクトリア。新たな人生を生きるため長い眠りから目覚め姿を変えたのだ。ところがある日、変身魔法が解けてしまいそれを見たランスロットはー「ぼくと結婚していただけないでしょうか!!」なんと彼は伝説の魔女に憧れるヴィクトリアオタクだった!動転するリタの前に冥王討伐の時に失恋してしまった勇者の末裔まで現れて!?
コロナ禍に揺れる二〇二〇年の日本から幕末の蘭医で近代化学の祖である川本幸民のなした翻訳文化の知の体系を照射した表題作と、ルネサンスを生きた人文主義者マキァヴェッリの宗教への想いを描いた「残映のマキァヴェッリ」。日本とイタリアを舞台に、「近代」とは何かを鋭く問う、歴史小説集!