2024年7月発売
かつて「ぼく」ではなく「わたし」だとカミングアウトしたことで、傷ついた慎太郎。 心の中だけで『ゆき』として生きるようになった慎太郎が出会ったのは、死に別れた恋人の骨を探す女性ナシャル。 彼女は恋人に正体を明かせなかった後悔で、海に戻れない人魚だった。 本当のことは、誰かを傷つけるし、傷つけられる。 好きなひとへの想いも隠し、『慎太郎』として生きていくと思っていたけれど……。 『ゆきも、あなたのうみを、およいでね』 痛みを抱え、それでも前に進む出会いのものがたり。
誰からも散々嫌われ、殺されるーー そんなとあるゲームの悪役リュクスに、俺は転生していた。 でもそんな運命(ストーリー)、理不尽では? 死にたくないし、孤独な人生なんて送りたくない。 だから決めた……悪役をやめてモブになると。 ゲームを周回プレイし、公式設定資料集を読み込んだ俺なら、チート級の魔眼をさらに鍛えることができる! それじゃあ、剣と魔眼を練磨して、ゲームストーリーをぶち壊すことにしますか!! 正攻法で生きる悪役が起こす、番狂わせファンタジー開幕!
復讐するのも、復讐されるのも、僕にしかできないーー。 『襲名犯』で第59回江戸川乱歩賞を受賞し鮮烈デビューを果たした竹吉優輔、8年ぶりの新作! 私立恵堂学園に通う和泉七生は、2年生から特進クラスに編入を果たした。友人もでき、新しいクラスでもつつましく学園生活を送っていたが、ある日黒板に謎のQRコードが現れる。読み込むと、「ギン」という謎の人物による、櫛屋すみれへの過去のいじめを告発するという脅迫動画が映し出された。 告発までの期間は約1か月。だが、同時にいじめに関するクイズも出題される。 唯一の部外者である七生は探偵役を任命されるが、自分の過去の罪の意識から、復讐と贖罪の間でさまよい始めるーー デビュー作『襲名犯』で不条理と再生を描いた乱歩賞作家の復活長編!
小体ながらも繁盛している向島の船宿「かりがね」を営むお路とお律の美人姉妹。その裏の顔は「緋薊」を名乗る盗賊だった。お路は男嫌いだが、盗みに入る先の黒丸(関係者)を籠絡する術は抜群だ。一方、妹のお律は小太刀の名手だが、身分違いの武家の三男坊と恋愛中。そんな二人の気がかりは妹(三女)のお夕の行く末。幼い頃に失明したため師匠の家に住み込みで音曲の修業に明け暮れている。三姉妹の父親はかつて山陰の浜岡藩御用達の廻船問屋の主人だったが、不可解な死を遂げていた。父の死にまつわる手がかりを見つけたお路とお律は、その謎を解き明かすために立ち上がるー。
第171回芥川賞候補作。 踊る、それがわたしたちの自由 海辺の老人ホームに集う女たちのゆるやかなつながり。 いま最も注目される新鋭の最新作。 「これってフツー?」 「わたしの中じゃね」 「クズミさんのフツー、ちょっとヘン」(本文より) 海辺の老人ホーム「雲母園」で派遣の清掃員として働くわたし、クズミ。 ウガンダから来た同僚マリアさん。 サボりぐせのある元同僚の神崎さん。 ニセモノのバス停で来ないバスを毎日待っている入居者のサトウさん。 さまざまな人物が、正しさとまちがい、本物とニセモノの境をこえて踊る、静かな物語。
作者は4世紀半ば,東晋の歴史家で,本書は民間伝説,名士の逸話などを古い書物から抄録したもの。志怪小説とよばれる怪異の記録中もっとも叙述にすぐれ,中国小説の祖とされる。本邦初の全訳。