2025年1月31日発売
『失われた時を求めて』は幾重もの謎に包まれている。──長篇はいかに誕生したのか? 対比されているのはスワン家とゲルマント家なのか? ヒロイン・アルベルチーヌはなぜ捉えどころがないのか? 「私」という一人称の仕掛けとは?──小説と批評を総合した希有なる作品の隠された構造を、草稿研究の先駆者が精緻に読み解く。 まえがき 第一部 大長篇誕生の謎 第一章 まぼろしの初稿の発見──「七十五枚の草稿」を読む 第二章 小説と批評の総合──『サント=ブーヴに反論する』の未完の構想 第三章 増殖する長篇──終わりなき加筆をたどる コラム1 レオニ叔母の「椎骨」──ジッドによる出版拒否 第二部 作品の構造をめぐる謎 第四章 社交界に君臨する人びと──貴族・ブルジョワ・ユダヤ人 第五章 ジュヌヴィエーヴ・ド・ブラバンの幻灯──コンブレーとゲルマントをつなぐ伝説 第六章 画家ベノッツォ・ゴッツォリ──「コンブレー」から『囚われの女』への四極構造 コラム2 フロイトの時代──スワンの「夢」を分析する 第三部 芸術と芸術家をめぐる謎 第七章 キク、乃木将軍、浮世絵、水中花──ジャポニスムへのまなざし 第八章 ギリシャの彫刻とエジプトのミイラ──偶像崇拝と分身について 第九章 作中の芸術家たち──エルスチールを中心に コラム3 厳寒のパリにプルーストとモローを訪ねる 第四部 恋心と性愛をめぐる謎 第十章 情熱と冷静──恋心を語る自由間接話法 第十一章 ジッドとプルーストの対話──『コリドン』から『ソドムとゴモラ』へ 第十二章 「サディストは悪の芸術家である」──ヴァントゥイユ嬢の純粋さ コラム4 ニジンスキーの跳躍──作家の見たバレエ・リュス 第五部 作家の方法をめぐる謎 第十三章 パリの物売りの声──フィクションか批評か 第十四章 ゴンクール兄弟の「未発表の日記」──文体模写とフェティシズム 第十五章 第一次大戦下のパリ──反リアリズムの方法 コラム5 プルーストの墓(二〇二二) 終 章 深まる謎コラム 『失われた時を求めて』の梗概 初出一覧 あとがき 注 参考文献一覧 図版出典一覧 人名索引
【罪を犯した「本当は良い子」の少年たち。奪われた命が、彼らの真実を浮かび上がらせる。】 重大な罪を犯して少年院で出会った六人。彼らは更生して社会に戻り、二度と会うことはないはずだった。だが、少年Bが密告をしたことで、娘を殺された遺族が少年Aの居場所を見つけ、殺害に至るーー。人懐っこくて少年院での日々を「楽しかった」と語る元少年、幼馴染に「根は優しい」と言われる大男、高IQゆえに生きづらいと語るシステムエンジニア、猟奇殺人犯として日常をアップする動画配信者、高級車を乗り回す元オオカミ少年、少年院で一度も言葉を発しなかった青年。かつての少年六人のうち、誰が被害者で、誰が密告者なのか?
ーーー 【収録作品】 「国民的未亡人」 誰もが知るスター俳優であった夫を亡くした私は、一般人にして有名「未亡人」となった。 夫との美しい思い出とともに逗子で静かな暮らしを送っていたが、没後三年の追悼特番に出演するため都内のテレビ局へ向かう。 「ただ君に幸あらんことを」 大学受験期に僕が母から受けてきた酷い仕打ちを、今は六歳下の妹が受けている。 一人暮らしの家に妹を避難させ、母との間に入って守ろうとするが、僕自身の傷がうずき出していた。 国民的未亡人 ただ君に幸あらんことを
「僕はこの家から逃げられへん身にさせられてしもうた」 大正十四年、大阪。病弱だが勝ち気な女性記者・苑子は、担当する身上相談欄への奇妙な投書を受け取る。 大手製薬会社・丹邨製薬の社長令息からの手紙であり、不審を覚えた苑子は、身分を偽り丹邨家に潜入することに。 調査を進めるうち、その異様さが明らかになっていく。苑子を苦しめていた咳をただちに止める、真珠のような丸薬。 一家の不可解な振る舞い。丸薬を怪しんだ苑子は、薬の成分分析を漢方医に頼む。 返ってきた結果には、漢方医も知らない「骨」が含まれていたーー。 もう逃げられない。気付いてからが、本当の地獄の始まりだった。 「丹邨家に巣くう災厄をあなたが払えることを祈ります」 第一章 神効有リ 第二章 かたち人に似て 第三章 災祟 幕間 第四章 食スルニ耐ヘズ 第五章 くれなゐ 第六章 笑ヲ含テ
無責任な言葉とわかっていても、振り回されずにいられないのが私たち。切れ味抜群、なのに愉快でクセになる全4編。 ーーー not for me(is myself) フィットネス系YouTubeチャンネル「かなめジム」を運営するインフルエンサー・かなめは、読者モデル時代の同期の穂乃花から、信者のような熱量のおかしい人がコメント欄にいるから気をつけた方がいい、と忠告を受ける。いつでも正直に、ただ、伝え方に気を配って、優しく明るく発信をしてきたのに……。 純粋に疑問なんだけど 大好きな小説の編集部から「ノンフィクション部門 ネットメディア班」に異動し、インフルエンサーの書籍を担当するようになった若手編集者の野村。異動後はじめて出版のオファーをしたYouTuber・はしゆりは破天荒で、彼女のやることなすことすべて、野村にはわけがわからない。 「なんで怒らないんですか?」 「世間ずれしていない関さんの新鮮な感覚が必要」。衛星放送の番組制作も手がけるNPOで契約職員として働く関は、いまの職場環境に満足している。四十にもなって専門技術もない「平凡な主婦」を重宝して、新たな仕事まで任せてくれるのだ。ところがインターンに来ている大学生の小田嶋さんは、まったく異なる思いを抱いているらしい。 人の整形にとやかく言う奴ら アイドルオーディション番組に参加して、ファイナル一歩手前で落ち、韓国の事務所を辞めて日本に戻ってきて五年。「ダンスクイーン」由良すみれは今、地元の学習塾で事務職をしている。普通の生活を取り戻せて本当に良かったし、同時に応援してくれたファンの人たち全員を今も愛している。愛と感謝を伝えるために残しているSNSアカウントに、この頃不穏な空気が漂い始めた。 not for me (is myself) 純粋に疑問なんだけど 「なんで怒らないんですか?」 人の整形にとやかく言う奴ら
幼い頃、突然異世界に落下したリンは、役立たずのレッテルを貼られ奴隷に落とされる。虐げられ絶望していたリンを買ったのが、侯爵家当主で鬼人のロイだった。食べられるか蹂躙されるのだと思いきや、リンの役目は「ロイの過剰な魔力を流し込む器になること」でーー? 抱き枕役は嫌だけど、鬼なりの愛情でやせっぽちなリンの体調や食事に気を配り、ペットように可愛がるロイに、次第にリンは心を開いていく。鬼族の使用人たちからもこれまでになく大切にされ、リンのボロボロの心は少しずつ癒されていくがーーある時、奴隷時代のトラウマを思い出させる人物と再会し…!?
学園で開催されるお祭りの手伝いに行く村の面々! 五ノ村で新しく始まった白鳥レース! 慌ただしくものんびりしている大樹の村はいつも通り。 一方、なぜか冒険者をしているウルザは奇妙な出会いをしていた。
隣国で発生した勇者イベント【スイロク王国の反乱】に 突如対応することになりライナナ国を離れていたアブソリュート・アーク。 一方学園では、アブソリュートへの復讐に燃えるミカエル王子が彼の不在中に アーク派閥であるクリス、レディたちを排除しようと動き出していた。 「守られているばかりじゃダメだ!」 アブソリュートの帰る場所を守るため 臣下が一丸となって戦う!
日本から転生した貴族令息ゼロ。 転生先が剣と魔法のファンタジー世界と知り、元オタクの血が騒いだゼロは衝動に駆られたーー中二病チックなことがしたい! 書斎で「世界の真実ノート」なる父親の黒歴史を発見したゼロは、これ幸いと中二病設定を拝借。 真なる神・聖神の意志を代弁する【代行者】になりきり、世界を支配する偽りの神に反逆するロールプレイを楽しむことに! ところが本当に神々は存在しており……!? しかもノリで配下にした少女たちはゼロを勘違いで崇拝しっぱなし! 引くに引けなくなったゼロは影の組織を統べる【代行者】を演じ、無自覚に世界を導いていくーー!! 影の組織のトップを辞めたい最強の転生者と勝手に崇拝する配下たちの勘違い異世界コメディ!
内気な公爵令嬢・マクシミリアンは父の命令で、下級騎士・リフタンと政略結婚をすることに。 そうして二人は一夜を共にするが、翌朝には彼の姿はなく、出立の言葉も告げずにドラゴン討伐に出征したあとだった。 それから3年、いよいよ彼が帰ってくると知ったマクシミリアン。 ところが大陸中に名を馳せる英雄となったリフタンに王女との新たな縁談話が持ち上がっていた! 美しくもなく、何の取り柄もない自分など、離縁されるだろうーー ところが、戻ってきた彼はマクシミリアンに予想もしなかったことを告げ!? わたしのすべてを、愛してくれますか? 話題の“じれキュン”ロマンスファンタジー登場!
会社が夜逃げし、無職になった社畜サラリーマン山本春重(38)。 途方に暮れた春重は気まぐれで探索者ギルドに向かった。 あらゆる建造物が、突如、モンスター溢れる迷宮へと変化してしまう現象『ダンジョン化』。 その探究を生業とする探索者のギルドで春重は【万物支配】というユニークスキルを手に入れるが、ギルドの職員は弱小スキルである【調教】と勘違いしてしまう。 使えないと言われたスキルだが、ダンジョンではモンスターを支配し、人間をも支配してしまう最強のぶっ壊れスキルだった!? 助けたJKや元最強パーティの女性剣士と仲間になり、春重のスキル無双は続くーー。 東京を舞台とした現代ダンジョンファンタジー開幕!
公爵騎士のレオンと結婚した、軍医フィーネ。 レオンの不器用ながらも深い愛情に、 彼女は幸せな結婚生活を送っていた。 ある日、フィーネは、 レオンの代わりに、彼の弟サイラスに届け物をすることになる。 王都で娘と二人で暮らしているサイラスは、 医学の研究者でもあり、フィーネにとっても学ぶべき存在だ。 だが、フィーネがサイラスのもとを訪れたところ、 彼の娘アネットは、感情を見せなかったり、ときおり苦しんだりと、 なにか事情を抱えているらしい。 妹であるかつての聖女コリンナの面影をアネットに見たフィーネは、 アネットの心を開かせるため、彼女と向き合う。 「私がそうしたいから、するんです。気を遣わないでください」 だがそんな中、アネットが突然、 フィーネの前から姿を消してしまい……!?
遊廓街・吉原で育ち、小さな貸本屋を開業……。やがて歌麿、北斎、写楽、曲亭馬琴、十返舎一九らを発掘し超人気作家に育て上げる。文化の担い手を「武士や豪商」などの富裕層から「庶民」へとひっくり返し、幕府による弾圧にも「笑い」で対抗。江戸庶民は彼を「蔦(つた)重(じゅう)」と呼び、喝采を浴びせた。その鋭敏な感性、書き手を虜にする人間性、したたかな反骨精神を描く蔦重本の決定版! 江戸を文化的に豊かにしただけでなく、今のポップカルチャーの基礎をつくった人だと思っています。 ーーーNHK大河ドラマ『べらぼう 蔦重栄華乃夢噺』主演・横浜流星(日刊ゲンダイ2025年新春特別号インタビューより) 〈寛政の改革の嵐は蔦重の家財半分をさらう、そのときお江戸はーーー〉 日本橋と吉原の耕書堂は雨戸を固く閉ざしている。大戸には「負けるな」「一日も早い再開を」「戯家(たわけ)の灯を消すな」と励ましの落書の数々。雨風が叩きつけても消えそうにない。 本屋の裏口、長身の老人が身を滑らせるように入っていく。叔父の利兵衛だ。 「お前という子は幼い頃から偉そうな御仁が大嫌い」 初志貫徹は立派なこと。ヘンな褒め方をしてから叔父は真顔になった。 「奉公人や彫師、摺師に迷惑をかけられない。銭なら融通するからいっておくれ」 蔦重、ゆっくり首を振る。横のとせが背筋を伸ばした。 「お舅(とう)とうさん心配をおかけします。でも、あたしの蓄えが少々」 夫婦が見交わす眼と眼、舅(しゅうと)は頼もしそうにいった。 「ずいぶんと綜(へ)麻(そ)繰(く)ったもんだ。さすがはおとせ、感心感心」 叔父は店の落書のことをひとくさり。そして重三郎、とせを見据えた。 「こんなことで負けちゃいけない。戯家の本屋が変じて反骨の本屋。江戸の期待は大きいよ」 (第七章「不惑」より) 出版王の反骨精神はいかにして生まれ、散っていったのか。生き別れた両親、花魁への初恋、波乱万丈の人生を支えた妻・とせによる内助の功など、稀代の本屋の知られざる一面を描き出す感動の長編小説。
故郷・デッドエンド村で生じた問題を無事に片づけ王都に戻った薬師・リーフ。 強大な力をもつ彼(無自覚)は、新たにベヒモスのタイちゃんを仲間に加え冒険者生活を満喫していた。 そんなある日、リーフは冒険者ギルド【天与の原石】のギルドマスター・ヘンリエッタからある仕事を任されることに。 それは「魔族に歯が立たなかったギルドメンバーを鍛えてほしい」というもの。 こうして、リーフは恐れ多く思いつつトレーニング(地獄のしごき)を始めるのであった! しかし、その裏で【邪神】を崇拝する魔族たちの暗躍が激化していきーー!? 圧倒的な調剤スキルですべてを蹴散らす 辺境の薬師による無自覚無双、第3弾!!
サイファード家の一人娘であるオリビアは、感情を表に出さない大層奇妙な少女だった。 実の父親にすら気味悪がられ、義母と義妹に虐げられ屋根裏に軟禁され殺されかけるが、 その矢先に彼女を助けたのはサイファード家含む「北の財閥」を支配する当主にして絶対的権力者ーーシリウスだった。 オリビアを無下にした者は許さない。 シリウスによるオリビアへの寵愛が止まらない中、彼女を守らなかった者や国への“断罪”は進んでいきーー この物語は、 一人の少女を傷つけた者たちが徹底的に破滅へと追いやられる中、 とんでもないお金持ちから寵愛を受け続けたその少女が 真の幸せを見つけるまでの物語である。
どんっ! コレットちゃんと、王都での買い物を楽しむ ミツハの日常は、衝撃とともに壊れた。 アルダー帝国が差し向けた暗殺者の凶刃から ミツハを護るため、身を挺して庇ったコレットは、 瞬間的に事態を察知し地球へと転移したミツハの手配により、命をとりとめた。 心から安堵するミツハだがーー刃を向けた相手に容赦はしない。 あらゆる手段を使って叩き潰す!! ヤマノ子爵家の家長として家臣の敵、討ってみせます! アルダー帝国殲滅作戦、作戦開始(ミッション・スタート)!
元魔王城で子犬を拾った日から、平凡な《羊飼い》の人生は大きく変わったーー。 滅びた魔王城の跡地を領地として持つ貴族の三男アルトは、10歳になった時《羊飼い》の職を得た。 レベルも上がり辛く弱い職業だとされる《羊飼い》。だが、あくまでレベルの上がってない状態の話だ。 アルトはある日、自らが開墾する魔王城で小さな犬を拾い、助けた。 伝説の魔獣と知らずに助けたその日から、アルトの《羊飼い》としてのレベルは爆速で上がっていく! 知らない内にアルトは常識とはかけ離れた、規格外の羊飼いになったのだ。 規格外の力と共にアルトは魔王城を開拓し、スライムの大群や、風の精霊、ユニークで強力な魔獣を家族として迎え入れ。自分も家族も絶対に飢えさせないために、様々な作物を育て、豊穣の王へと成り上がる! 隠れ最強な《羊飼い》と伝説の牧羊魔獣が贈る、『開拓グルメファンタジー』第一弾!
昭和10年(1934)8月12日、陸軍省にて、相沢三郎歩兵中佐が軍務局長・永田鉄山少将を惨殺する事件が起きる。そのとき、部屋にはもう一人の人物がいた。憲兵大尉・浪越破六は、事件に語られていない真実があることを確信する。そんな折、浪越は渡辺錠太郎陸軍大将から、ある命を受ける。昭和の重大事件の裏で進行していた「もう一つの事件」を、歴史ミステリ作家が描き出す。
執筆から30年、“幻の長編小説”がついに書籍化! 囲碁の名人として、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康と、天下人三人の側近くに仕えた本因坊算砂(日海、本因坊の初代)を主人公に、新たな視点から信長を描くーー。 天下布武へと邁進する信長だったが、武田との激闘、一向一揆との泥沼の戦い、荒木村重の謀反など、難しい局面が続いていた。 そうしたなか、若くして見いだされた日海は、囲碁を通して、信長にさまざまな献策を行なっていく。 そして不穏な情勢の下、天正10年(1582)、毛利攻めへ向かうため、信長が京都・本能寺へ宿泊する。 6月1日の夜(本能寺の変の前夜)、信長の御前で囲碁の対局をした日海。 その対局で、万に一つもできず、不吉なことが起こる前兆ともいわれる「三コウ」が起こるのだが、それは……。 官僚、政治家、万博のプロデューサーなど、多岐にわたる活躍とともに、数々のベストセラーを世に送り出した著者ならでは分析が冴えわたる一冊。