著者 : 南原幹雄
前田家に奥入れした二代将軍秀忠の娘珠姫に従うお付人一統-。利長の命と前田家の支配を狙うお付人一統に利長もついに起った。前田家が残した「前田日記」をめぐって展開される決死の攻防。
室町幕府に抗して滅ぼされた4代目鎌倉公方足利持氏の遺児たちは幕府軍に追われる流浪の身となっていた。下総国の豪族結城氏朝、持朝父子は義によってこのかつての主君の子を擁し、天下に叛旗を翻す。押し寄せる十万余の大軍を相手に、わずか一万の軍勢は果敢に戦い続けた。室町時代中期、関東を揺るがせた大いなる叛乱。戦場に展開するさまざまな人間模様を描く歴史長編。
加藤清正の妻を大坂城から脱出させる大木土佐守。落城寸前の伏見城に向けて鉄砲を運ぶ堺の鉄砲鍛冶。清酒〈生諸白〉で名を挙げる鴻池一族の祖、新六。家康の命で大砲〈国崩し〉を鋳造する近江国友鍛冶。裏切りの誘いに心揺れる石田家重臣粟津権之助。石田軍の巨魁・大谷刑部の首を追う藤堂仁右衛門。豊臣秀頼の命を狙うため甦えった初代服部半蔵正成。興るか、滅ぶか。生死を賭けた男たちの野望と決断。
動乱の時代を迎えようとしている安政年間、第13代将軍・徳川家定の後継ぎを巡って水戸・一橋党と紀州・南紀党は熾烈な勢力争いを繰り広げていた。南紀党を率いる紀州藩付家老水野忠央は老中首座の阿部正弘を暗殺、一方、一橋党も忠央や井伊直弼の懐刀長野主膳の暗殺を企てるなど、攻防は一進一退を繰り返していた。そんな折、一橋党の首魁水戸斉昭が失脚、直弼の大老就任が突如実現したことで形勢は傾くが…。
玉里は松葉屋の折檻部屋で、三日目の朝をむかえた。天井下の梁からおろされた綱で玉里は吊るされている。半裸の肌身に縄目が食いこんでいた。後ろ手にされた手首と腕の痛さも、今は感じなくなっていた。足ぬきをはかった遊女が、どんな仕置きを受けるものか、玉里も話には聞いていた。しかし、こんな酷いものとは。玉里はひたすら耐えていた(廓祝言)。表題作他、悲恋を描く時代小説七篇を収録。
薩摩の密貿易で幕府の財政が揺らぐ。幕府の独占すべき北国の上質海産物を、薩摩を経て中国へ流しているものは誰か-密命を帯びた幕府隠密の捜査は、長崎から北陸、松前へと伸びる。幕末の日本海を舞台に、壮大な規模で展開する、時代冒険小説。
万延元年3月、桜田門外にて時の大老井伊直弼(彦根藩主)水戸浪士一味により暗殺さる。ご主君の仇を報ずるには水戸藩主のみ首級を挙げる他に道はない。「いかなる手段であろうとも水戸斉昭を討て」との密命が彦根藩首脳から元側役伊吹源太郎に下った。殿かたみの短銃を胸に、憤死した供目付の妻加代を連れ鉄壁の守りを誇る水戸に源太郎は潜入する。
江戸で日に千両の大金がおちるところといえば吉原。快楽の夢に酔いしれたつけは、翌朝になれば待ったなしにまわってくる。その貸金取り立てを請け負う、馬屋の2代目を、見事な器量のおえんが継いで…。虚栄の渦巻く色街で、若い女が生きてく様は、けなげな中にも強さが目立つ。著者会心の時代連作長編。
一度は断絶した服部家を再興し、配下の伊賀同心を率いる三代目服部半蔵は、英明だが軽率な行動が目立つ三代将軍家光の身辺警護を命ぜられた。将軍位をめぐる家光と弟忠長との暗闘。家光の命を狙う甲賀毘沙門天と半蔵の秘術をつくした死闘。非情な政治の論理は人々を血みどろの戦いへと導く…。家光と半蔵、徳川長期政権を切り拓いた表と裏二人のヒーローを主人公に描く長編小説。
10歳で丁稚奉公に出た小右衛門、学問好きが災いして店を追い出され、途方に暮れているところを大坂・船場の両替商・升屋の二代目に拾われた。そして十余年の後。失意の底で逝った二代目に、升屋の後事を託された小右衛門は、お店の苦境脱出に米どころ奥州・仙台に着眼、だが伊達藩は上方商人の嫌われ者で、小右衛門の苦闘が始まった…。大坂屈指の豪商にのし上った男の生涯を活写する傑作時代長篇。
「おれと一緒にいると、あんたもあぶないぜ」「仕方ないわ」-惚れてしまったんだから。…ゆき江のうちにはげしい気持ちがおこっていた。どっちへいくか、今きめよう。そういうおもいで五郎吉を安蒲団の上へ誘い入れたー「残菊燃ゆ」より。ほかに「情炎黄八丈」「妾小路の惨劇」「廓姉妹」など、大江戸八百八町を舞台に、八人の女の妖艶にしてしたたかな恋のかたちを鮮やかに描く、洒落た味わいの時代物傑作集。
正宗・吉光・義弘の三振りの宝刀に刻まれた謎の文字。御三家の命運を左右する黄金の埋蔵場所は…。尾張・紀州・水戸、そして幕府探索奉行の決死の戦いが繰り広げられていく…。息つく間もなく展開する気鋭の力作長篇!
奥州独立の野望実現に邁進する伊達藩ー江戸幕府の命運をかけて阻止をはかる老中松平定信と中町奉行の面々。ついに幕府の奥州討征令が下る。緒戦で優位に立った六藩同盟は強力な火器で幕府軍を追い詰める。中町奉行の精鋭は、最後の挽回策に賭けて伊達の奥地へと潜行していく。奥州の野望は成るか?