ジャンル : 外国の小説
ロンドンの路地裏の下宿屋に暮らすパーディタは、3カ月前に市場町で旅一座に拾われ、経理や衣装管理の仕事をしている。じつは彼女にはそれ以前の記憶がない。“パーディタ”も仮の名だ。ある日、仕立屋で用事を済ませ、急ぎ自宅に足を向けたつもりが、なぜか下宿屋ではなく大きな屋敷に帰り着いてしまった。「お、奥様」驚き顔の執事に中へ招き入れられ、彼女は混乱した。奥様って…?私は何者でもない、名もなき路地裏の住人だけれど。しかし、どこか見覚えのある部屋に通されてしばらくすると、怒った男性ーエピング伯爵が雷のごとく飛び込んできて言い放った!「君への要求はただ1つ。私たちの子供がどうなったかを話すことだ!」
「きみの名は?」名門貴族ジェームズ・オルドハーストに尋ねられ、ベッドに寝かされた娘は必死で答えた。「わたしは、アン…」嵐の夜、ずぶ濡れで行き倒れになっていたところを彼に拾われたが、彼女は名前以外のいっさいの記憶を失っていた。心身ともに弱り果て、不安ばかりが募るなか、何くれとなく世話してくれる優しくてたくましいジェームズに、アンはいつしか特別な想いを寄せていた。彼は誰もが結婚したいと憧れる、社交界随一の魅力的な貴公子。出自不明のわたしなんかと関わったら、彼の名誉に傷がついてしまう!密かに身を引く決意を固め、アンは屋敷からひっそりと姿を消した…。
最近の体調不良の原因が妊娠と知って、ヴィエナは愕然とした。医者から“妊娠できない”と言われていたのはなんだったのだろう?だが子供の父親ー富豪ジャスパーはこの知らせを歓迎しないはずだ。私は数日一緒に過ごしただけの、ただのベッドの相手だから。でも、男らしい彼は私を大切にしてくれた。そんな人は初めてだった。悩んだ末に、ヴィエナはジャスパーに赤ん坊ができたと告げた。ジャスパーがすぐに子供の父親になりたいと言ったのはうれしかった。けれど、彼が続いて口にしたのは“義務”という言葉ばかりだった。私がいちばん欲しいのは愛なのに、愛のない結婚が答えなんて…。
亡き夫の追悼式に現れた見覚えのある男性の姿に、スカーレットは凍りついた。アリスティド!なぜここに?2年半前、二人は恋人同士だった。だが億万長者で、名うてのプレイボーイのアリスティドは、結婚も子どもも不要と公言し、スカーレットとの正式な交際すら認めようとはしなかった。妊娠していた彼女は失望して別れを告げ、幼なじみの親友と偽装結婚して、密かに子どもを育ててきたのだ。詰め寄るアリスティドに、スカーレットは身を震わせた。“あなたには双子の子がいるの”なんて言えるはずもない…。
手術室専属看護師長のアミリアは27歳。やりがいのある仕事と良い仲間に恵まれ、充実した毎日を送ってはいるものの、唯一、婚約者のことで気を揉んでいた。昇進と倹約には熱心だが、結婚はおろか、そもそもアミリア本人に無関心すぎるのだ。釣り好きの父に誘われた北欧への3人旅も、結局彼は父娘を残し、仕事を理由に先に帰国してしまった。もう諦めるしかないの?そんなとき旅先で出会ったのが、ハンサムな医師ギデオンだった。父と同じ釣り好きで話は弾み、気遣いのできる穏やかな彼に、アミリアは急速に惹かれていく。でも…私には婚約者がいるわ。お見通しだと言わんばかりに彼が呟いた。「僕と結婚すればいい」
キャリーは育ての親だった伯父夫妻と、従姉夫妻の4人を事故で一度に亡くし、遺された赤ん坊ダニーを引き取った。たとえ貧しくても、かわいいダニーがいれば幸せだった。だが半年後、ダニーの叔父でギリシア大富豪のニックが現れた。「生活苦の独身女性に大事な甥は任せられない」なんて傲慢な言い分!キャリーは腹を立てたものの、ダニーが病気になり、ニックに助けを求めざるをえなくなる。すると彼の自家用ジェットでギリシアの別荘へ連れていかれ、信じられないことに…プロポーズされたのだ!
世の中に裸で立ち向かう青年たちは躊躇い、悩み、そして身命を擲つ。短いがゆえになおさら強烈だった彼らの最後の旅路。ひとりの悩める若者としての安重根を描き、韓国で33万部のベストセラーとなった歴史小説。
1948年、コロラド州アイオラ。ヴィクトリアは17年間、家と農園の外にほとんど出たことがなかった。母を早くに亡くし、桃農家の父と叔父、弟のために家事をこなすだけで日々は過ぎていく。そんな彼女の人生が突然変わる。謎めいた青年ウィルと出会ったのだ。彼は故郷をもたず、各地を放浪しているという。自由な彼といるとき、ヴィクトリアは自分も変わったように感じた。だが、町の人々はよそ者を疎んだ。それでも、ヴィクトリアはウィルを選ぶ。初めて父に嘘をついて、逢瀬を重ねる。だが、背後には悲劇が迫っていたー。大切なものを失いながらも、自分の道を進み、再生を遂げる女性の姿を描く感動作。アメリカ、イギリス、ドイツなどで続々とベストセラーリスト入りした、米国作家のデビュー長篇小説。
主人公クララは35歳。離婚して、幼稚園児と小学生の二人の男の子を抱え、テレビのプロダクション会社に勤め、番組制作の仕事、アルバイト、離婚した前夫、息子たち、セックスライフなど、問題を抱えながらもごくふつうの生活を送っている。…電気技師だった元夫は、会社経営を始めては失敗ばかり、クララに内緒で家を抵当に銀行から借り入れをするが、返済を迫られ大騒ぎになる。…クララに辛く当たる母親、父には昔からの愛人マイテがいて、離婚されるが娘とは連絡し合い、元の妻も愛している。登場人物は、スタイル、長所、欠点など活き活きと描かれ、いつでも市井で知り合えるような人々ばかりである。…あるきっかけで登場人物全員が一堂に会し、歌劇のフィナーレさながらの大団円。
2020(令和2)年から2023(令和5)年までに刊行された児童文学書・研究書7,198点を収録。「研究書」「作品」「付録 全集・アンソロジー一覧」の3部構成。「研究書」は1,009点をテーマ別に分類。「作品」は2,094人の著訳者の、のべ5,554点を内容紹介付きで収録。「全集・アンソロジー」635点も収載。巻末に「書名索引」「著者名索引(研究書)」「挿絵画家名索引」付き。
チベット発、シスターフッドの物語。ラサのナイトクラブ“ばら”で働く4人の女性たち。花の名前を源氏名として、小さなアパートで共同生活を送る彼女たちは、それぞれが事情を抱えてこの町にやってきた。暴力や搾取、不平等の犠牲となりながらも支え合って生きる彼女たちの心の交流と、やがて訪れる悲痛な運命を、慈悲に満ちた筆致で描き出す。
失恋した瞬間を永遠に繰り返す幽霊、方向音痴の幽霊、雨となって降り注ぐ幽霊、転送装置が生み出す幽霊…イタロ・カルヴィーノ短編賞受賞作家が贈る、時に切なく、時におかしく、そして時にはちょっぴり怖い幽霊たちの物語を100編収めた、ふしぎな短編集。