1990年10月発売
自業自得とはいえ、ガリオン一行に愛人を殺害されたグロリムの尼僧チャバトは復讐鬼と化した。だが、高僧アガチャクとマーゴスの王の面前で即座に私怨をはらすわけにはいかなかった。なにしろ、ガリオンたちはマロリー皇帝暗殺を企む人物を護送する任務を負っているのだ。ただひたすら機会を待つうちに、やがて事態は意外な展開を見せはじめた。なんと、暗殺者は偽ものだったのだ。となれば、もはやなんの遠慮もいらない。今までこらえていた憤怒がついに爆発し、尼僧の口から不吉な呪文がこぼれ出た。悪魔を呼び出す禁じられた呪文が。
メキシコ湾に浮かぶ巨大な石油採掘デッキ“シー・ウィッチ”。石油王ワース卿が最新の科学技術を駆使して建造したこの装置は安い石油の大量供給を可能にした。だがそれは石油市場を陰で支配する男たちには許すことのできない事態だった。石油価格の下落を防止するため、世界有数の爆破の戦門家クロンカイトにシー・ウィッチの破壊が依頼される。周到かつ巧妙な手段でワース卿を追いつめてゆくクロンカイト。シー・ウィッチ破壊のため、彼がとった驚異の作戦とは?巨大な海の魔物をめぐる息づまる攻防戦を王者マクリーンがスリリングに描く。
深夜のハーレム地区で警官が指名手配中の殺人容疑者を射殺した。事件は単純な正当防衛と思われたが、“Q&A”(尋問調書)をとるよう命じられた地方検事補ライリーはかすかな疑惑を抱く。やがて彼が知った、検事局全体を揺るがす忌わしき事実とは?汚職、犯罪、人種差別…ニューヨーク市警の実態を活写した傑作社会派サスペンス!
最後に人を愛してから長い時が経っていた。殺された両親と養母の復讐を果たしたフィッシング・ガイドのソーンは、フロリダ・キイズで人目を避け、ひっそりと暮らしていた。そして恋人も去ったいま、彼には幼なじみでFBI捜査官のゲートンと、その妹だけが唯一心を許せる相手だった。しかしゲートンが行方不明になり、身代金を要求する脅迫状が届けられるに及び、ソーンは血も凍る凄惨な暴力の渦へと再び巻き込まれていった…愛憎と欲望にとりつかれた人々の悲劇を清冽な筆致で描き出す『まぶしい陽の下で』に続くフロリダ・ミステリの秀作!
第二次大戦直後、ドイツの秘宝を手に元ナチス将校がアメリカに潜入した。ドイツ空軍元帥ゲーリングの逃亡ルートを拓くことが目的らしい。米国情報機関の依頼を受けた私立探偵ルー・キャシディは将校の足取りを追うが、なんとその男はルーの死んだはずの妻と結婚していた…。虚実を巧みに織りまぜて描く、リリシズム溢れるノスタルジック・ミステリの巨篇。
横浜の名門高校の同窓会場で、女性市議が毒殺された。検事である夫と別居中の元ニュースキャスター彩子は、現場にいたために事件に巻込まれるが、やがて重要容疑者が三浦半島の旧家の密室で死亡した…。子供をかかえて自立をめざすが彩子が、私生活でも謎ときでも試行錯誤を繰返しながら、探偵役に挑む。オール読物新人賞、『見返り美人を返せ』で横溝正史賞を受賞したコンビ作家のひとりが、女性の視点から現代社会を抉るスケール雄大な長篇。
クリスマス・イヴの夜、バーで金髪美人に話しかけた主人公は、それがきっかけとなり次々と不幸な出来事に襲われます。しかし、そんな彼にかわいい中国娘が助っ人につきました。雪が降りしきるダウンタウンでのハートウォーミングな冒険。
殺されたのは有名宝石店の美人社長。しかも別れた元女房。探偵コンビの相手はポニーテールの女子大生。事件を彩る華やかな女性たち…。ぼんやり佇んで、人生をやり過してきた中年男が、やむなく少し前向きに歩き出した街は、花の盛りの青山・渋谷・銀座界隈。事件の終りはいつも哀しい。粋な会話の都市物語。
盗賊団の親分たちだった祖父が組織した抗日ゲリラ隊。その祖父に連れられて数奇な運命をたどる「わたし」の父。共産党軍と国民党軍、日本軍とその手先の傀儡軍、さらにあやしげな秘密結社「鉄板会」などがからんで展開する壮大な欲望と血と愛のロマン。
満開の桜の下、弘前城を身じろぎもせず眺める男の姿があった。黒木豹介ー国家から殺しのライセンスを与えられた、日本で唯一人の“特命武装検事”である。偶然にも、日本財界のゴッドファーザーと異名をとる滋賀雷鋒にでくわした黒木は、滋賀が、不審な外人グループにつけ狙われていることに気づく。苦渋に満ちた雷鋒の表情…。黒木は巨悪の存在を直感し、稔書高浜沙霧に指令を出した。
犯罪発生件数が一番多い火曜日に事件は起った。東京着、6時57分の寝台特急“出雲”4号のA寝台個室1号室と2号室で、男と女の死体を発見。女は関西のストリッパー三条ひとみ、男は大学教授の西川太郎と判明。死亡推定時刻は男が死後4、5時間、女が死後10時間と微妙に食い違っている。鉄警隊の清村公三郎部長刑事は丸の内署の秋山刑事と組み独自の捜査に乗り出す。好評、鉄警隊シリーズ第2弾。書下し長篇。
航空検察官・伊吹竜のもとへ奇妙な遺書が届いた。文面は“虎は必ず放たれる”。かつて北朝鮮への亡命にハイジャックを企て失敗、死刑を執行された男のものであった。同じ頃、北朝鮮工作員とみられる男の惨殺体が発見され、所持していた暗号から「竜」の文字が浮かんだ。折しも全斗煥大統領の来日を控え、国際的謀略を嗅ぎとった伊吹竜は、「虎」と「竜」を追って大阪の街に潜行した。長篇航空アドベンチャー。
外交官であった能垂伯爵を父に、フランス人を母にもったヒネモス・のたり氏は、パリの下町に40年も住む売れない画家だ。ある日突然、パスポートを盗まれ宿無しになった日本人娘・野田ひとみがころがり込む。彼女はモデルとなり、ヒネモス氏の副業である探偵の助手も務め、ついでに処女も捧げる。“女の都市”パリにくり拡げられる難事件に体当りするヒネモス氏とひとみの活躍を描く連作ユーモア・ミステリ。
恋人より仲良しの僕とレイコは、ただの友達同志。大好きだから自由な二人でいたいと願う僕は、彼女のひたむきさに戸惑い、揺れ動く。試験休みの4日間。神戸の街を雨のように通り過ぎた17歳の恋を描く、永遠のティーンエイジ・ノベル。文芸賞受賞作。
動乱の時代を迎えようとしている安政年間、第13代将軍・徳川家定の後継ぎを巡って水戸・一橋党と紀州・南紀党は熾烈な勢力争いを繰り広げていた。南紀党を率いる紀州藩付家老水野忠央は老中首座の阿部正弘を暗殺、一方、一橋党も忠央や井伊直弼の懐刀長野主膳の暗殺を企てるなど、攻防は一進一退を繰り返していた。そんな折、一橋党の首魁水戸斉昭が失脚、直弼の大老就任が突如実現したことで形勢は傾くが…。
日美子は友人の皆川昭子に招かれた。タロット占いのお礼にご馳走したいという。ところが昭子は何者かに刺し殺されていた。数日後、昭子から1枚のタロットカードが届いた。調べてみると歌麿の筆によるものらしい。さらに昭子の夫・治郎の許に脅迫状が、そして治郎も…。友の死に迫る日美子の名推理。