2024年7月発売
自分が小説の中の悪役貴族だと気付いたアルバンは、重い腰を上げ剣と魔法の鍛錬を始めた。主人公との決闘に敗れて没落するのは絶対に避けたい。少しずつ実力がつき始めた矢先、悪い噂ばかりの悪役令嬢が嫁いでくることが決まってしまう。しかしーいざ会ってみれば、どタイプどストライクの最高の嫁だった!?悪評は元婚約者の謀略で、実は裏では屋敷で家なき子たちへ無償の愛を注ぐという天使っぷり。あまりの尊さに破滅回避も忘れ、彼女の冷えた心を強引に解かし、愛妻を陥れたクズ公爵への復讐を決意。夫婦の悪名を逆手にとっておびき出し…?「俺たちの邪魔をするなら、蹂躙するだけさ」悪×悪の最凶夫婦が織りなす報復逆転ファンタジー!
「勇兵団」生き残りの声をありのままに綴る。仙台に本拠を置く陸軍第二師団「勇兵団」の一兵卒として南洋に送られた著者は、旧ビルマと中国の国境で、雲南遠征軍を相手に苦戦を強いられている龍陵守備隊を救出する任務に就く。しかし圧倒的な物量の差はいかんともしがたく、上官、同僚が次々と亡くなり、負傷していった。-挙国一致だと。糞食らえだ。尽忠報国だと。糞食らえだ。…気力なし、体力なし、プライドなし、自信なし、希望なし。…私は、もう、なにがどうでもいいような気持になっていたのだ。-その絶望的な戦いをともに経験した勇兵団の生き残りを中心に、丹念に取材を続けてまとめられた一冊。相手は饒舌ではない東北人だが、それだけに一層言葉に重みが感じられる。古山高麗雄の戦争三部作のうち、『断作戦』に続く第二作。
芥川賞候補作3篇を含む珠玉の作品集。-あの、二年前の別れたあと、私は毎日、新聞の社会面をみるたびにびくびくした。女の自殺ばかりが目につき、不安は半年以上もつづいた。…彼女の死、それが、それまでは新しく生きることも死ぬこともゆるされない、ひとつの刑の期限のように思えたのだ。-ある女優の自死をきっかけに、冷たく別れたかつての恋人・小田富子のことをあらためて思い起こす“私”。突然、消息不明だった富子から「会いたい」という手紙がきて…。表題作「演技の果て」のほか、米兵に媚びを売る日本人女性に複雑な思いを抱く日本人少年を描いた「その一年」、乳飲み子を船から海に投げ込んだ女の心理を綴る「海の告発」という芥川賞候補作3作品と、「煙突」「猿」「遠い青空」「頭上の海」といういずれ劣らぬ4篇の短篇からなる作品集。
早慶剣道対抗戦と部員たちの戦争物語。大正14年開始の剣道早慶戦は昭和18年で中断。祖国に命を捧げた部員らと、試練を乗り越え学校剣道を復活に導いた有志らの熱き青春群像。
扁桃体が小さく、怒りや恐怖を感じることができない十六歳の高校生、ユンジェ。祖母から「かわいい怪物」と呼ばれた彼は、目の前で祖母と母が通り魔に襲われたときも、黙ってその光景を見つめているだけだった。事件によって一人ぼっちになった彼の前に現れたのは、もう一人の“怪物”ゴニ。激しい感情を持つその少年との出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていくー。2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位。
中学生の本村結芽は、急死した伯母の部屋で、愛読する児童書の原稿を見つけ舞い上がる。『鍵開け師ユメ』シリーズは、孤独な小学校生活を過ごした結芽にとって、唯一の友達であり、心の拠り所だった。伯母は、その作者イズミ・リラだったのだ。最新作を夢中で読むが、しかし遺稿は未完のまま。どうしても続きが読みたい結芽は、自分で物語の続きを書くことを決意する。第一巻からページを繰り、主人公ユメの魔法の呪文を唱えると、物語の中へ飛び込めた結芽。ファンタジーの世界と現実を行き来できるようになり、自らの冒険を書き記していくが、何かが足りない。物語に息吹を吹き込むには、伯母の、イズミ・リラの人生を知らなければー。現実を生きる自分、ユメとしての自分、伯母を探す自分。結芽の本当の冒険が、はじまった!
コミュニティサイトへの投稿で、住民を混乱に陥れた「春の日パパ」とは誰か?警備員になったユジョンの父のその後は?一人デモをするアン・スンボクの動機とは?極狭い考試院に住み、塾でアルバイトをするアヨンの夢とは?不動産バブル、過剰な教育熱、格差に翻弄される住民たちの喜びと悲しみ。資産価値にこだわる者の果てしない欲望と苦悩。持たざる者の苦労と、未来への希望。架空の町のマンションを舞台にした連作小説。
マサチューセッツ州スタークフィールドで冬を過ごすことになった語り手の「私」は、足をひきずった寡黙な男をたびたび見かけていた。聞くに、イーサン・フロムなるこの土地の男で、かつてひどい「激突」を起こして以来、足が不自由になったのだという。思いがけず「私」はフロムに馬橇で駅まで毎日送迎してもらうことになるが、ある晩、ふたりは帰り道に吹雪に巻き込まれ、フロムは途上にある自宅に「私」を招き入れる。そこで「私」が目にしたものとはー。寒村の孤独、親の介護、挫かれた学業、妻の病…厳冬に生を閉ざされた主人公フロムを襲う苦難、そんな日々に射し込んだささやかな幸福、その果ての悲劇を精緻な技巧で描くアメリカ文学の古典。待望の新訳。
愛おしいのに、疎ましい。かけがえのない「他人」のあの子。死んだはずの親友が四年ぶりに現れて、もつれはじめる友情ー。大型新人、鮮烈なデビュー作!「わたしというものは、いなかったらばそっちのほうがよかったな」死んだはずの親友・朝日からかかってきた一本の電話。時子はずっと会いたかった彼女との再会を喜ぶが、「住所ない」と話す朝日を自宅に招くと、いつしか家に住み着いてー。第171回芥川賞候補作。
多忙で妻を顧みない夫ドメニコから逃げだして4カ月後、レイは彼の伯母の弔問のため、ヴェネチアの屋敷を訪れた。なんて愚かなの?出迎えた夫にうっかりときめくなんて…。翌日、ドメニコの親代わりだった故人の遺言が読みあげられ、レイは思わず耳を疑った。彼が屋敷を相続する条件として、2回目の結婚記念日を妻と共に迎えることが必須だという。「屋敷は絶対手放せない。半年間、夫婦円満のふりをしてくれ」ドメニコの懇願に屈し、レイは渋々“従順な富豪の妻”に戻るが、接触は頬へのキスまでというルールはすぐに破られて…。
「やめるんだ、今すぐに」礼拝堂に男性の声が響き渡り、エミーはおなかのふくらみがめだつ不格好な花嫁衣装で振り向いた。テオは数カ月前まで憧れのボスで、純潔を捧げたギリシア富豪だ。だが彼が自分などを愛するわけがないと思い、エミーは妊娠に気づくとなにも言わずに会社を辞めた。そして近所の詮索から家族を守り、子供を育てるために、父の友人との結婚を決意した。今日はその結婚式当日だった。テオはかつての秘書の結婚に異議を唱えただけではなかった。花婿を追い払い、自分が花婿としてエミーの唇を奪った!
嘘でしょう?エンリコが交通事故で意識不明だなんて…。矢も楯もたまらず、ジャンナはすぐに病院へ駆けつけた。15歳で出会ったときから、ずっと彼に恋い焦がれてきた。子ども扱いされ、相手にされないまま時が過ぎ、今や富豪となったエンリコは美女と婚約したと聞く。それでもジャンナは病床に付き添い、必死に祈り続けた。5日後。奇跡が起き、エンリコの意識が戻った。だが医者は冷たく宣告するー下半身に麻痺が残るというのだ。婚約者は早々に見切って去り、呆然とするエンリコを前に、ジャンナは誓った。たとえ愛されなくても彼を支え続けようと。
浪費三昧だった父が莫大な借金を残して亡くなり、お金の工面に奔走するアントニア。でもわずかな収入しかない彼女にとうてい返せる額ではなく、途方にくれていたとき、何度か見かけたことのある長身の男性、大物実業家レイフが借金返済の一部を肩代わりしていたと知る。困惑するアントニアに、彼は青い目を光らせて言った。「半年間、僕の愛人になれば、借金をすべて肩代わりしよう」なんですって?あまりの屈辱にアントニアは即座に拒んだ。だが父の横領疑惑が発覚し、どうしてもお金が必要になる。アントニアは悩んだすえ、レイフとの愛人契約に甘んじるがー。
ハーロウはある嵐の日、意識を失った男性を見つけ、その正体に驚く。それは4年前、故郷を捨てて億万長者になった初恋の人ナッシュだった!彼がフロリダへ発つ前夜、たった一度だけ結ばれたが、その後、彼は故郷に戻らず、いっさい連絡もなかった。やがてハーロウは新しい命を授かったことに気づいたものの、ナッシュの邪魔をしてはいけないと、彼の子とは誰にも言わなかった。それに、子供のこと以外にも、ナッシュに言えない秘密があった。あるとき彼の代理人が現れ、祖父に多額の借金を負わせた結果、母の形見の指輪まで売らざるをえなかったことを祖父に口止めされていた。ナッシュに人生を狂わされた。でも、瀕死の彼を放ってはおけない…。