制作・出演 : アンゲリカ・キルヒシュラーガー
今やもっともあぶらの乗っているメゾ、キルヒシュラーガーのシューマン。すみずみまできっちりと細やかに歌い上げ、なめらかに的確に変化する歌唱。瑞々しい声質と艶やかさも魅力であり、万人にお勧め。ドイチュの伴奏も抑制された叙情性が歌手の声とピタリ。
テクストを尊んだヴォルフよろしく、言葉を丁寧に扱い、柔らかく温かい声で歌い紡ぐ。「捨てられた娘」の寂寥感も押し付けがましくなく内側から漂い出、名曲「隠棲」での名唱も胸に染みる。ベテラン、ドイチュの伴奏は音色、バランス、間など、どれも格別の味わい深さ。★
伝承歌とクラシカルな作品によって編まれた、実に落ち着いた内容の一枚。ノーブルな歌声の素晴らしさはもちろんだが、ピアノ伴奏の10、11、12曲目など、選曲にも唸らせられる。おなじみの「きよしこの夜」は2台ギターによる原典版で、ギターと声とのバランスが敬虔な気分を誘ってくれる。
バロックから現代まで幅広いレパートリーの中から身の丈に合った役に没入できる、きわめて現代的な歌い手キルヒシュラーガー。メゾに要求される優しさと雄々しさという両性具有的資質を、品格をもって表現できる稀有な才がヘンデル・アリアに繚乱する。★
チェロ協奏曲と同じ旋律や内容的な関連が認められる歌曲を集め、この名作の創作の秘密に触れて、より深い理解を求めようという試み。フォーグラーの独奏は内省的な歌が魅力的だ。協奏曲でのオケは、いくぶん分析的ながら入念にバランスが整えられ、テクスチュアが磨かれている。
キルヒシュラーガーの自然体で優しい歌声はバロック音楽にも合っている。このバッハ・アルバムでは、カンタータの他、「マタイ受難曲」や「ミサ曲」のアリアも含まれ、バロック・ヴァイオリンの名手カルミニョーラとの絡みが聴きどころとなっている。
神に背いて悪魔と契約を交わした“ファウスト”は、その刺激的なテーマゆえに多くの作曲家が取り組んだテキストだ。それらの作品群に、人間的な音楽づくりでは天下一品の佐渡裕が体当たりした異色の1枚。
今、ウィーンですごい人気のキルヒシュラーガーのソロ・デビュー・アルバム。再評価の高まっているコルンゴルトとアルマ・マーラー、そして、マーラーの初期の歌曲が収められている。フレッシュで明快な声をもつニュー・ヒロインの登場。