制作・出演 : オーケストラ・アンサンブル金沢
最高の音で楽しむために!
1番と9番を組み合わせることで、ハイドンから引き継いだ音楽作法を四半世紀の時間をかけて展開し次世代のロマン派に渡していく……ベートーヴェンの仕事の意義と苦悩を聴き手に伝えたい。そんな意図が垣間見える。金聖響がベスト・パートナーのOEKとともに築いた大きな成果だ。
OAKライヴ録音シリーズ7期目の完結編となる本作は、室内オケ編成でありながら、優秀な管楽セクションも有することのデモの趣。名門ギャルドの第9代楽長を務めたブトリーによるオケの委嘱作品を、須川が野太いサウンドで初演した演奏会の貴重なライヴを中心に、小粋な選曲のディスクだ。
遠藤真理の3枚目のソロ・アルバム。多重録音のチェロ三重奏版による「龍馬伝紀行」をはじめ、無伴奏、ピアノ伴奏、オーケストラ伴奏と、編成は多岐にわたっている。バッハは遅めのテンポで丁寧にニュアンス豊かに弾き込んでいる。少しおとなしめだが、美しい響きで静謐さの漂うアルバムとなった。
アンサンブルの総体、そして弦楽器のみと管楽器のみ。というように、ここにはオーケストラ・アンサンブル金沢を裸にしてしまうような手強い曲が並んでいる。しかしピヒラーの指揮のもと、技術・スタイル・表現のどこをとっても隙がない。好演である。
安永徹がコンマス席からオーケストラ・アンサンブル金沢をリードした演奏会のライヴ。ショスタコーヴィチでは市野あゆみの軽快なピアノが聴ける。ハイドンでは安永もソロを披露し、メンバーとアンサンブルを楽しむ。そして丁寧に作られたシューベルト。
イギリスにまつわってとりどりな選曲が耳を楽しませる。パーセルやディーリアスのサラと透明に色が漂う響きの感触、ハイドン、モーツァルトのあざとさを避けたあくまでもの明快さ、そしてブリテンの響きの仕掛けに呼応する鋭敏な動き。質実確か。障りがない。
古楽器的な響きを取り入れているのは従来と同じ。だが、今回はそれがだいぶ板についてきて、音楽がより生き生きと鳴っている。モーツァルトはちょっと不自然な表情が感じられる部分があるが、悪くはない。いっそう覇気があって井上らしいのはハイドンの方。
スペインの若きトランペット奏者シメオが颯爽と奏でる協奏曲集。名手アンドレ直伝の目を見張るテクニックが堪能できる。フンメルの第3楽章、超絶技巧を感じさせぬ楽々たる天真爛漫な音の飛躍に血が騒ぐ。聴き終わって痛快感の残る愉悦に満ちたCDである。
CDデビュー10周年を迎えた高木綾子の通算10枚目のアルバムは、初のモーツァルト。しかし“満を持して”との気負いは微塵も感じさせず、テクニックのキレを軽妙さに巧く転じて、ナチュラルな風合いの心地良い演奏を聴かせてくれる。「フルート協奏曲第2番ニ長調K.314」&「フルートと管弦楽のためのアンダンテ ハ長調K.315」では自作のカデンツァを使用。
ロマン派の交響曲を、現代的・古楽的な考察及び奏法両者を取捨選択して演奏する、しかもそれを小編成で行なうという、まさに昨今ならではの意欲的な試み。重厚長大・濃厚な情緒・暗欝な印象を与えてきたこれまでのブラームス像は、軽く澄明な響きと明快な細部、そして鮮やかな運動性と確かな形式感を備えたものに一変。でも考えてみれば、ブラームスはロマン的古典主義者。こうした方法論がふさわしいことは言うまでもない。番号が下るにつれ、コンセプト優先の演奏が次第に自由でのびやかになっていく過程も面白い。
吉田のデビュー10周年を記念して収録されたもの。いくらか慎重ではあるが、自然に素直に歌っているところに好感が持てる。後半に小品が2曲あるが、こちらはいっそうのびのびと弾いている。伴奏は小編成だが、それに反して響きはたっぷりと取ってある。
4作はそれぞれ別公演(一柳はリハ?)からのもの。岩城お得意のジャンルというだけでなく、充実したソリスト陣やOEKの高い合奏能力も加わってどれも緻密な仕上がりとなっている。武満らの濃密な世界は細やかに描き分けられ、メシアンでは胸がすくようなドライヴ感も。
「イカの哲学」はOEKの委嘱作で、早逝の哲学者・波多野一郎の唯一の著作『烏賊の哲学』を基にした語り付きの協奏曲(台本:中沢新一)。ベートーヴェンは、すっきりとしたオーソドックスな佳演だが、ミッチーらしいサービス精神や、意表を突くアイディアを求めたい気も……。
OEKの今を象徴する一枚。堀内貴晃(77年、金沢生まれ)の曲は日本民謡の要素を取り入れた小品。アウエルバッハ(73年、ロシア生まれ)の作品はシリアス。ベートーヴェンは快速テンポの演奏。アンサンブルも良い。現代のスタンダードともいえる好演。
三浦友理枝のピアノは、粒立ちが良く、音も澄んでいて、美しい。ラヴェルの作品によく合っている。協奏曲ではOEKが好サポート。協奏曲とソロ作品との組み合わせがユニークといえるが、三浦の音楽性に合った曲をセレクトした選曲の良さが光る。