発売元 : 日本ウエストミンスター株式会社
パリ生まれでコルトーに師事、エネスコやE.フィッシャーとの共演でも知られる往年のピアニスト、ジャノーリ(1915〜1979)。短めのフレージングで表情は折り目正しいが、振幅の大きなルバートが古き良き時代を感じさせる。板起こしだがノイズはほとんどなく良質な復刻。
全5集で完結するシリーズの3枚目。ジャノーリ(1915〜1979)は長くパリ音楽院の教授も務めたピアニスト。タッチにおいても音色においても洗練されたピアニズムは、モーツァルト演奏でも生かされて、時代を超えた美しい演奏となっている。それにしてもこの自然さは見事だ。
フランスの名花ジャノーリ(1915〜1979)の残したモーツァルト全集の一枚。速い楽章はいくらか遅め、遅い楽章は気持ち速めの穏やかな演奏。気品と粋な雰囲気にあふれ、いかにも貴婦人という感じだ。LPからの復刻だが、ノイズは少なく、音質は非常に明瞭。
ほのかな温もりさえ感じさせる叙情的なラヴェルである。研ぎ澄まされた硬質の響きとは対極の演奏と言って良い。豊かな音楽が満ちあふれる「水の戯れ」などまさに絶品。こうした演奏姿勢は「夜のガスパール」のような難曲でも変わらず、表情はあくまでもしなやかだ。
60年に発売された2枚のライヴ盤をCD1枚に編集・復刻(3曲が割愛された)。半分ほどの曲目はモノラル収録だ。最後の2曲は古い合唱ファンならお馴染みの編曲の“初演”音源。技術的には今やなかなか長閑と感じるものだが、時代を映した肩の凝らない演唱に、膝を打つ方も多そうだ。
誤解を恐れず言いきるなら、ブラスの魅力の一端は一種なんの迷いもない直情径行さにあるーーそんな評価がもっとも似合う一枚だ。集められた14曲は、どれもどこかで記憶の底に刻み込まれたようなメロディで、一度耳を傾けさえすれば間違いなくアドレナリンが沸きだしてくる。
バドゥラ=スコダの20代半ばの録音。LPからの復刻で、音は古いがピアノの音の粒立ち、音色の変化、ニュアンスなどは聴き取れる。演奏はテンポの変化や間の取り具合、アクセントの付け方など、いずれも控えめで、それが演奏を端正なものにしている。刺激的ではないが雰囲気のあるいい演奏だ。
可愛らしく叙情的なキャラクター・ピースがあふれ出てくるアルバムである。ロマン派から印象派のピアニズムを継承したかのような佳作が26曲も収録されている。半世紀以上にも及ぶという有馬の創作活動のライフワーク的な集積。心安らぐアルバムである。
大言壮語したり技の切れ味を聴かせるわけでもないので、一聴すると何の変哲もない平凡な演奏という印象を受けるかもしれぬ。しかし、そのノーブルな慎ましさのうちにある微妙な陰影と穏やかな静けさは、趣味良く充実した音楽的時間をもたらしてくれる。
映画監督の故・小津安二郎が聴いていたという鎌倉文学館所蔵の28枚のSP盤からのCD化。そのすべてが洋楽で、ヨーロッパ編とアメリカ編の構成。日本的モダンといえる映像を撮った小津が、往時流行の最先端といえるポップスを聴いていたことがわかる資料だ。
バドゥラ=スコダが、最初の来日時に録音したもの。LPからの復刻だが、音に不満はない。グルダ、デムスとともにウィーン三羽烏と称されて、注目を浴びていたころだ。どれも丁寧に弾き込まれていて、ロマンティックでとても美しい。いいピアニストだなあと、あらためて思った。
実践的な聴音レッスンにもなっている。1問ごとに2分の2拍子で4小節?8小節をピアノの演奏により4回?6回聴ける構成となっている。時間が掛かりそうだが、勉強しているうちに……と思えてくる。CDで聴音を出題、回答はライナーの譜面という仕組。
子供のためのアルバムで、子供向けと親向けの解説が併記されている。しかし、演奏家を見ると、あっと驚く。戦後の日本音楽界を支えてきた錚々たるメンバーが揃っている。田村宏、荒憲一の師弟連弾なども見逃せない。そして皆さん、実に真摯な演奏をしていて感動した。
画家・王子江によるジャケット絵、ルビつきの丁寧なライナーなど、良い仕事が際立つ“子どもたちに贈るエッセイ”シリーズは、国内演奏家のアナログ名演アーカイヴとしての役割もまた担っている。江藤俊哉&山田一雄による「チゴイネルワイゼン」など、他で聴けない音源の貴重なこと。
78年という時を感じさせる前田のピアノと、この当時の録音の特徴を思い起こさせる荒川のベース音。30年という時空を超えて聴こえてくるピアノ・トリオからは、時代の感性、ジャズの在り様が伝わってくる。一部でカルト人気を誇る尺八のネプチューン海山が「竹・ブルース」にゲスト参加。
瀧廉太郎の主要な30曲を、平井康三郎が合唱とピアノを加えた弦楽アンサンブルに編曲したアルバム。2曲あるピアノ独奏曲も、ピアノと弦楽アンサンブルの協奏曲風になっている。オリジナルとは違うけれど、洋楽草創期の才人、瀧の音楽を楽しむには最適なアルバムと言える。