1995年10月21日発売
最近の演奏家が、フレーズのものすごく細かいワザにこだわったり、一分の隙もないアンサンブルを見せたりして、それがうっとうしくて、もう少し普通に音楽できんか? などと思う人にはこのホルショフスキー先生とブタペストSQのシューベルトを。
オルガン音楽と一口に言ってもその演奏はさまざま。純粋な器楽曲として響くもの、宗教的体臭が濃厚なもの。ビッグスのコンセプトはもちろん前者。聴く者を「神」の前に引っ張り出したりせず、ひたすら音楽美のみを提示する。音色の多彩な変化も効果的だ。
モーツァルトで高い評価を受けていたリリー・クラウスの名盤。繊細かつ積極的な表現は60歳代の演奏でも健在だ。的確なアーティキュレーションとダイナミクス、生き物のようなフレージングから成る音楽は、清潔で、かつ聴きごたえがある。
ゼルキンの(2)は3度目、他は2度目の録音。いわゆる3大ソナタに「テレーゼ」を加えたもの。ゼルキンの演奏は、ベートーヴェンに真摯に取り組んだもので、そこから描き出されるベートーヴェン像は、実に直截的な姿で逞しいものとなっている。
(1)〜(10)は、ショパン弾きとして名をなした往年の名ピアニスト、ロシアのブライロフスキーの演奏。ポロネーズもワルツも情熱的で男性的でたくましい。(11)〜(14)は、フランスの名ピアニスト、アントルモンの演奏。華麗さのなかに温厚な味わいをたたえている。
今や1つのファッションとなって流行しているサティ。グノシェンヌ5曲とジムノペディ3曲の間に他の曲を挟み込んでいくやり方がなかなか面白い。気ままにというタイトルの由縁だろうか。1954年生まれのヴァルサーノの本邦デビューCD。
アントルモンのフランス音楽なら安心して聴ける。優しくて、美しくて、おしゃれで、心安らぐものがある。ゆったりとしたテンポの繊細で美しい曲が多く選ばれていて、BGMとしても使えます。それに、値段も1000円だし……。
60年代後半から70年代前半にかけての海野義雄の録音。(1)や(2)などは、傲慢なほどに技術が冴えわたっている。こんなにバリバリ弾いて、凄すぎる。でも、クライスラーは、もっと柔らかく弾いていただきたい。とても元気で威勢のよい演奏が揃っている。
美しい演奏だ。全体としては、この曲のもつデモーニッシュな側面よりも、自らの心を慰める深い締念のほうに焦点が当たっている。テンポの設定も良く、合唱団の発声も的確。版は通常のジュスマイヤー補筆のもの。歌手も好唱。
デイヴィスはエレガントな感覚や宗教的な敬虔さに寄り掛からず、音楽的な構成を浮き彫りにする。英国のオーケストラならではの、ほの暗い音色には多少の違和感を覚えるが、抒情的な美しさは格別である。抑制ぎみに歌うポップの澄んだ美声がひときわ印象的。
ブームは未だ続いていると見えて、またもやグレゴリオ聖歌のアルバムである。といっても録音は69年と古い。演奏としては、どれも粒が揃っており、正に聖歌の模範的歌唱といえるだろう。曲順も教会の暦に添って整えられているから、なおさらだ。
77年から82年にかけての三百人劇場でのライヴ・シリーズ。若々しい色気を発散する登り坂にあった頃の話芸は、とにかく小気味のよいものである。席亭がなくてもやっていける数少ない落語家にすでに出来上がっている。今よりもテンポが多少速いようだ。