1995年10月21日発売
3曲とも演奏団体が異なるが、総じて明るく、弦楽器の光沢のある豊かな響きが典雅な雰囲気を醸し出している。モーツァルト2曲はやや旧タイプの正統的な演奏だが、「四季」には時々「ンッ!?」と思う瞬間があり、結構侮れない(特にチェンバロ)。
59年収録とは思えないほど新鮮な音。ワーグナーの音楽の中には、明・暗の二面性が混沌としているが、明の部分に光を当てた演奏なら何といってもオーマンディだ。フィラデルフィアoをフルに鳴らした豊麗なサウンドの世界は、いまだに輝きを失っていない。
58,63年の録音だからハイファイとはいかないが、音色的にはとてもきれいで十分幸せになれる。ストコフスキー、オーマンディの長期政権で確立されたフィラデルフィア・サウンドと細部までみごとにかみあうアンサンブル。1000円は絶対にお買い得。
「展覧会の絵」と「シェエラザード」というロシア物の双壁がなんと1000円という廉価で登場。ダイナミックな音響と表現の多彩さで知られるオーマンディならではの滋味にあふれた秀演である。オケの醍醐味が十二分に伝わる1枚だ。ジャケットの写真もなかなかいい。
オーマンディはこれらの曲を得意としていて、数年後RCAに再録音している。音はその方が良く(5)など多少聴き劣りする。しかし演奏のコンセプトはほぼ同じ。(1)などこの方が溌剌としていて良いくらいだ。コストパフォーマンスの高い名盤としてお薦めしたい。
バーンスタインがフランス国立oを指揮した近代フランス作品。(2)の色彩感と躍動感は期待したほど派手ではないが管楽器の音色が際立ち、十分魅力的。同じフランスものながら後半のオーマンディが持つオーソドックスなカラーとの対照性が面白い。
カラヤンしかり、オーマンディしかり。やはり並の指揮者ではこうした曲を楽しませられない。少しもイヤ味にならずにツボを心得た表現は、強烈な個性には欠けるものの、オケがとびきり上等なこともあって、ゴージャスな喜びを与えてくれる。名匠の技だ。
まるで学校の音楽の授業の教材用という選曲。要するにオーケストラ入門なのだ。手元にスコアを置いて聴くにはもってこいだろう。演奏者も断る必要がないほど一流の人たち。50年代の録音はヒスが少し気になるが。
これが1000円なんて、いい時代になったものです。ずばりお買い得です。20番の冒頭からひきしまった音楽作り。しかも最近の演奏家によく見られる、いかにも細部まで完璧にコントロールしてますと言わんばかりの作為的ないやらしさがない。65年の録音。
右手の故障から一時ピアニストとしての活動を中断していたフライシャーだが、現在は左手のためのピアノ作品を協奏曲、室内楽、独奏曲全てにわたって網羅録音中。これは61年に収録されたもの。作品と演奏が不屈の精神を共有して、力強く生き続けている。
感傷的な表現を払拭し、キリッと引き締まった棒さばきから生まれるメロディがフレッシュ。60年代の初め、バーンスタインが古典派やロマン派の音楽に、次々を新風を吹き込んでいた頃の「未完成」。晩年の演奏にはない透明感やみずみずしさが魅力だ。
「鋼鉄のタッチ」と呼ばれたギレリス(決してプロレスラーではない)のチャイコフスキー((1))が出色。まさにハガネのような音質の力強さと美しさは比類がなく、表現もフレキシブルで滋味深い。メータとの凄絶な熱演として名高い名演である(ライヴ録音)。
甘めの艶やかな美音と豊かなスケール感を武器とするズーカーマンにとって、この2つの超有名な協奏曲はぴったりと資質に適った作品だ。ダイナミックな箇所に耳を奪われがちだが、音色やフレーズなどの細部での神経の使い方が凡庸な奏者とまるで違う。
(1)の協奏曲の独奏は、やや線は細いものの、真摯にオーソドックスに弾いている。これに、さらにこまやかなニュアンスが加わればもっと良かったが。伴奏は平均点。余白はチェロとハープによる小品。ハープの音がちと固いが、雰囲気はまずまず。