1998年4月発売
この夏解散したリバプールのグループの、ライヴ・テイクや12インチ・バージョンで構成されたCD。ドアーズやヴェルヴェット・アンダーグラウンドに比較されることが多かったが、そういった先輩たちのカバーを中心に、霞みの中を疾走する演奏が個性的。
研ぎ澄まされたクリスタルにも似たタイトで緊張感溢れる音楽空間を構築するグループ、エコー&ザ・バニーメンがコロヴァ・レーベル以後にリリースした曲からセレクトした10曲に、ニュー・シングル「ダンシング・ホーシズ」を加えたベスト・オブ・ベスト。
ライヒのミニマリストとしての技の集大成であると同時に新たな方向への転換点ともなった大作の再録音。旧盤が息詰まるほど克明に仕掛けを聴かせていたのに対し、何か情緒的な息づかいのようなものが感じられるのは現在のライヒの関心の現れだろうか。
リンドベリは今年40歳になるフィンランドの作曲家。エネルギッシュな“若さ”に満ちた出世作「クラフト」は、前衛音楽の可能性と魅力を新たに開示した傑作。何より音色やモティーフが斬新。オリエンタリズムや懐古主義に靡かぬ硬派的作風に惚れ惚れする。
ジャズ、フォーク、クラシックといったジャンルを超えた活動で知られているサルマントの個展。ジャズ交響詩「スオミ」や「北の情景」を聴いていると、三枝成彰の作品と一脈通じるところがあるようにも。ジャンルを超えた聴衆に受け入れられそうなディスクだ。
フィンランドが育んだ作曲家ユッカ・リンコラ(1955〜)は文字通りジャンルを超えて活躍。といって、それぞれが薄味になることもない。得難い才能だ。ジャズのイディオムもこの上なく粋だが、長大な映画、バレエ音楽の幻想味、抒情、弾ける楽想に酔った。
マデトヤ(1887〜1947)は、フィンランドの作曲家。交響曲やオペラで才能を発揮した人だが、その作風はロマン派の流れ。男声合唱曲は、1908年ごろから晩年まで書き続けた、彼の思い入れの深いジャンル。北欧ならではの独特の透明感と広がりが美しい。
ジャズ・テイストのピアノ協奏曲が集められているが、グリモーの演奏は洗練された味わい。ラヴェルの第2楽章のつぶやくような演奏が特にいい。ジンマン指揮のボルティモア響はゴージャスで立派な演奏を繰り広げている(特にガーシュウィンで)。
中国人の両親のもと日本に生まれたアメリカ人ピアニスト、ヘレン・ホワン3枚目のCD。若手のなかでも飛びぬけて才能に恵まれた彼女が、マズアとの共演で、モーツァルトの晴れやかな曲想とメンデルスゾーンのロマン性を心ゆくまで描きだしている。
91年にマズアがニューヨークpoのボスになった時は、「この意外性のある組み合わせ、続くんかいな?」と思ったりもしたが、ひょっとするとひょっとするかも。ドイツ+アメリカのドメリカ的演奏なのに、お互いなぜか燃えている。なかなかの珍味だ。
冒頭から凄絶な緊張感。ニューヨーク・フィルからこれほど深い響きを聴いたのは久しぶり、マズアの懐の深さに改めて脱帽だ。彼にとってこの曲の初体験がケーゲル指揮の演奏だったというのは興味深い。少なくともここには戦争の記憶が刻印されている。
一昨年のシーズンから音楽監督に就任したマズアのブラームスでこれはライヴ。録音の特質と相まって大変柔和なブラームス。旋律の歌わせ方もよく管理されオケもぴったりとまとまる。ただこのCD(2)の途中で40秒ほど左右が反転するという不良があった。
『ラヴ・ヒーリング』から続く“ラヴ”3部作の完結編。子供心に愛しく聴いた「そして僕は途方に暮れる」の印象しかない筆者(申し訳ない)は、色艶と少年の純朴さを持ち合わせた存在感のデカさにひれ伏すのみ。(7)ではGREAT3を思い出してしまった。
優れて洋楽的だった彼らの魅力が存分に楽しめる好選曲で、ヒット洋楽のカヴァーと、洋楽風味の和製作品とが平行して並べられた。ことに後者の適度な湿り気を持つ作品の完成度の高さに、なかにし礼、阿久悠、都倉俊一らプロの作家たちの力のほどを思い知らされる。