1999年2月発売
80年に発表された10枚目のアルバム。映画『私をスキーに連れてって』の主題歌となった「恋人がサンタクロース」などを含む、夏と冬のリゾートにぴったりの楽曲がならんでいる。
ユーミンの最新アルバムです。荒井由実時代のユーミンを思わせる情景が浮かぶ曲があったりと、高いレベルを保ってアルバム造りをしているのはさすが。ファースト・アルバム『ひこうき雲』へ大きく廻って戻っていったような“女心”が歌われているようです。
歌の中の情景がメロディとサウンドによってリアリティを得ていたユーミンも、時代の気分に追いつかれ、情景の描き方が変って久しい。それでも、リアリティは回復しないままです。といっても、ユーミンのこれまでの作品の中での話でしかないが。
微妙なバランスで異邦人を装いつつ、東京レディのしたたかさを垣間見せたりするユーミンなのです。越路吹雪ラインで安定するかと見えた一時期を過ぎ、映像的なリアリティ以降に逆流パワーで作ったのが“関係のスタイル”で見せる虚実の世界です。
雑誌感覚の新作。今回のテーマは“純愛”。というわけで、タイトルは「舌を入れない接吻」。エイズ時代を象徴するようなテーマとタイトルだ。編集者としての手際は相変わらず鮮やかだけれど、妙にアナクロなレイアウト(編曲)も意図的なものなのかな。
昨年7月に一旦リリースが発表されたものの諸事情により発売延期となっていたユーミンの新装再発17作品が、めでたく正式リリース決定!! 結婚後初(つまり松任谷名義となって初)のアルバム『紅雀』から80年代の最後を飾ったアルバム『LOVE WARS』まで、どれもこれも“一家に一枚”級の強力アルバム。まだお持ちでない方は、今回の再発を機に一気に揃えちゃいましょうね。
久々のフランス語タイトルに、一連の同様のタイトルのものを出し続けていた時のように、アコースティックで静々とした作品かなと思ったらそうでもなく、(3)と(7)などは打ち込みの手法でかなり斬新なアレンジ。新風を吹き込んだ作品といえるか。★
まったくとんでもない処女作である。ストイックでいながらなお湿り気を残した歌声が、聴き手の感情の源泉に強烈な爪痕を刻みつける。全曲シングル・カットOKのポピュラリティと、詩に象徴される寒気すら覚えるアナーキズムが絶妙に絡み合った大傑作。★