2003年9月発売
20歳のブラームスが書いた第3ソナタを、キーシンはすぐれたバランス感覚を駆使しつつ、きわめて情熱的に弾いている。作曲者が独奏用に自分で編曲した「ハンガリー舞曲集」の5曲も、愉悦感と充実感が高次元で融合した名演だ。キーシン、恐るべし!★
竹澤ひさびさの新作は初の小品集。たとえばクライスラーの「愛の悲しみ」のように、気持ちを込めすぎるほどじっくり歌ったり、ブラームスではしなやかさを、そしてバルトークでは大家のような風格を見せる。彼女としてもやり尽くした充実感があっただろう。伴奏&録音も良し。
ランパルに次いでフルートの黄金時代を築いたゴールウェイの偉業を8巻15枚のディスクで俯瞰するシリーズのvol.1。ケルティックの笛の音が、カラヤン時代のベルリンの首席奏者、類稀なきソリストとしての経歴まで一貫する、稀代の音楽家の快演を堪能。
ゴールウェイの艶やかな音色と感興豊かな息づかい。冒頭のE.バッハでトップリと引き込まれ、その響きの魅力を手がかりに、ふだんあまり馴染みのないバロックから古典、古典からロマンへの過渡期の音世界へするり入り込むことができる、なかなかの逸品。
制作・出演
アンドレ・プリエール / エドゥアルド・マータ / ジェームズ・ゴールウェイ / ニュー・アイリッシュ室内管弦楽団 / フィリップ・モル / マリサ・ロブレス / モーツァルト / ヨーロッパ室内管弦楽団 / ロンドン交響楽団ゴールウェイの60歳を記念して99年に発売された15枚組からの分売。この2枚組はモーツァルトの作品のみで構成され、東京SQとの2曲の四重奏曲も収められている。温かく典雅な演奏を支える繊細なフレージングに、卓越した技術と音楽性を感じさせる。
ゴールウェイの還暦を祝って発売された60曲のマスターピースが、国内盤として登場。第4巻は唯一の1枚もので、タイトルから想像できるとおり、軽快な作品が並ぶが「しぼめる花」での弾むようなパッセージ、山下和仁との絶妙な音楽的対話と、聴きどころ多し。★
制作・出演
イ・ソリスティ・ヴェネティ / クラウディオ・シモーネ / ジェームズ・ゴールウェイ / ジニー・ゴールウェイ / ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団 / フィリップ・モル / メルカダンテ / ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 / 岩城宏之フルートにとってロマン派の時代は“不作の時代”なんて言われているが、たしかに技巧に走りすぎたキライはあるものの、こうした名手によって演奏されると生命が宿る。ロマン派はフルートに輝きを与えたのだった。その主旨とは別に、アルゲリッチとの共演は聴きもの。
制作・出演
クリストファー・オライリー / グラハム・オッペンハイマー / シャルル・デュトワ / ジェームズ・ゴールウェイ / ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団 / フィリップ・モル / フォーレ / マリサ・ロブレス / ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団名実ともに世界最高のフルーティストであるゴールウェイの膨大な録音からフランス音楽を集めた2枚組。これはもうキング・オブ・フルートを聴くためのアルバムだ。このうえなく艶やかで叙情的な響きも兼ね備えた高音の魅力。ホレボレするような美しさだ。
制作・出演
エドゥアルド・マータ / ジェームズ・ゴールウェイ / チョン・ミュンフン / ハンス=イェク・プロファンター / バイエルン放送交響楽団 / フィルハーモニア管弦楽団 / ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 / ロリン・マゼールハチャトゥリアンの土俗性も、マゼールの洗練された折衷主義も、ロドリーゴのローカル色も、ゴールウェイが吹くと、なんと楽々と明瞭に鳴り響くことだろう。チョン・ミョンフン、マゼール、岩城宏之、アルゲリッチなど、共演者もきわめて豪華である。
制作・出演
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ / イーストマン・フィルハーモニア / ギャレス・ハルス / シドニー交響楽団 / ジェームズ・ゴールウェイ / ジョン・コリリアーノ / デイヴィッド・エフロン / ネヴィル・マリナー / ルイ・フレモーゴールウェイに捧げられたり、あるいは彼が委嘱したりした作品を集めたものの第2弾。いずれも比較的ロマンティックで伝統的なスタイルを持った作品だ(コリリアーノが一番現代的)。ゴールウェイはもちろんその持てる力を十分に発揮していて、その音楽性を堪能できる。
ピーター・ゼルキンが初めて録音したベートーヴェンがディアベリだったのは興味深い。最高傑作だがいかにも玄人好み。32歳のピーターの紡ぎ出す音色は新鮮だ。まるで若き日の溌剌としたベートーヴェンが見えるようだ。ピーターにとっても記念となる名演。
高名なヴァイオリン協奏曲からベートーヴェン自身が編曲した未知の曲を新進気鋭のピーターが初録音して34年が過ぎたが、カデンツァの感銘は今なお薄れない。第2楽章における絶妙な間のとり方やシカゴ響の深い息遣いに若き日の小澤の真骨頂が発揮される。
ゼルキンの作る音の姿は虚心に接するほど惻とよく腑に落ちる。リリシズムにはひたすら沁みて聴き入り、走りや動きはあくまでカラダでキメる。伝統の血筋にありながら、旧習を斥けて自分の感性にストレートに向き合うカッコよさがさりげない若き日の快演。