2005年6月22日発売
内面を臆面もなく、さらけ出す潔さ。シラフで聴くには赤面覚悟の勇気が必要な情景だが、アルコールの力を借りれば麻痺した脳に不思議な心地よさと、かき乱されるような快感を響かせるギター・サウンドが宙空を飛び交う。アコギのインスト曲が意外な一面。
仲道郁代のベートーヴェン・ソナタ全集の録音もこれが中間地点。徒にパワーやスケールを追求せず、過剰なドラマ性や思い入れを排除して、作品の素の姿を浮き彫りにすることに成功している。彼女独自のカラーを感じさせる、等身大の落ち着いた佳演だ。
ラ・プティット・バンドの結成10年を経過して録音されたもの。歯切れの良い速めのテンポ設定という、その後のバロック演奏のひとつの方向性をつけた録音と言える。演奏技術の向上にも目を瞠る。
ラ・プティット・バンド結成後20年ほど経って初めて録音されたブランデンブルグ協奏曲。クイケン3兄弟をはじめ、寺神戸亮、鈴木秀美らによって、ピリオド楽器演奏でのこの作品のひとつ典型を作り上げた。
バッハの現存するヴァイオリン協奏曲、3曲を収録している。ソロも含めて13人という、当時のケーテンの宮廷楽団を踏まえた編成をとっている。バッハの意図とその響きをも忠実に再現している演奏だ。
チェンバロ協奏曲として知られた作品を原曲の形で復元。パルシヴなチェンバロの響きとは一味違うゆらりとした佇まいが耳を引く。楽器の音色のシブさのせいか、魅せるところはキリと魅せつつフトコロを保って過剰にオチない演奏も中々。BWV1056aの緩さがいい。
制作・出演
J.S.バッハ / カタリーナ・ヴォルフ / カプリッチョ・ストラヴァガンテ / クラウディア・ステーブ / スキップ・センペ&カプリッチョ・ストラヴァガンテ / デイン・ロバーツ / マンフレード・クレーマー / ミシェル・ムルギエール約20年の時を経て再録音された、シギスヴァルト・クイケンの無伴奏。旧録音より一層バッハとの緊密な対話がなされている。様々に考え抜かれた表現が随所に現れ、ピリオド楽器でのひとつの頂点に立った。
ラ・プティット・バンドの首席チェリストで、ソリストとしてもヨーロッパと日本で活躍中だった、鈴木秀美の第1回目の録音。91年以来取り組んできた無伴奏組曲の、総括的演奏ともいえる録音。
ビルスマによって、無伴奏組曲は、ビルスマ以前と以降に分けられる。それほどこの作品の演奏に大きな影響をもたらした。その第6番で用いたチェロ・ピッコロを使用して、編曲された無伴奏曲をひいている。
オリジナル作品はもとより、チェンバロ、チェロ、ヴァイオリンなどの作品からの編曲ものも含めた、全リュート作品を集成したアルバム。リュートの第1人者、ユングヘーネルによるオーセンティックなバッハ。
アメリカ出身の名手ホプキンソン・スミスが、13弦リュートでバッハのトランスクリプションを行なう。作品の本質をしっかり押さえつつ、リュートの繊細な音色や特性を巧みに活かした編曲は佳麗で、オリジナルとは一味違った雅な雰囲気を味わえるのが楽しい。
バッハの鍵盤音楽やリュート組曲、無伴奏ヴァイオリン・パルティータなどを、バロック・ハープ(クロマティック・ハープのコピー)を使ったトランスクリプション・アルバム。典雅な響きが美しい。
ピリオド楽器による演奏が瑞々しい音楽を作り上げることを教えてくれた録音。録音から30年以上経った今聴くと、奏法やスタイルの“新しさ”ではなく、彼らの情熱や覇気といったものが鮮明に聴こえてくる。パイオニアとしての生気にあふれた感動的な演奏だ。
オランダ古楽界の第一世代のレオンハルトと、その下の世代のヴィーラントによるピリオド楽器による演奏。幾分誇張された奏法を採っていた時代の録音だが、19世紀のバッハ像を洗い流した演奏だ。